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第12話:独裁者の絶望と宣戦布告

台北の空が、完全な朝焼けに染まっていた。


通信室の歓喜は、いまや恐怖の静寂へと変わっている。


◆ ◆ ◆


情報戦において、俺たちは完璧な勝利を収めた。

だが、大義名分を失った独裁者は理性を捨てた。


面子を潰された大国が選ぶのは、むき出しの暴力だ。

歴史の盤面は、情報戦から物理的な総力戦へと移行する。


◆ ◆ ◆


「……北京から、全世界へむけて緊急声明が出されます!」

オペレーターの悲痛な声が、通信室にひびいた。


モニターに、冷徹な表情の習孟平が映し出される。


『我が国は、台湾の卑劣なサイバー攻撃を受けた』

『これは明確なテロ行為であり、断固たる武力で排除する』


世界中を騙そうとした自作自演への言及は一切ない。

ただ力で台湾をすり潰すという、狂気の宣戦布告だ。


「沿岸部の全軍事基地で、大規模な艦隊編成や出港準備の兆候があります!」

「弾道ミサイルのサイロも、一斉にアクティブ化しました!」


次々と報告される絶望的な戦況に、幹部たちが頭を抱える。

「数千発のミサイルによる飽和攻撃だ! 台湾が消滅するぞ!」


「終わりだ……! 正面からこられたら、防ぎきれない!」

悲鳴のような声がひびく中、俺は冷たく笑った。


「……騒ぐな。想定通りだ」

「トップが激怒しようと、大軍が数日で動けるわけがない」


「だが、すでに配置された即応部隊ミサイルは別だ」

首筋の生体インプラントに、静かに思念をおくる。


青白い熱が走り、脳内にイーロンの声がひびく。

『キッドのいう通り、敵は完全に理性を失っているね』


「ああ。大義名分のない暴力は、ただの暴走だ」


俺はうろたえる大人たちを、冷ややかな目で見渡した。

「これで世界の世論は、完全に台湾の味方になった」


「……だが、我々だけでどうやってあの軍勢を止めるのだ!」

幹部の問いに、頼玄徳も静かに息を呑んで俺を見つめる。


「台湾だけでは無理だ。だから、世界を盤面に引きずり込む」

「大軍が到達するまでの猶予で、日米台の新たな同盟を作る」


「『海洋連盟』だ」


強烈な排熱による痛みが、脳を焼き切るように走る。

視界が歪み、俺は機材のラックに倒れ込みそうになる。


その瞬間。

背後にいた小梅が、俺の体をがっちりと支えた。


「……本当に、無茶苦茶な男ね」

背中越しに、彼女の確かな鼓動が伝わってくる。


「で? 次はどこを火の海にする気よ、軍師サマ」


最愛の彼女の破滅まで、あと992日。

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