第5話:未来知識の証明(ひれ伏す権力者)
総統府の地下深く、極秘の作戦指令室。
冷たい空調の音が、張り詰めた空間にひびく。
◆ ◆ ◆
王の決断だけでは、国家の歯車は回らない。
現場の権力者たちを完全に心服させる必要がある。
言葉や肩書きではなく、圧倒的な事実によって。
だから俺は、この瞬間を待っていた。
彼らの常識を破壊する、絶望の未来が訪れるときを。
◆ ◆ ◆
「午後二時五十九分。……何も起きないじゃないか」
軍の幹部が、苛立ちを隠さずに吐き捨てた。
「こんな少年の与太話を信じて、全軍待機だと?」
「総統もどうかされたのではないか」
周囲の大人たちが、俺を冷ややかな目で見下す。
「あと十秒だ。瞬きせずに画面を見ていろ」
俺は首筋のインプラントに思念をおくる。
モニターの映像が、北京の東側最大の都市、瀋陽市へと切り替わった。
「五、四、三、二、一――」
「来るぞ。習孟平が、絶望の歴史を書く瞬間だ」
午後三時ちょうど。
画面の奥で、凄まじい閃光と爆炎が噴き上がった。
『緊急事態! 瀋陽の軍事施設で大規模な爆発!』
『所属不明のテロリストによる攻撃とのことです!』
オペレーターの悲痛な叫びが、指令室にこだまする。
「馬鹿な……! 防諜局の網にも、一切引っかかっていなかったぞ!?」
「時刻、場所、規模……すべて少年の言葉通りだと!?」
幹部たちの顔から血の気が引き、一斉に立ち上がった。
さきほどまでの嘲笑は消え失せ、重い沈黙だけが落ちる。
「信じられない。我々の情報網すら掴めない軍事行動を、なぜ……」
「……だからいったはずだ。これはただの記録だと」
俺は表情一つ変えず、うろたえる大人たちを一瞥した。
「総統。次の指示を。時間は待ってくれない」
「……ただちに防衛レベルを引き上げろ!」
張り詰めた空気の中、首筋のインプラントが熱を持つ。
情報の処理にともなう、脳が焼き切れるような代償。
体がわずかに傾いた瞬間。
背後に立つ小梅の肩が、そっと俺の背中を支えた。
最愛の彼女の破滅まで、あと998日。
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