表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/83

第41話 国教化、星の支配者へ

 王都崩壊の危機(世界フォーマット事件)から数週間後。


「アッシュ神!! アッシュ神!!」

「我らが創造主!! 世界の守護者にして、新たな星の王!!」


 王都の大通りは、空前絶後のパレード――という名の巨大宗教祭に包まれていた。

 空を舞う色鮮やかな魔法の花吹雪。巨大な神輿まで用意されたが、俺は固辞してオープンカーのような馬車に座っている。

 そして、沿道を埋め尽くす王都の民たちの、狂気にも似た熱狂。


「アッシュ様ぁぁっ! こちらへ御手振りを!!」

「ははっ、アッシュ卿の威光、どこまでも空高く響き渡っておりますぞ!」


 馬車の俺の両脇には、完璧な正装に身を包んだエレナと、きらびやかなドレス鎧を着たセレスティア王女が、俺の「妃(候補)」として満面の笑みで並んで座っている。

 俺の頭の上では、エラーバーストを吸収した結果【聖獣形態】へとちょっとだけ進化し、小ぶりな王冠のような形になったスライムが「きゅいーん♪」と誇らしげに揺れていた。


「……おい」

 俺は笑顔を引きつらせたまま、馬車の向かいの席に座る学園長(と魔法省のアルベルト長官)を睨みつけた。

「これは一体どういうことだ。俺は『魔法省の公務員』として静かに有給を消化したかっただけなのに」


「はははっ、何を仰る世界神どの!」

 アルベルト長官がもみ手で笑う。

「地下での神との死闘、そして星の世界そのものの再起動! その事実を民草が知らぬはずもありません。国王陛下も『もはや彼を人臣に留め置くことは不可能だ』と、国を挙げての【アッシュ教の国教化】および【アッシュ神聖国の建国】を宣言されたのですから!」


「……は!?」

 国が……国教になった!? 俺が主神として!?


「つまりアッシュ卿。貴方はこれより、この国の形骸的な公務員などではなく、実質的な【星の支配主】として、国家からすべての予算と信仰を捧げられる究極の存在になられたということです!」

 学園長がニヤリと笑った。


「ふざけるなッ! 俺の定時退社は!? 年末調整は!? 書類仕事は!?」

「神にそのような俗務は不要です。ただ玉座に座り、民に微笑んでくださればよいのです」


【System:新たなユーザー権限クラス『星の支配者(God_Emperor)』が付与されました】

【System:環境管理AI・生体管理AI・気候管理AIからの『日報(デバッグ依頼)』が直接あなたの受信ボックスにルーティングされます】


「……嘘だろ」

 俺は視界に次々とポップアップする、数百、数千件におよぶ『システムの些細なエラー報告バグ』の山を見て、完全に絶望した。

 ただ一市民としての「事務仕事」からは解放されたかもしれないが。

 その代わり俺は、AIたちから【星全体の保守管理】という、絶対に定時の来ない24時間365日対応のブラックタスクを一生押し付けられることになってしまったのだ。


「アッシュ様、いかがなさいました? お顔が青いですわよ」

 エレナが心配そうに俺の顔を覗き込む。

「い、いや……これ、俺が一生『ボタン(修復)』を押し続けなきゃいけないってことか……?」


「当然です!」

 王女が力強く頷く。

「卿がこの星の主として奇跡を振るい続ける限り! 私とエレナは卿の両翼として、どこまでも永遠にそのお供をいたします!」


「誰が側室ですか、王女殿下。アッシュ様の第一の盾たる私が、当然ながら本妻に決まっておりますでしょう?」

 またしても始まるナンバーツー争い。

 俺の前世の知識でも、この修羅場とバグの山を綺麗に削除する方法は、残念ながら見当たらなかった。


「……神(管理者)なんて、なるもんじゃないな」

 俺はパレードの歓声の中、空しい笑い声を上げながら、そっと視界のUIログに表示された【バグ報告:南の島で天候エラー】に対する『デリート(YES)』を脳内で押し続けるのだった。


(第四章:星の支配者編 了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