第七話-1 たのしいショッピング-極彩強大要塞ラヴェンツァ
その描写が無駄なのか必要なものなのかよく分からんです
デート...怖い
ショッピング...怖い
登場人物
△
ハム(私)……この物語の主人公。生まれと頭と性格が悪く、顔は良い。
プリム……ハムの友達。社交的で誰からも気負うことなく愛される性格。
レオンハルト……ユウシャ。何十人もの女をそのハレムに加え、肉欲を満たしている。
クラリティ…..マ王種と呼ばれる人類の天敵。レオンに及ばない程度の圧倒的な力を持つが、人心に疎く追放された。
ケイオス……人間とアバッズレ(サキュバス)の混血で、真面目な性格。社会的に支配下にある相手を実際に洗脳できる。
私、プリム、レオンハルトの三人は馬車に揺られていた。行き先は『要塞都市ラヴェンツァ』。マ界からそこそこに近く、そこそこに意識の高い人が多い。『ゆる戦地』といったところか。
元々レオンだけが公務のため呼ばれたのだが、将来したいことが見つかるかもしれない、と言うので私もついてくいくことになった。このまま進歩のない日々を送り続けるのは良くない、というのは確かに同意する。あなたは何事にかけても正しい。でも。
△
『悔しがるほど頑張ってないだろう____』
△
ああ言うことは無かっただろうと、思わずにはいられない。いつものように会話が弾まず、ずっと外の小綺麗な田園地帯を眺めていた。興味もないのに農作業をしている人の一挙一動を細かく観察する。
私たちに挟まれたプリムは相当気まずそうだった。
しばらくするとラヴェンツァに到着。言葉少なにレオンと別れ、プリムと自由行動を開始する。
「うまくいかない期間ってあるわよね。……なんか、喧嘩したの?」
下手に避けるより、こうして茶化してくれる方がありがたい。羨ましいコミュ強っぷりだ。こういうフォロースキル?私ももっと身につけないと。
「怒りそうになったけど、私は寛大な心で受け流した。」
「あーね。」
「怒りゲージ99%たまってた、あと1%貯まったらやばかった。」
「すごいわね。」
適当に受け流されながら街を歩く。城塞都市と言うのは街全体が一つの警察署みたいなもので、女の子だけで歩いていても襲われる心配はほとんどない。しかし、色々なものが売っているなあ。
変な木のお守り、異国の特産品。変わった飲み物やアイス売り、ウクレレを弾く大道芸人。商業も活発なようだ。
様々な年齢層の人たちが楽しそうに屋台を巡っている。
「ハムは何か欲しいもの見つかった?」
その問いかけで気が付く。......これ、陽キャ女子とのショッピングというやつなのでは?一生縁遠いと思っていたが.....そう考えると急に心臓が高鳴り初め、目を皿のようにして店を物色する。
「うーん……!!!!……これ!これが欲しい!」
私が見つけたのはタイガーの彫刻だった。子供の小遣いでも買えるようなキーボルダーサイズ。また習っていない言葉で何事か掘られている。
「却下」
「なんでぇ!?」
「いや〜、私的にはイマイチだわ。特に買うものがないなら私に付き合ってよ。」
「う、うん。」
そういや形式上はプリムは私の指揮命令下にあるはずだけど……まあいいでしょう。あそこに並んでいる異国のアロマとかもいいな。人混みに慣れているようで、彼女はスイスイと歩いていく。私はあっぷあっぷしながらどうにかついて行く。こらそこ、尻をぶつけてくるな。
行く先々にちょうどいい商品が売っていた。化粧水、岩塩、コームなどなど。ほどほどにオシャレなものを次々に買い揃えていく。異国名物の値切りもしなきゃいけないようで、そういう場面の彼女はめっぽう強い。
「500」
「520」
「譲れませんよ、ここからは!」
「ちぇっ、かわいいお嬢ちゃんにあげたと思っとくよ。」
買い物バッグが膨らむにつれ、彼女は前世ですれ違った都会のオシャ女子に近づいていく。うう、頼りになるけど陽の気配がする。
「すご。いい商品ばかりだし、安い。」
「観光客向けの店にいいものが売ってないから。ちょっとした土地勘が必要なのよ。」
「尊敬する…。」
「ところで、あなたが買ったものには触れないほうがいいかしら?」
「……うん。」
「……大人よねぇ。そういえばあっちの方に熱血セックス塾があるわよ。おばあちゃんが通ってるはずなの。」
私が背負ったナップザックの中には……精力のつく茶、シースルーのチャイナドレスなど、欲深いものがたくさん入っていた。
普通の女の子はこんなものまだ早いか。私が異常なだけだ。
「触れないでいいよ。そろそろ帰ろうか。」
「……うん。最後に寄りたい場所があるんだけど、良い?」
「もちろんもちろん。」
ついていった先には花屋があった。らしいと言えばらしいけど。
「すみませーん。__はい、はい。献花のための花束を買いたいんです。予算は700くらい、家族のためのものを。」
