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第二鍵回収、敵対勢力が湯治民化

「ほ、ほわぁ〜……」

「アッシュ卿の御力は、荒れ狂う自然の吹雪すらも、このように甘美で温かな癒やしの泉へと変えてしまわれるのですね……極楽至極……」

 俺の左右で、エレナとセレスティア王女が、なぜか(神務庁が用意した手ぬぐいを頭に乗せて)温泉に肩まで浸かって幸せそうに目を細めていた。

 ちなみに、ゼノンや護衛の騎士団五百名も、全員が武装を解除して広大な露天風呂(元・絶対零度の雪原)を満喫している。


 そして何より恐ろしいのが、俺たちを殺そうとしていた『反神派』と『魔法至上主義の過激派貴族』たちまでが、俺から数メートル離れた隣のお湯に浸かりながら、気持ちよさそうに空を仰いでいることだった。


「……あ、あったかい……。我々はずっと、親の愛も知らず、冷たい権力闘争の中で心が凍りついていたのかもしれん……」

「ああ……アッシュ神よ。あなたは我ら自身をも殺す気だった愚かな魔法使いの命すら、このような温もりで包み込み……その冷え切った魂を救済してくださるというのか……?」

「我々は間違っていた! これほどの愛と温もり(42度の適温)の泉を瞬時に造り出すお方、神以外の何者でもないっ!!」


 おい、なんで数文字ソースコード(属性パラメータ)をいじっただけで、暗殺部隊が全員ポカポカの温泉で洗礼を受けて回心しちゃってるんだよ。


「いや、違うだろ! お前たち、俺を殺そうとして」

「なんという慈悲深きご発言!」

 温泉から立ち上がった反神派のリーダー格が、ビショ濡れのローブ姿のまま、ズブァッと湯船の中で土下座を決めた。(顔がお湯に沈んでいるが大丈夫か)。


「我らの刃が届かぬことなど、神には自明の理……! しかし、神は我らを罰することなく、あえて『温かき赦しの湯』を用意してくださった! 我々の悪意すらも、この湯に溶かして清めてしまおうというのですね!!」

「おおおっ!! この命、今よりアッシュ神の湯守り(信徒)として捧げます!!」


「……よし、もう好きにしてくれ」

 俺は完全にツッコミを放棄して(俺も首までお湯に浸かりながら)、塔の中枢に鎮座する『二つ目の管理鍵』へと視線を向けた。

 気候制御塔のエラーを「温泉属性」に書き換えたことでシステムが一時的に安定し、中央の台座に白銀のUSBデバイス──鍵デバイスが浮き上がっていたのだ。


 俺はお湯の中をバシャバシャと歩いて台座に近づき、手を伸ばした。

【System:第二の管理鍵(気象制御ノード・マスターキー)の所有権を確認】

【System:監査猶予期間カウントダウンを更新します】

【残り猶予期間:21日 → 28日へと延長されました】


「よぉし! これで半分だ!」

 俺がガッツポーズをした瞬間、背後の露天風呂から五百人の騎士と、回心したばかりの元・暗殺部隊の野郎どもが、一斉に立ち上がって万歳三唱を叫んだ。


「神聖なる第二の鍵、回収完了!! アッシュ神に栄光あれ!!」

「この地帯をこれより『アッシュ神聖温泉郷』と名付ける! 我らが湯脈を守り抜こうぞ!!」


 こうして、ただの出張デバッグ(権限ダウングレード中)は、なぜか「命を狙ってきた敵対勢力を温泉のぬくもりで完全に取り込み、新たな聖地を開拓する」という凄まじい奇跡の英雄譚として、王都へと伝令が飛ぶことになった。

 次なる目的地は、海上物流ノード。

 俺はお湯から上がりながら、「頼むから次は、普通のメンテ作業で終わらせてくれよ……」と宇宙システムの神に祈ったが、そのフラグが即座に回収される運命にあることは、当然の理であった。


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