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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第八章:欺瞞

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Episode:4 最悪の目覚め

 ベッドの上で目を覚ます。

 背中には汗が滲み、布団の中に湿気がこもっているようにも感じる。


「……」


 なにも言葉が出ない。

 精神的に辛い? そうじゃない。

 今までにないほどの、感じたことないほどの苛立ちが、頭を支配していた。


「ルイン、起きなさい!」


 母親の声が響き、僕は身体を起こす。

 視界に赤い前髪が入る。

 その髪を、両手で上に上げた。


「――ふぅ……」


 ため息……いや、覚悟を決める深呼吸と言ってもいいだろう。


 ――あの桃色の獣人、黒曜級のシェラとディジーを相手に、善戦どころか殺しきった。

 凄まじい速度に、状況判断能力……殺せるか?

 あれを、僕たちだけで……。


 僕はベッドから降り、制服に着替えて部屋を出る。

 階段を降りて、リビングの入り口を横切ると、母親の声が響いた。


「ルイン、朝ごはんは?」


「大丈夫。エヴァを待たせてるし」


 僕がそう話すと、母親は少し表情が変わった。

 僕を見つめる瞳が、知らないものを見るような目をしていたのだ。


「ルイン……だよね?」


「――そうだよ、何言ってるの? 母さん」


 僕がそう話すと、母親の喉が鳴る。

 唾液を飲み込んだのだ。


「じゃあ、行ってくるから」


「う、うん。 行ってらっしゃい」


 母親の声を聞きながら、僕は靴を履き、玄関を開ける。

 太陽の光が僕を突き刺し、その眩しさに目を細めた。


「あ、ルイン、おはよう」


「あぁ、エヴァ……。おはよう」


 そして、僕らは草原を歩き出す。


 ――絶対、あの獣人は殺す。


 それから……。


「エヴァ、先に行ってて。少し、会いたい人がいるんだ」


「誰?」


「大事な人」


 僕がそう話すと、エヴァは少し考えた後に頷いた。

 王都に入ってすぐ、人混みの中に消えていくエヴァの背中を見つめながら、僕はため息を漏らす。

 それから少しして、目的の人物が見えた。


 僕は足を動かし、その人物が人混みから現れるのを確認する。

 そして、声をかけた。


「なぁ」


 僕の短い声に、老婆は止まる。


「……ルインかい?」


「僕以外にいないですよね?」


 自分でもわかっている。

 心が、多分荒んでいるんだ。

 丁寧だった口調は、少しばかり棘が目立つ。


「再配置のさい、魔物の数がおかしい。何か知りませんか?」


 僕のその問いに、老婆はゆっくりと口を開いた。


「気がついたんだね。それは簡単さ、ルイン……君を遠ざけたい彼らが、君から特別な匂いを放たせている。魔物にしかわからない、格別で特別な餌の匂いだ」


 老婆がそう話すと、僕は歯を食いしばる。

 シェラの話した通りだ。

 僕の旅を過酷にするのは、僕自身で間違いない。


「それを、無くす方法はありますか?」


 僕が問うと、老婆は首を振った。

 それはそうだ、あるわけない。

 あれば、苦労した意味すらも無くなってしまう。


「わかりました。これ以上は……無駄ですね。また、何かあれば再配置後に聞きにきます。もらいますよ、情報。意地でもね」


 僕はそう話して老婆を睨む。

 重い足取りで僕は彼女の横を通り過ぎ、学校を目指した。

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