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残り十秒、重力ゼロの緊急回避

【System:王都システムパージ(崩壊)まで……残り10秒】

【残り9秒】

 監査AI(AUDIT)の赤いデジタルフォントが、俺の視界で無慈悲にカウントを刻む。

 上空からは、俺が「大玉転がしの負荷」を一時的に逃がすために上へカッ飛ばした『摩擦ゼロ&数十トンの巨大絶球』が、隕石のごとく落下してきているのが見えた。

 アレが王都の地面に激突した瞬間──その運動エネルギーと魔力の処理にサーバーは耐えきれず、カウントダウンを待たずして王都は物理データごと「強制初期化(消滅)」するだろう。


「アッシュ卿!! 大いなる隕石が降り注いで来ますぞ!!」

 セレスティアが窓を蹴破り、空へ向かって跳躍しようと魔剣を構える。

「王女殿下は下がって! 私が上空に50層の氷結装甲を……!!」

 エレナが極大魔法の詠唱を開始する。


「やめろ二人ともッ!!」

 俺は叫びながら、二人を強引に後ろへ引き倒した。

「お前たちの極大魔法が当たった瞬間、その『衝撃(処理負荷)』で世界サーバーが終わるんだ! 今は一切の魔法を使うな!!」

 俺の悲痛な叫びに、ヒロイン二人が瞠目し、そして魔法を止めた。


【残り7秒】


 広場にいる数千人の神権派と反神派も、空から落ちてくる絶対の死(大玉)を見て絶望し、次々と防御魔法を張り巡らそうとしている。その一つ一つの魔法が、王都のサーバーに「重い処理の負荷」として次々にスタックされていく。


【System:負荷限界率 99.98% 突破】

『警告します、アカウント『ASH』。現地生命体の魔力干渉を停止させられなければ、安全装置パージを速やかに実行します』

 監査AIのホログラムが、耳元で処刑宣告を囁いた。


「わかってんだよ!! だから今から、全員の処理(魔法)を『無効化キャンセル』する!!」

 俺は怒鳴りながら、視界に開いたUIシステムの根幹コード──『王都・物理演算パラメーター』の【環境重力設定】を引きずり出した。

 大玉のベクトルを変えたり、個別の魔法をDeleteしたって意味がない。

 王都全体にかかる『魔法の負荷』と『大玉の落下エネルギー』を同時に消し去る方法は一つしかない。この世界の「物理ルール」を、一時的に書き換える(Rewrite)ことだ!


「Target:Capital_Gravity_Parameter(王都全域の環境重力値)!!」

「Action:Rewrite(上書き実行)!」

「Value:重力定数を『 1G 』から──『 ゼロ(無重力) 』に書き換える!!」


【System:警告。広域レベルの環境マスタールール変更は、あなたの権限外です】

【System:ただし、システム崩壊防止のための『緊急回避コマンド』として一時承認します】


 ピィィンッ。

 視界が、緑の光に包まれた。


【残り3秒】で。

 落下を続けていた数十トンの大玉が──地上まであと数十メートルのところで、まるで羽毛のように『ふわり』と空中で静止したのである。


「「「「……へ?」」」」


 同時に。広場で争い、叫び、防御魔法を張ろうとしていた数千人の人間たちの足が、地面から「ふわあぁっ」と数センチ浮き上がった。

 王宮の窓辺にいたセレスティアとエレナも、そしてゼノンも、俺も。

 室内の机や、ペンや、書類の山たちも、全員揃って『無重力の宇宙空間』のように、空中にプカプカと浮遊し始めたのである!


「なん、じゃこりゃああああっ!?」

「浮いてる!? 体が、地面から離れて──」

「魔法陣が……地面に描けぬ! 魔力定着が剥がれていく!」


 無重力状態になったことで、地面を起点とする大半の魔法(術式)の物理前提が崩壊した。

 そして何より、巨大な鉄球が地面に激突する【落下エネルギー(最も重い物理演算プロセス)】が、重力が無くなったことで『ゼロ』にリセットされたのである!


【System:演算負荷の急速な低下を確認】

【System:王都システム崩壊確率 45% まで減少。強制初期化パージのカウントダウンを一時停止サスペンドします】


「……よし……! よし、首の皮一枚繋がった……!」

 俺は空中にプカプカと浮かびながら、ガッツポーズをした(そのまま反動で壁にぶつかって少し痛かった)。


「ア、アッシュ様……これが、あなたの真の御業(奇跡)……!」

 空中でクルクルと回りながら、エレナが感涙にむせんでいる。

「天の重力をも消し去り、大いなる危機(大玉)を無に帰すだけでなく、この数千の魔導師たちにすら『一切の干渉(魔力)』を許さぬ究極の領域(無重力)の展開! 絶対の平和空間の現出!!」

「さすがは我らが神……!」


 俺の応急処置バグ(無重力)が、広場の数千人を完全に沈黙させ(物理的に空中に浮いてモガモガしているため身動きが取れず)、クーデターを物理的に停止状態へと追い込んだ。

 だが、これはあくまで一時しのぎの『サスペンド』だ。

 監査AIはまだ見ている。この暴動を根本的に黙らせ、王都の平和を取り戻さなければ、今度こそ俺の「神の座(特権アカウント)」は剥奪されることになる。


「ここからが、主席管理官チーフ・デバッガーの正念場だぞ……!」

 俺は空中で体勢を整え、両陣営(浮遊中)に対する史上最大の『神託ブラフ』を打ち込む準備を始めたのだった。


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