第3話:SP小梅との最悪な初遭遇
15話まで、1時間おきに連続投稿します。
雨音が打ちつける、台北の薄暗い路地裏。
俺の眉間に、硬く冷たい銃口がピタリと向けられていた。
◆ ◆ ◆
国家のトップに謁見するためには、正規のルートは使えない。
未来の『記録』によれば、台湾の警察や防諜局の上層部は、
すでに親中派の売国奴たちに深く汚染されている。
接触すれば、俺は『知りすぎた不審者』として暗殺される。
だから俺は、国家機関のシステムをすべて無視した。
絶対に裏切らない『総統個人の極秘回線』にのみ、
ピンポイントで強烈な異常信号を飛ばしたのだ。
その価値がわかる「総統の懐刀」だけを、確実におびき出すために。
◆ ◆ ◆
「……総統の極秘回線をハッキングしたのが、こんな少年?」
ポニーテールの女は、氷のような目で俺を睨んだ。
手にあるのは、9mmカスタム拳銃『梅花』。
周囲の路地は、すでに彼女の部下たちによって封鎖されている。
台湾総統直属の特別警護官、李小梅。
俺の手土産の価値がわかる、本物のプロフェッショナルだ。
「ハッキングじゃない。ただの情報の掃除だ」
俺は首筋のインプラントに、静かに思念をおくった。
青白い熱が走り、イーロン・リンクが起動する。
「君の端末に、お土産のデータを送った。確認しろ」
俺が言い終わるより早く、彼女のリンク・グラスに警告が点滅する。
空中に強制展開されたホログラムを見て、彼女の顔に驚愕が走った。
「こ、これは……『親中派の裏金リスト』!? なぜあなたが……っ!」
「それは俺と頼総統が話すことだ。俺を総統府へ案内しろ」
彼女の息を呑む音が、雨音に混じって聞こえた。
「……信じられない。国家の最高機密を、個人で抜き取るなんて」
彼女は『梅花』を構えたまま、わずかに銃口を下げた。
そのとき。
じわりと、首筋のインプラントが限界を超える熱を持った。
「っ……」
視界が歪み、俺は路地裏の壁に手をついて崩れ落ちそうになる。
未来技術を前倒しで使う、強烈な排熱の代償。
「……ちょっと、大丈夫なの?」
小梅は思わず一歩踏み出し、俺の腕を支えた。
これが、のちに俺の最高の共犯者となる女との、始まりの形。
最愛の彼女の破滅まで、あと999日。
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