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第12話:心配とアドバイス


 ゴブリン相手に練習を重ねたイムは、来た時とは比べ物にならないほどに魔導銃の扱い方が上手くなっていた。その日は金額で見れば低くなってしまうが、もっと大事なものを得られたとイムは満足しながら街へと帰還していった。


「おっ、坊主。なんかうれしそうだな!」


「ダレルのおっちゃんもお疲れ様! へへっそう見える? まぁ、ただでさえ強い俺が更に強くなっちゃったんだよね」


 町の門を潜り抜ける時に、馴染みの門番であるダレルがイムに話しかけてきた。イムはそれに笑顔で応えつつ、腰にぶら下げた魔導銃をアピールする。


「ほーう、なるほど。新しい武器を試してたって訳だ。良かったな!」


「おう! じゃあまたな! おっちゃん!」


「……なんか、おっちゃんって呼ばれるのも慣れちまったな。まぁ、実際坊主から見たらおっさんか」


 元気に町の中に入っていくイムを見送りつつ、ダレルはひとりごちた。




 町へと帰ってきてまず最初に向かったのはいつも通り探索者ギルドであった。大通りに面した入り口から中へと入っていき、受付に立つマリナを見つけるといつもの様に納品をお願いする。


「こんばんは! 今日もこれ、納品頼むよ!」


「……こんばんは、承知いたしました」


 最近は挨拶を返してくれるようになったな~、と思いながら査定作業を行うマリナを見つめるイム。変わらず一分ほど経ってから、報酬と革袋が返却される。


「ゴブリンの魔石二十一個で銀貨四枚と銅貨二枚の報酬となります」


「おう! ありがとな!」


 報酬を受け取って懐に仕舞いながら立ち去ろうとするイムに、マリナから声をかける。


「あの……」


「ん?」


「今日は、ゴブリンの魔石のみでしたが、何かありましたか?」


 話しかけた後、すぐに後悔に襲われるマリナ。最初の方に冷たい態度をとった上に、ただの一介の受付嬢である自分が、探索者一人にそこまで深入りすべきではないと自覚があったからだ。


 だが、言い訳をさせてもらうとここ最近、イムが持ち込む魔石はほとんどがゴブリンソードマンの物、しかも個数も三十個を超えることがほとんどであった。鉄級探索者でその成果は普通ではないと理解しつつも、マリナは普段と違う魔石にイムの身に何かあったのかと心配し、思わず声をかけてしまったのだ。


「んーと、新しく武器を新調したんだ、それで今日は試し撃ちってやつさ!」


「なるほど……」


 イムの表情や言葉を鑑みるに、何かけがなどをしてゴブリンしか狩れなくなってしまった、といったようなことはないようだった。自分にそんな資格はないと自認しつつもその事実にマリナは安堵していた。だが次の一言で安堵は再度心配に代わる。


「明日からは五階層に出るゴブリンアーチャーを倒すつもりだからな!」


「なっ……お一人で、ですか?」


「おう! 組んでくれる人もいなかったしな!」


 通常、探索者は鉄級冒険者の間にパーティーを組み始める。なぜならダンジョンは四人での攻略が推奨されているからだ。基本、前衛と後衛で分かれて戦うパーティーがほとんどで、イムの様にソロで戦う人間は稀であった。


 イムは元々、ゴブリンソードマンに挑戦する前にパーティーを組もうと考えたこともあったがそれは叶わなかった。理由は対外的には二つ、自己的にも二つあった。対外的な理由としては、そもそも出自が孤児院出身で端から見下されてしまうこと。次に年齢がまだ十六で探索者をやるには幼かったことが挙げられる。


 イムのことを見て、自身のパーティーに入れる、ないしは一緒にパーティーを作ろうと思う人が、いなかったのだ。


 それに加えてイム自身にもパーティーを組めない理由があった。一つ目は金銭面、パーティーを組むとどうしてもその日手に入れた報酬を分け合う必要が出てくる。直近で暮らせるだけの報酬を求めていたイムは、ゴブリンソードマン程度の魔石の報酬を分け合ったら安全性は増すものの、生活するには足りないと悟っていた。


 二つ目はその能力によるもの。イムの持つスキル、奇術はハッタリの力。これは相手にバレてしまうと効果が半減どころか使っても脅威とならない可能性がある。イムはこの力の本当の効果を、誰にも言うつもりがなかった、それこそ、家族にすら。


 そんな状態でパーティーが組めるとは思わず、泣く泣く断念したという事情があった。


 そして、対外的な理由しか悟ってはいないものの、マリナはイムがなぜ一人で行動しているかをなんとなくだがわかっていた。そして、その状況を他ならぬ自分自身が見て見ぬふりをしていたことも。


「……パーティーを組まず五階層以降、アーチャーが出る階層に行くのは危険です。それでもなお、行くのですか?」


「おう! そっちのが稼げるし、何より俺は、強いぜ?」


 そう言いながら手のひらに炎を生み出すイムを見て、マリナは説得は不可能だと悟る。せめても、ととある助言だけ付け足して。


「このギルドの、二階にある本棚には銅級ダンジョンの詳細が乗った本があります。もし、五階層以降に行くのであればそれをお読みになってから行くことを強く勧めます」


「ん? そうなのか! 分かった、ありがとな!」


「……本棚においてある本は持ち出し禁止ですが、探索者であればいつでも読んでかまいません。……字は読めますか?」


「ああ! 文字に関してはシスターにみっちり鍛えられたからな! 問題なく読めるぜ!」


「それでは、お気をつけて」


「色々教えてくれてありがとな、マリナさん! この後ちょっと教えてくれた本読んでいくよ!」


 そのまま二階へと続く階段に向かったイムを、マリナは言葉に出来ない感情を乗せて、見つめていた。

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