重っ。重い。……そういえばこの要塞都市出身だという話だったか。道理で歩き方に慣れているわけだ。納得していると、二種類の花を示された。
「はい、お供えできる花はどっちかだって。ハムが選んでよ。」
一方は黄色くて、小さな花弁がタンポポのようについている花。もう一つはバラのようにトゲトゲした青い花。高級感、と言う意味では後者の勝利だろうか。というか、お参りをする流れなんだ。
「え、私?……ごめん、誰のお墓なの?」
「双子の妹。もし生きてれば、今頃ハムくらいになってたかなあ?死ぬ前に、お墓にはたくさん友達を連れていくって約束したの。」
「…….そう。」
目線が地面に急降下する。この世界の人々はあまりにも人の死を前触れなくカミングアウトしてくるのだから、反応に困る。
……あるいは、私が人並みに親しみを持ってもらえた証だと受け取っていいのだろうか。
「じゃあ、こっち。」
私はタンポポのような花を選んだ。
「オッケー、こっちください。……ちなみに何で?」
「たくさん花びらがあれば、たくさん散っていくのを楽しめるでしょう。」
「なるほどね!感性がわかんないけどわかったわ!」
それぞれ一輪の花を持って、プリムの妹さんのお墓に持って行った。左右に献花のための壺があり、それぞれにそうっと花をそえる。そして、プリムは長い間祈っていた。
私も一応手を合わせ、目を瞑って祈る。……いつまで祈って良いのかわからず、ちらちらとプリムの方を見ながら。花弁が一つ落ち、私が焦ったくなって足を動かすと、プリムは祈りをやめた。
彼女が前髪をかきあげる動作がまるで涙を拭ったように見えた。神聖な動作を邪マしてしまっただろうかと肝が冷える。
幸いにも逆鱗に触れたりはせず、笑って歩き出した。
△
指定された宿屋に泊まる頃には日が暮れていた。見知らぬ幼女が私たちの隣を駆け抜けていった。自分にとっても不意に、私は立ち止まる。
「……プリムにとって、友達って何?」
本来こういうことは言わない。相手を煩わしく思わせると嫌だから。夕焼けが私を感傷的にさせたのか、口が軽くなる。
「え、いきなり深いわね….。何、悩んでるの?」
「いいから。」
「___そうね。とても、ありがたいことだわ。みんな、ありがたいかけがえのない友達。」
良い回答だ、と思った。本心でもそうでなくてとも。一応満足して一歩踏み出そうとしたが、赤髪のメイドはとてててて、と踏み出して夕焼けを背に振り返る。
「私はね、わからないことは考えないけど……。ハムは友達って概念をすごーく重く捉えているのね。」
一歩先で微笑む彼女は。逆光にも関わらずとても輝いて見えた。同年代のはずなのに、ずっと大人びて見えた。
「でも、私はハムは好きよ。ハムも私を好きでいてくれるんでしょう?じゃあきっと……私たちには明るい未来を作り上げられる。そう、信じてる。」
この笑顔をずっと見ていれば、あの涙の重さもいつか分かることができるのだろうか。普通の友達、普通の人間関係、そういうものを私も作れるだろうか。
その時、私は今日初めて笑ったことに気がついた。でも、少し自然に笑えた気がした。
△
プリムと別れ、自室へ向かう。レオンはまだ宿屋に着いていないようだ。ドアノブに手をかけた刹那。
『いいのか?』
という声を聞いた気がした。何故だろう、嫌な予感がする。…….別荘に比べれば、ここのセキュリティは甘いはずだ。本当に、この扉を開けていいのか?しばし思案する。
実際には選択の余地なんてなかった。有無を言わさぬ力で部屋の中に連れ込まれる。大人の男の力だ。だが、護身術の心得はあるつもりだ。左半身を土台に、右手をムチのようにしならせて、下手人の顔を革の財布で強かに打ち据える。
(カリ・シラット!)
殺傷ではなく、皮膚の神経を痛めつけることを目的とした一撃。目つきの悪い男はくぐもった悲鳴をあげて倒れ込んだ。椅子やテーブルをひっくり返しながら転倒する姿は素人目にも痛々しい。
何なのだ、こいつは?身代金目当ての盗賊?いや、何にしても逃げるのが先決___
「____は?」
「どれだけ騒ごうと、悲鳴は届かぬぞ。」
出入り口に、真っ黒な障壁が形成されていた。咄嗟に障壁を殴りつけるが、全く手応えがない。出入り口のドアが一人でに閉じた____魔術か!
「この部屋は防音になっている。この先お主の悲鳴も、聞こえることはない。」
「いってえ……お前、ハムで間違いないな?ユウシャのハーレムにして、元貧民窟の労働者。」
部屋に入っていたのは二人。一人は目つきの悪い男。もう一人は……ぞわり、と背筋が震えたした。ベッドに腰掛けるその顔は___似顔絵で知っている。
長く伸びた爪は心臓を掻き出すために。小さな口は偽証と憎悪を振り撒かんがために。
魔王の娘にして名代、クラリティ。人類種にとって、まさに天敵。最も危険な存在が目の前に鎮座していた。




