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五秒遅延デバッグの連携戦

ガァァァァァンッ!!

 地下空洞に、耳を劈くような激突音が響き渡った。

 振り下ろされたゴーレムの鉄巨腕を、セレスティア王女が魔剣を横に構えて、ギリギリで受け止めていたのである。

「く、おおおおおっ!! 流石は、神が鎮座する聖地の番犬……! 規格外の重さだ!!」

 彼女の足元の石畳が放射状にひび割れ、砕け散っていく。いくら彼女が『純粋な魔力バフ全開のステータスお化け』だとはいえ、十メートルの鉄塊のプレスを長時間支えきれるはずがない。

氷壁防御ダイヤモンド・シールド!!」

 エレナが即座に杖を振り、王女の頭上に巨大な氷のドームを展開して圧力を分散させる。


「アッシュ様! 我らが露払いをいたしますゆえ、あのゴーレムに『裁きの雷(神のデリート)』を!」

「だから! 今、デカすぎて一発で消せない通信制限(データ量制限)を食らってるんだよ!」

 俺の悲痛な叫びは、ゴーレムの咆哮にかき消されて彼女たちには届いていないようだった。


【System:警告。ユーザーの権限では現在の対象(容量:特大)を一括消去できません】

「クソッ、ならどうする……! 細かく刻んで消すしかないのか!?」

 俺は視界のUIログを引き出し、ゴーレムのモデリング・データを猛烈な勢いで解析した。

 関節部、動力伝達経路、装甲のジョイント……。

 ゲームやシステムのデバッグと同じだ。巨大なエラーの一括削除が無理なら、動作の核となる「小さなパーツ(数キロバイトのデータ)」だけをピンポイントで見つけ出して、そこだけ消去デリートすればいい。


「Target:Golem_Right_Shoulder_Joint_Armor(右肩関節・防御装甲)!」

「Size:0.05MB。Action:Delete(限定消去)!」


 俺はゴーレムの右肩の関節、そのほんの『数センチ』の繋ぎ目だけをターゲットに指定し、YESボタンを押した。

 容量は極小。これなら弾かれない!

【System:要求を受理。……5秒後、部分消去を実行します】

「5、4、3……セレスティア! 右肩を狙え!!」

「承知!!」


 カウントダウンが0になった瞬間。

 ゴーレムの右肩を覆っていた絶対不可侵の厚い装甲の一部が、『シュンッ』という気の抜けた音と共に四角く消失した。

 そこには、中の脆い駆動用魔石が丸見えになっていた。

「そこだあああぁぁぁッ!!」

 セレスティアが魔剣に全てのオーラを纏わせ、弾かれたように跳躍。露出したわずか数センチの隙間へ、流星のような一撃を突き込んだ。

 バキンッ!!

 凄まじい破砕音と共に、右腕の駆動石が砕け散り、ゴーレムの巨大な右腕が重力に従ってズシンと地に落ちた。


「おおおおっ!!」

 背後で見ていた騎士団の野郎どもが、一斉に感嘆の声を上げる。

「見たか! アッシュ様はあえて魔獣を即死させず、右肩の装甲の『ほんの数センチ』だけを削り落としてくださったのだ!」

「王女殿下に、自らの力で敵を打ち倒す『試練と成長の機会』をお与えになったのだ! なんという精密無比なる奇跡! なんという親心!!」

「神よぉぉぉっ!!」


 ……まただ。

 容量不足で一部分しか消せなかった俺の『セコいデバッグ』が、完全に『神の精密かつ慈悲深い導き(アシスト)』として歴史教科書に載るレベルで誤解釈されてしまった。


「よ、よし! 次だ、エレナ! 左膝の関節を……【Delete】!」

「はいっ、アッシュ様の御心のままに! ……絶対零度ブリザード!!」

 俺が左膝の装甲を『数センチ』だけ消去した瞬間、エレナの極大氷結魔法がその弱点に突き刺さり、ゴーレムの左足首から下が粉々に砕け散った。


 こうして、約十数分後。

 俺の「ピンポイント装甲削除」という地味で神経をすり減らすデバッグ作業と、過保護なヒロイン二人の圧倒的な暴力(物理&魔法)によるコンビネーションにより。

 王都地下を脅かしていた旧文明の防衛ゴーレムは、原型を留めないただの鉄と岩のスクラップへと変貌を遂げたのであった。


「ふう……終わった……」

 俺が冷や汗を拭いながら膝に手をつくと、セレスティアとエレナがキラキラと目を輝かせて駆け寄ってきた。

「アッシュ様! 我らにこのような輝かしい活躍の場をお与えいただき、感謝の念に堪えません!」

「我らの未熟な太刀筋を、神の緻密な補助で導いてくださるとは。アッシュ卿の御力、まさに神域の極み……!」

「ああ……うん、皆よくやってくれたよ……」


 胃痛をごまかしながら笑みを作る俺。

 そして遂に、開かれた旧祭壇の奥に、青く輝く『鍵』──一つ目の管理ノード端末が、その姿を現したのだった。


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