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監査会議、唯一神から主席管理官へ

 群衆が完全に静まり返った王都。

 俺は王宮の極秘執務室で、俺とエレナ、セレスティア、そして監査AI『AUDIT』のホログラム・アバターだけを交えた、厳秘の『今後のシステム運用に関する査定会議』を行っていた。

『これより、最終評価を下します。アカウント『ASH』』

 ホログラムのAIが無機質に告げる。

『あなたはこれまでの期間、自己の権限を乱用し、巨大なゴーレムや都市の天候バグを強引にデリート・書き替えるなど、サーバー演算リソースを著しく浪費してきました。これは完全な監査対象(違法行為)です』

「ぐっ……だが、それは王都の人たちを守るためで……!」

 俺が言い訳しようとするが、AIは微塵もブレない。


『しかし。今回の「王都全域パージ(クーデターのサーバー落ち)」の危機において、あなたは『威嚇(偽装)』という非物理的な手段を用い、魔力の衝突負荷を安全域にまで即座に下げることに成功しました』

『これは、現地エラー起因(人間)を効率的にコントロールする【管理者としての本質的な素質】であると評価します』


「お、おい……?」

『結論。アカウント『ASH』への強制BAN(権限剥奪)プロセスを永久凍結します。あなたは引き続き、この世界(環境維持システム)の管理者権限を保持することを認められました』


「「「おおおおおっ!!」」」

 俺の左右に控えていたエレナとセレスティアが、歓喜の余り俺に抱きついてきた。

「神よ……! あの青白い無機質な謎の存在(精霊?)すらも、アッシュ様の偉大なる奇跡と愛の深さを完全に理解し、ひれ伏したのですね!」

「アッシュ卿の御力は、もはや天地の裁定者システムすらも感服させるに至った! なんという痛快な勝利!」


 違う、ひれ伏してない。ただの業務査定(ボーナス支給)のフィードバック面談だ!


「……ふう。とりあえず、クビは免れたわけか」

 俺は心底ホッと胸を撫で下ろした。

 これで、俺が「魔法を使えないただの人間」に落ちぶれて、狂信者たちに幻滅される最悪のバッドエンドは回避された。俺は引き続き、世界で最も偉大なポンコツ神として(勘違いされたまま)平和に生きることができる。


『ただし』

 ホログラムのAIが、冷酷な光を放った。

『今回の一件で証明された通り。王都という【単一拠点】に、全ての神の権限(中央システム)を集中させておくことは、現地生命体の宗教的対立(クーデター負荷)を引き起こす最大の要因ボトルネックとなります』

「だから、権限を世界中に……他のノードに分散させるってやつか」

『肯定。あなたにはこれより、世界各地にある旧文明の【サブ・ノード(中継拠点)】を回り、今あなたが持っている『奇跡の力(システム干渉権限)』の大部分をそれぞれの各都市のシステムにインストールし、自律防衛させる【大分散プロトコル】の実行責任者となってもらいます』


「……それってつまり、俺が『何でもボタン一つで消せる神様』じゃなくなるってことだよな?」

 俺がため息交じりに言うと、エレナとセレスティアが息を呑んだ。


『肯定。あなたの出力権限は分割され、個人としての無双能力チートは失われます。ですがその代わり、世界全体が「あなたがいなくても、ある程度は自分でバグを修正できる強固なシステム」へと進化します』


 俺とAIの対話。それはヒロインたちからはどのように見えていたのだろうか。

「アッシュ様……」

 エレナがウルウルとした目で俺を見つめた。

「自らの絶対の力(全能)を削り、分割し、世界へと分け与える……。我々人間が、自らの足で立ち、自らの手で世界を守れるように……『親離れ』の時をお与えになるのですね……!!」

「なんと深い慈悲……! 神は、玉座にふんぞり返るのではなく、自らの身を削ってでも我々人類を次のステージへ導いてくださるというのか!」


 だから違うんだよ!!

 俺はただ、俺ひとりが24時間365日バグの修正(サポセン業務)で呼び出されるのがキツいから、仕事を各地のサーバーに外注(自動化)して、有給を取りたいだけなんだ!!


「……ああ、そうだ。俺は、お前たち人間がいつか、システムに頼らず生きていける世界を創るために……少しだけ、権限と責任を分割しに行くんだ」

 俺は遠い目をして、それっぽくカッコつけたセリフで自分の左遷(分散管理作業)を正当化した。


 かくして、監査AIとの条件付きの【停戦合意(査定完了)】は成立した。

 俺は「唯一無二の神」としての絶大なチート権限をあえて手放し、代わりに「世界中を旅してシステムの基盤を立ち上げる」という、途方もない長期出張の旅路へと向かうことが確定したのである。


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