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第一鍵回収、三つ巴の火種

 ゴーレムの残骸を踏み越え、俺たちはかつて「無限湧きスライムバグ」の発生源だった大祭壇の奥へと進んだ。

 そこには、古い石の台座に嵌め込まれるようにして、白銀に輝く『USBメモリ』のような形状をした旧文明のデバイス──『管理鍵キーデバイス』が淡く発光しながら浮遊していた。

「あれが、神が求めておられた『鍵』……!」

 ゼノン査察官が感極まった声で跪く。

 俺はため息をつきながら台座に歩み寄り、その物理デバイスを手に取った。

 ピィン、と冷たい感触が指先を伝わり、俺の視界のUIに新たな緑色のログがポップアップした。


【System:第一の管理鍵(行政ノード・マスターキー)の所有権を確認】

【System:監査猶予期間カウントダウンを更新します】

【残り猶予期間:14日 → 21日へと延長されました】


「おお……少しだけ寿命(システム権限)が延びたか」

 俺はホッと胸を撫で下ろした。

 だが、安堵するのは早い。まだ残り3つの鍵を回収しなければ、監査AI(AUDIT)による俺の「アカウント完全凍結バッドエンド」は回避できないままだ。


「アッシュ様、素晴らしい御業でございました!」

 エレナが鍵を見つめながら目を輝かせている。

「この一つ目の鍵を手に入れられたことで、王都地下の魔素の乱れは完全に平定されたも同然。神がこうして少しずつ、この世界に散らばった『真の力』を取り戻してゆかれるのですね……!」


 彼女の言葉に、周囲の騎士団員たちも「おおお……!」と感涙に咽んでいる。

 彼らの中では完全に「力を失った神が、四つの聖なる試練を経て完全体へと復活する壮大なRPG」が始まっているらしい。現実の俺はただ、リストラ寸前の平社員が「クビになりたくなければ四つの現場を回ってこい」という上司システムの命令に従い、必死で出張スタンプラリーをしているだけなのに。


「よし、一つ目は回収した……。次は『北方の気候制御塔』か『海上物流ノード』だな。ゼノン、準備のほうは」

「はっ! 神務庁の全力をもって、直ちに北方の雪山へ向かうための『神聖飛竜船(王室用クルーザー)』を手配いたします!」

「普通に歩いて行かせてくれよ……」


 俺の抵抗虚しく、次なる現場への過剰な大名行列の準備が進められていく。


 ***


 だが、俺たちが「一つ目の鍵」の回収で歓喜に沸いていたその裏側で。

 王都の権力の中枢、魔法省の薄暗い秘密会議室では、不穏な影が暗躍を始めていた。


「……見たか。あの偽神が、地下で薄汚い岩のゴーレム一匹に手こずっていた姿を」

 円卓を囲むのは、黒いローブを目深に被った魔法至上主義の過激派貴族たち、そしてかつて決壊した異端教団の残党の幹部たちであった。

「ああ。以前のように、視線を巡らせるだけで全てを消し去るあの無軌道な力は、明らかに劣化している。奴は何かを探している……『四つの鍵』とやらをな」


 彼らのテーブルの上には、俺たちが向かうであろう「残りのノード(鍵の場所)」の地図が広げられていた。

「奴が鍵を一つ集めるごとに、王都の魔力インフラの一部が再起動した。つまり、あの鍵自体が世界(神の玉座)を制御するための『極大アーティファクト』である証拠だ」

「ならば話は早い。我々が先回りして残りの鍵を奪取し、あるいは破壊してしまえばいい。そうすれば偽神は完全に力を失い、我々真の魔法使いたちが……人こそが、再び世界を統べる時代が来るのだからな!」

「ククク……愚かなアッシュよ。北方と海上のノードには、すでに我らの刺客と『魔物誘導部隊』を先行させた。貴様に鍵は渡さん」


 反神派の面々が、邪悪な笑みを浮かべて乾杯の杯を上げる。

 俺がただの「システム権限の寿命延長(ログインボーナス回収)」のために必死になっている裏で、彼らはそれを『神座を巡る権力闘争の鍵』だと盛大に勘違いし、勝手に壮大な先回りトラップを仕掛けていたのである。


 そんなこととは露知らず、俺は「明日の朝早いから早く寝たいな……」と、学園の自分のベッドで呑気に胃薬を飲んでいるのだった。

 第二章──四管理鍵争奪戦の中盤戦は、想定外の三つ巴のドタバタへと突入しようとしていた。


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