神が預けた力、代行者二人が降下
【System:対象の侵攻により、遠隔防壁の耐久値が残り 15% に低下】
三時間後。
俺たちを乗せた飛竜要塞が、炎を上げながら王都上空へと突入した。
眼下には、世界中から送られた三色の極光の結界の中で、激しく身悶え増殖する「真っ黒な空間のバグ(World_Eater)」の巨塊が、今にも防壁をブチ破ろうと蠢いていた。
「間に合った……!」
俺は要塞の甲板へ飛び出し、眼下の地獄を見下ろした。
王宮の前には、防壁を通してバグの圧力に耐えかね、何百人もの騎士や魔導師たちが倒れこんでいる。だが、死者は一人も出ていない。
「アッシュ様ぁぁっ!!」
「神が……我らが神が、世界の果てから帰還してくださったぞぉぉっ!!」
俺たちの空飛ぶ神輿が到着したのを見た瞬間、疲弊しきっていた王都の人間たちが、信じられないほどの歓喜と熱狂の爆発音を上げた。
『アカウント『ASH』。王都の通信網の回復を確認。大喰らいの侵攻再開まで、残り[ 5分 ]です』
システム(AUDIT)のホログラムが俺の耳元で告げる。
『しかし、再三の警告ですが、あなたの現在の保持権限(20%)では、あの対象を一撃でデリートすることは不可能です。強制終了コマンドは、容量不足で弾かれます』
「分かってるよ」
俺はシステムへの返答と共に、隣で剣と杖を握りしめるセレスティアとエレナを見た。
「俺一人の力じゃ、あいつは消せない。俺の神としてのチート(容量)は、もうほとんど残ってないからな」
「アッシュ卿……」
二人がハッと息を呑んだ。ついに俺が、自らの無力限界を認めたと思ったのだろう。
だが俺は、不敵に笑って見せた。
「だからこそ、お前たちの出番だ。俺の最高で最強の『ポンコツ盾(一番乗り)』にな!」
「!!」
「いいか。奴は空間のバグだが、俺が張った三色の結界(物理魔力)を吸収できずに弾かれている。つまり、今この王都においては、俺の権限(システム干渉)よりも、お前たちが放つ『物理的な一撃(莫大な魔力)』の方が奴に対して有効に働く!」
俺は二人の肩を力強く叩いた。
「俺がお前たちの中に、世界のネットワーク(南、西、東から集めた魔力リソース)のすべてを同期(同期バフ)させる! 限界突破したお前たちの本気の一撃で、あのバグの真っ黒な装甲(エラー外殻)を全損させて、一番奥の『脆弱なコア(数十キロバイトの核)』だけを剥き出しにしろ!」
「その『一番奥に隠された小さな核』だけなら……俺の残りのポンコツ権限(20%)でも、確実に一発でデリートできる!!」
「おおおおおおっ……!!」
俺のデバッグ連携の指示(完全な責任の丸投げ&バフ盛り)を聞いて、二人の瞳に、太陽のように燃え盛る闘志の火が点った。
「神よ……! 我ら矮小な人間に、神代の魔物を討ち果たす特大の役割と、すべての魔力を預けてくださるとは!」
「全ては、あなた様がこの王都へ帰るため! そして世界が自らの手で立ち上がるための儀式! しかと受け取りましたぞ、アッシュ卿の熱き御心!!」
「いけぇぇっ!! セレスティア、エレナ!!」
俺が天(システムの虚空)に拳を突き上げると同時に。
彼女たちの体に、王都の空を覆っていた三色の極光(世界中の魔力ネットワークリソース)が、凄まじい渦となってギュルルルルッと集束されていった。
神の代行者にして、限界突破のバグキラー。
二人のヒロインが、要塞の甲板から隕石のように王都の大地へとダイブしていったのである。




