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第11話:未発生の悲劇、全世界同時配信(後編・ざまぁ)

台北の地下通信室は、歓喜のどよめきに包まれていた。


モニターには、世界中の怒りの声が滝のように流れている。


◆ ◆ ◆


俺たちが仕掛けた情報戦は、完全な勝利に終わった。

独裁者の用意した大義名分は、跡形もなく消え去った。


だが、歴史に名を刻む男が、これだけで終わるはずがない。

窮地に立たされたときこそ、化け物は真の姿を現す。


俺はイーロン・リンクを通じ、北京の中枢を覗き込んだ。


◆ ◆ ◆


北京の最深部。薄暗い執務室。


「全ネットワークの制御が戻りません!」

「我々の機密映像が、世界中で垂れ流されています!」

将軍たちが悲鳴を上げ、床に崩れ落ちている。


執務机の奥。北京の独裁者、習孟平。

氷のように冷徹だった彼の顔から、余裕が完全に消え去っていた。


ギリッ、と不気味な音がひびく。

彼の手の中で、分厚い茶杯が粉々に砕け散った。


「……防諜局の無能どもめ。これがネズミの仕業だと?」

地の底から響くような殺意に、将軍たちが恐怖で息を止めた。


己の盤面をひっくり返す未知の化け物の存在を、思い知らされたのだ。


「ただのネズミではない。化け物め……っ!」

滴る血が頬を汚すのも構わず、彼はゆっくりと天を仰いだ。


次に彼が正面を見据えたとき、その瞳から一切の感情が消え失せていた。


無言のまま、粉々になった茶杯の破片を靴底で踏み砕く。

ジャリッ、と冷たく乾いた音が執務室にひびいた。


「大義名分は消えた。……ならば、暴力で世界を黙らせろ」

「全軍に物理進攻を命じろ。あの島を命ごと焦土に変えろ!」


理性を捨て、圧倒的な暴力へとシフトする独裁者。


俺は網膜に映るその顔を見て、冷たく笑った。

せいぜい絶望に狂え。あんたのシナリオはすべてへし折る。


◆ ◆ ◆


『最高にスリリングな展開だね、キッド』

脳内でイーロンが、楽しげに笑う。


『おや。さっきの小悪魔が、本気で僕のコードを解析しにきたよ』

視界の端、サブモニターに小さな異常が起きた。


ピコッ、と柴犬のアイコンがポップアップする。


自律型AI『D.O.G.E.(ドージ)』。

小飛の相棒が、未来の防壁にガツガツと噛みついている。


『……ちょっとだけ遊んであげようかな』

脳内で、羽扇で口元を隠した男がニヤリと笑う気配。


俺は小さく息を吐き、呆れた顔で呟いた。

「……あまり苛めるなよ、孔明」


視界を隣に立つ小梅へと戻す。


彼女も俺の顔を見て、そっと息を吐いた。

「……で? 次は誰を撃てばいいの、軍師サマ」


最愛の彼女の破滅まで、あと992日。

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