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停戦成立、神託が異動承認になる

 広場に崩れ落ちたすっぴんの空と、泣き叫ぶ神権派・反神派の群衆たち。

 それらを王宮の窓から見下ろしながら、俺は深く息を一つ吐いた。

「みんな、聞け!」

 俺は再び、広域システムを使って王都全域に俺の声を響かせた。

「お前たち人間が、勝手に『神がどうだ』『魔法使いの復権がどうだ』と騒いで争うたびに、我々(システム)は膨大な修復の手間をかけさせられている。今回、俺がお前たちの上から空を消し去ったのは、ただの【システムテストの警告】に過ぎない!」


 ビクッ! と、地面に這いつくばる数千の群衆が肩を震わせた。

「俺は、お前たち人間を縛るつもりはない。同時に、俺がこの玉座という箱庭にずっと留まり続けることもない。俺は『監査システム』の要請に基づき、より大きな仕事……世界全体への権限の分散を行うために出張(作業)へ出るのだ!」


「「「おおおおおっ!!」」」

 ゼノンをはじめとする俺の狂信者たちが、王宮の内外で一気に感極まった叫びを上げる。

「アッシュ様は! 我ら矮小な王都の人間たちの狭い視野には収まりきらぬ、全世界の命脈を修繕するための『大いなる旅』に出られるのですね!」

「なんという壮大な御計画……! 我々が神を玉座に縛り付けようとしたことなど、大海をコップ一杯に閉じ込めようとするものと同じ愚行であった……っ!」


 俺は心の中でガッツポーズをした。

 よし、これで「俺が王都からいなくなる(左遷・出張)」という事実を、クーデターを起こした神権派にすら『神の偉大な計画の一部』として完全に肯定アファメーションさせることに成功したのだ。


 さらに、俺は反神派の過激貴族たちも睨みつけた。

「反神派の連中もよく覚えておけ。俺が(分散管理の作業で)奇跡を使わなくなったからといって、システムそのものが衰えたわけじゃない。俺が本気で【YES】を押せば、お前たちをアカウントごと削除デリートすることなど、いつでも可能だということをな」


「ヒッ……!!」

「も、申し訳ございませんでしたぁぁっ! 偽神などと……世界(空)を一瞬で消し去るほどの全能の神に向かって……我らはとんでもない異端の罪を犯していた……っ!」

 反神派の連中も、完全に首を垂れて懺悔を始めた。

 彼らが次に反乱を企てるまでに、俺の権限による王都の管理システム再構築(自動防衛システムの強化)が完了していれば、もう俺が手動でデバッグしなくても自動で鎮圧されるだろう。


「アッシュ卿……いや、我らが神よ」

 背後で、セレスティアが膝をつき、両手で魔剣を捧げ持った。

「我ら人類の争いが、神の心をどれほど痛めつけていたか……。愚行の連鎖を断ち切り、新たな世界の理(分散・解放)をお説きくださったこと、この胸に深く、痛いほどに刻み込まれました。これより私は、あなた様を玉座に縛るのではなく、あなた様が進む【果てなき世界創造の修羅の道】を共に歩む絶対の盾となりましょう!」

「ええ! 私も、神の行く手に立ちはだかるすべての障害を永遠凍土に沈めてまいりますわ!」

 エレナも杖を胸に抱き、俺に熱烈な信仰の目を向けている。


 ……まあ、こいつら(ヒロイン)が一番過激で制御不能な武力の塊なのは間違いないのだが、少なくとも「俺を部屋に監禁する」という考えは捨ててくれたようだ。


『──対象・王都生命体(人間)の完全な統制化を確認。暴動リスクの減少率 99% を記録』

 俺の隣に再び、監査AI『AUDIT』のアバターが現れた。

『アカウント『ASH』。あなたの「威嚇・心理的制裁」による事態の鎮圧効率は、局所的なシステム介入において極めて優れた結果を残しました』

「お褒めに預かり光栄だね。これでサーバーも落ちない。俺もクビにならない。一件落着だろ」

 俺が皮肉交じりに言うと、ホログラムのAIは青白い光を揺らした。


『肯定。しかし、あなたは私の先ほどの提案に同意したと認識しています』

「……え?」

『あなた自身が今、群衆へ向けて宣言した通りです。【より大きな仕事……世界全体への権限の分散を行うために出張(作業)へ出る】と。これは、我が監査システムが求めた【大分散プロトコル】の受諾としてログに記録されました』


 俺はポカンと口を開けた。

 群衆を納得させるための俺の「カッコつけたブラフ(適当な言い訳)」が、そのままシステム側に『異動の承諾書』として処理されてしまったのだ。

 俺の、チーフ・デバッガーとしての過酷な「権限分散作業(全国出張)」は、もはや撤回不可能な絶対のスケジュールとして確定してしまったのである。


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