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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第八章:欺瞞

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Episode:1 見かけに寄らず

 闇の中に、枝を折る音が響く。

 シェラは左手で大曲剣を引き抜き、地面に刺したはずのもう一本を探した。


「シェラ、見えているのかい!?」


 ディジーがそう話し、視線を巡らせる。

 炎が消えた今、僕とディジーは周囲の情報がない。


「しくじったなぁ」


 シェラがそう話した。

 僕はその言葉に首を傾げ、口を開く。


「どうしました、シェラ!」


「相手、夜でも見えてんだろ。明かりがないことに気が付かなかった!」


 シェラはそう話した。

 確かにそうだ、人間の僕や、褐樹人(ダークエルフ)のディジーは数歩先の闇に輪郭が見える程度。

 これでは戦うことは出来ない、だから冒険者は松明やランタンを持つのだが、それを持たないと言うことは、夜でもしっかり見えている。

 と考えるのが妥当だろう。


「まずいな……」


 シェラが舌打ち混じりに呟いた瞬間、木々が揺れ葉が落ちてきた。


「ルイン! よそ見すんな!」


 僕が視線を上に向けた直後、正面からの足音に身を屈ませた。


 右半身に強い衝撃が走り、体が浮く。

 間髪入れずに剣戟の音が響いて、僕は地面を転がった。


「――っ」


 右腕をさすりながら、火花が散る闇に目を凝らす。

 輪郭だけは、火花が散る度に目に映った。


「速い……なんだこいつ!」


 シェラは攻撃をできていない、相手が素早く、隙がないのだ。

 剣戟の軌道は、僕も見えなかった。


 ――天海の涙(てんう なみだ)


 ディジーの声が突如響き、水滴が弾ける音が響く。

 水面に一滴の雫が落ちたように、綺麗な音だった。

 水瓶に入ったような小さな魔具、その効果は絶大だった。


 足元の草花、周囲の植物が急激に成長し、黄金の光を放つ。

 それはどこか幻想的で、美しい景色と化す。


 視界が確保され、シェラの動きが鋭くなる。

 僕もディジーも、敵の姿を確認できた。

 斥候のような軽装、胴体の革鎧から縫い付けられた頭巾が顔を隠す。

 全身が黒い革製の軽装で身が包まれ、桃の色にも似たしなやかな尻尾だけが姿を表していた。


「こんの野郎!」


 シェラは相手の腹部に重い蹴りを放ち、衝撃で相手の体は飛び、地面を転がる。

 だが、小さな短剣を地面に突き刺して、身を翻しながら立ち上がった。


「うぁー……いったいニャー。腹部は良くないニャ、ほんとに良くないニャ」


 高く、柔らかい声。

 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)といったところか、一撃の入った腹部をさすり、シェラを睨む。

 頭巾が取れ、ピョコっと猫のような耳が姿を現し、殺伐としたこの空間には合わないほど、耳は忙しなく動いていた。


 顔は桃色の毛並みで覆われ、瞳も透き通るような薄い桃色。

 体は小柄で、子供と大差ない。

 だからこそ、戦いづらくもなる。


獣人(アニマ)か……」


 シェラは剣を握り直し、構える。


「人間、蜥蜴人(リザードマン)、褐樹人。うみゃ、いいニェ。すごく、すごく襲い甲斐があるニェ」


 直後、彼女の胸元で何かが輝く。

 目を細め、凝らすと、銀等級の等級章が光り輝いていた。

 黒曜銀級のシェラ、黒曜金級のディジーがいて、いくつも等級が下の獣人に負けるはずがない。

 この時は、そう思っていた。


「オメェ……ハーラッシュだろ? 獣人のハーラッシュ」


「ハーラッシュ?」


 シェラが牙を剥いて彼女に問いかけた言葉の意味を、僕はシェラに問う。


略奪者(ハーラッシュ)は、正式登録された冒険者だが、他の冒険者から金品を奪って生計を立ててる奴らの総称だ」


 シェラがそう話すと、ディジーが外套に手を入れる。


略奪者(ハーラッシュ)なら、手加減はいらないね」


 ディジーがそう呟いた直後、獣人の女は小さな短剣を構える。


 カチンッ


 金色の光を反射する短剣は、赤黒く。

 血にも似た色をしていた。

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