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世界初期化ボタンで戦意を折る

【System(世界)を初期化しますか? [ YES ] 】

 漆黒に塗り潰された空に、突如として浮かび上がった巨大で禍々しい赤いホログラム文字。

 それは、王宮前広場で空中に浮遊(無重力化)している数千人の人間たちの目に、この世の終わりを告げる決定的な『神の宣告状』として焼き付いた。


「そ、空が……天空が、丸ごと『消失』した……!?」

「太陽が……星が、食われている……!?」

 恐怖。

 ただの夜空ではない。そこに本来あるべきグラフィックデータが存在しない『純粋な黒(初期化状態)』の空を前に、人間は本能的な世界の終焉システムダウンの恐怖を植え付けられ、ガタガタと震え出した。


「よく聞け、人間ども」

 さらに俺は、システム(広域アナウンス)を通して、俺の声を王都中の人間の頭の中に直接響かせた。

「俺は『主席管理官チーフ・デバッガー』だ。お前たちが無意味な争いを続け、世界システムをこれ以上疲弊させるつもりなら」


 俺は漆黒の空のど真ん中に浮かぶ赤い炎の文字を、さらに明滅させた。

「──俺はいつでも、このボタンを押して、世界を終わらせ(再起動させ)るぞ」


 俺が放った、神としての『最後の脅し(ブラフ)』。

 その言葉と光景は、神権派も反神派も関係なく、全ての人間たちを絶望の極致へと叩き落とした。


「ヒ、ヒィィィィィッ!!」

「ご、ご勘弁を! 神よ!! アッシュ様ぁぁっ!!」

 広場で無重力状態のまま浮遊していた数千の反神派テロリストと神権派(狂信者)たちが、完全に戦意を喪失し、空中でバタバタとモガきながら必死に拝み土下座の姿勢を取ろうとし始めた。


「俺たちが間違っていた……! 神は弱っていなかった! 我らの争いが、世界の命脈(システムの機嫌)を損ねてしまったのだ!」

「神を玉座に縛り付けるだと? なんという傲慢! 神はいつでも、我々から『空』を……世界そのものを取り上げることすら容易いというのに!!」


 泣き叫び、杖を投げ捨て、魔法を解除し、完全に降伏を示す人間たち。

 彼らの心底からの恐怖と屈服によって、王都のサーバーに充満していた「大規模な魔力衝突エラー」は、急速にゼロへと収束し始めていた。


「どうだ、監査AI(AUDIT)。これでエラーのスタックは止まったはずだ」

 俺がシステムのホログラムアバターに向かって告げると、青白い光子の粒がチカチカと点滅した。

『演算負荷の低下を確認。安全圏(ブルー表示)への移行を予測。……王都システム強制パージ(初期化)のカウントダウンをサスペンド(一時停止)します』


「……ふう。……よし、終わった」

 俺は大きく息を吐き出して、視界のシステムの安全通知を確認した。

 首の皮一枚で、俺たちは世界サーバーの崩壊を回避したのだ。


「Target:Capital_Gravity_Parameter! Action:Rewrite! Value:『1G(通常重力)』へ復帰!!」

「Target:Sky_Dome_Texture! Action:Rewrite! Value:デフォルトの青空へ復帰!!」

 俺が立て続けにコマンド(エンターキー)を叩き込むと、漆黒の空が「バチッ」と音を立てて再び元の美しい青空(テクスチャ素材)を取り戻した。

 同時に、空中に浮いていた人間たちが、ドザァァッ!と情けない音を立てて広場の地面へと落下した。


「おおおお……! 空が、光が戻ったぞ!」

「神が、アッシュ神が我々を許してくださったのだ!!」

 地面に這いつくばったまま、数千人がボロボロと涙を流し、俺のいる王宮の窓辺に向かって地面に額を擦り付ける。


「す、素晴らしい……っ!!」

 俺の背後で、魔力を提供して魔力切れ寸前のエレナとセレスティアが抱き合いながら号泣していた。

「神が、神の全能の力(空の消去)をもってして、一滴の血も流さずに愚か者どもへ恐怖という名の『赦し』をお与えになった!!」

「アッシュ卿の度量の広さは宇宙そのもの! このセレスティア、生涯あなたの矛として傅きましょう!」


 よし、これで王都でのクーデターは完全に鎮圧できた。

 だが、俺と監査AIとの『本当の交渉(システムの運用ルール決め)』は、ここからが本番だった。

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