第11話:魔導銃の訓練
魔導銃をオーウェンから受け取ったイムは、その日は孤児院に帰宅した。ただいま、と孤児院のみんなで仲良く会話しつつ、夕飯を食べ、もう寝る時間となった頃、イムは庭に出て魔導銃の試し撃ちをしていた。
「よっ、と。これ、本当に扱いやすいな、でも的にちゃんと当てれるようになるのは少し練習が必要そうだ
」
庭に生えている一本の木に向かって、軽く魔力を込めて魔導銃を撃つイム。魔導銃は上限はあるものの、込めた魔力によって威力が変わるため、最低威力で試し撃ちをしていた。
最初の方は木にかすらせることもできず後ろの塀に当たっていたが、四回五回と練習を重ねるうちに段々と当たるようになっていた。
最後の方にはしっかりと木の真ん中に当たるようになったのを確認して、その日は練習を止め、寝る準備をしに孤児院へと戻いった。
翌日、イムはいつも通り朝に起きて支度をすると、銅級ダンジョンへと来ていた。
「さて、今日は実戦で魔導銃を使ってみるぞ」
小さくつぶやきつつ、今日の目当てのゴブリンを探す。イムは最初からゴブリンアーチャーやソードマンと新しい武器で戦うのはリスクがあると考え、最初にただのゴブリンで慣らす一日にしようと決め行動する。
しばらく歩くと目の前にゴブリンが現れた。身体能力の上がったイムはすでにただのゴブリン程度ならスキルである奇術を使用しなくても倒せる程度にはなっていた。その為今回は奇術なしで戦ってみようと決め、戦闘を開始する。
「グギャ!」
「オラ!」
バシュッ、魔導銃から魔弾が放たれるが動くゴブリンに当てるのは、動かない的に当てるのとは段違いの難しさだった。近づいてくるゴブリンに連続で魔導銃を放つが、どれも当たらない。
「くそ、オラァ!」
「グギャッ」
最終的にかなり近づかれたイムは腰の短剣を引き抜き仕留める。動く相手に当てる、というのもそうだが、イムは自身の利き手である右手は短剣をいつでも持てるようにするため、利き手ではない左手で魔導銃を扱おうとしているのも難易度が高い理由の一つだと理解していた。
「やっぱりむずいな、でも使いこなせるようになればかなりの武器になる、やってやる」
決意を新たに更にゴブリンを求めてダンジョンの奥へと入っていく。
そして何度かゴブリンと戦い、魔導銃でゴブリンを仕留められるようになったイムは、新たな試みに挑戦してみようと決める。
「これ、奇術を組み合わせたら大分幅が広がる気がする……やってみるか」
そして標的であるゴブリンを発見し、戦闘を開始する。
「グギャ!」
「土壁四連! くらえ!!」
バシュバシュバシュバシュ、奇術による土壁をゴブリンのサイズぎりぎりで作り囲んだところに、間髪入れず魔導銃を連射するイム。土壁の中から悲鳴が聞こえたと思えば数秒後には静かになり、イムが奇術を解除して土壁が霧散するとそこには魔石が一つ、ぽつりと落ちていた。
「……これ、簡単だけど運も関わってくるな」
一度使った戦法を分析するのはイムの癖と言ってもいいことだった。土壁で囲み一方的に攻撃する、というのは確かに強力だった。だが土壁は自身からも相手が見えなくなる。見えない敵に勘だけで攻撃するとなるとリスクもあることに気が付いていた。
「他の戦い方も試してみるか」
この戦法は確かに強かった、だがリスクもあると分かったイムは他にも戦略の幅を広げようと更に試行錯誤を重ねる。
次に行ったのは、分身を突撃させる戦い方だった。自身の精巧な分身を作り出し、突撃させ相手に対応させる。その時に出来た隙を見て撃ち抜く。
イムは気が付いてなかったが、これはいわゆる一般のパーティーを組んでいる冒険者の戦い方であった。前衛が壁となり後衛が攻撃を重ねる。そんな基本的だが強力な動きを、イムは一人で完結させていた。
更にその次に試したのは奇術の攻撃力のなさを利用した戦法。
最初に炎弾を何度か相手に向かって撃つ、すると相手は段々こちらの魔法が見せかけで攻撃力がかけらもないことに気が付く。それは知能の低いゴブリンですらそうだった。それを逆手に取る。
こちらの攻撃が見せかけだと気が付くと次第に相手は避ける事すらしなくなっていった為、そのタイミングで炎弾の後ろに重ねるように魔導銃を撃つ。するとどうなるか、相手はダメージを受けないと思い込んでいるところに想定外の攻撃を食らうことになる。その隙を逃さずに魔導銃を連射したり短剣で止めを刺す。
この戦法は他の方法より時間がかかり、ゴブリンの討伐には向かないが、今後強敵とぶつかるときなどは役に立つと思い、何度か練習する。
「よし、大分形になってきたな。この調子でやってくぞ」
その後もイムは、ゴブリン相手に魔導銃を使った戦い方の練習を重ねていく。日が落ちるその時まで。




