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第22話 王女VSエレナ、教皇戦争

 王女との手合わせ一件で、俺の評判は完全に壊れた。

 王国最強の『神速の剣』と学園最強の『極大魔法』を、指一本で同時停止させた男。

 それが、今の俺に貼られた肩書きだ。

「アッシュ様ぁぁっ!!」

「我らが神の御子! どうか、どうかこの薄汚れた俗物に触れる名誉を!」


 学園の廊下を歩くだけで、生徒の半数以上が道を開けて平伏する。

 俺の周りには、エレナ(狂信者筆頭)、レディス(突撃隊長)、そして新たにセレスティア王女が加わっていた。


「アッシュ卿。本日のご予定はいかがなされているか?」

 王女が、騎士団の白銀の鎧をカシャカシャと鳴らしながら俺の右隣を歩いている。

「特にない。図書室で静かに本でも読もうかと」

 俺が素っ気なく答えると、王女は目を輝かせた。

「おお……あの圧倒的な御力を持ちながら、なおも知識の探求を怠らないとは! なんという勤勉さ! 我が騎士団の連中にも、卿の爪の垢を煎じて飲ませたいものだ!」

「いや、ただのラノベ(娯楽小説)なんですが」

「ご謙遜を! その本の中に、世界の真理(魔法の深淵)が隠されているのでしょう!」


 ダメだ、王女まで完全に全肯定バグに感染している。

 俺の左隣を歩くエレナが、面白くなさそうに王女を睨みつけた。

「……王女殿下。アッシュ様の御側に侍る『盾』の役目は、このエレナが任されております。殿下は王宮の警護に戻られてはいかがですか?」

「ふん。魔法に頼り切った軟弱な盾など不要だ。アッシュ卿の背中は、この王国筆頭騎士たる私が護る!」

「軟弱とは聞き捨てなりませんね。先日、私の氷の盾を破れなかったのはどこのどなたでしたか?」

「くっ……あれはアッシュ卿が慈悲をもって私の剣撃を止めてくださったからだ!」


 俺の左右で、バチバチと火花が散っている。

 美少女二人が俺を巡って争っている構図は、一見するとハーレム主人公のようで夢があるかもしれない。

 だが、現実は全く違う。

 俺には彼女たちの言葉がこう聞こえている。

『私がアッシュ様(神)の筆頭信徒です!』『いいえ、私です!』

 ……狂信者同士の、教団ナンバーツーの座を巡る権力闘争である。


【System:ユーザー(アッシュ)に対する生体認証リクエスト(親愛行動)が重複しています。競合による処理遅延が発生中】

【System:強制的にタスクキル(両方の首を物理的に落とす)を実行しますか? [YES/NO]】


「お前は物騒な処理を提案するな!!」


 俺が頭の中でシステムにツッコんでいると、前方の廊下から、見知った顔が歩いてきた。

 学園長のマクシミリアン卿だ。


「やあ、アルマンド君。精が出るな」

「学園長……」

「君の噂は、王室や魔法省の天井を突き破る勢いで広がっているよ。今や君は、我が学園の誇りを超え、王国の至宝とさえ呼ばれ始めている」


 学園長は重々しく頷き、周囲の狂信者たち(エレナや王女を含む)をチラリと見た。

「だが……君本人は、その『平穏ではない生活』に、少なからず疲弊しているように見えるが?」

「ええ……まあ。静かに公務員事務官になりたいだけなんですけどね」


「そうだろう、そうだろう。そこでだ、アルマンド君」

 学園長はニヤリと笑い、俺に一枚の羊皮紙を差し出した。

「君に、特別な『長期休暇(という名目の出張デバッグ)』を与えよう」


「長期休暇!?」

 俺は飛びついた。

「はい! 行きます! どこまでも!」

「うむ。王都から少し離れた『大森林の遺跡群』だ。どうやらそこでも、防衛システムの異常報告バグが上がっていてな。君のその力で、静かに浄化してきてもらいたい」


 学園長は、俺に有給休暇という名の『王都からの逃亡ルート』を用意してくれたのだ。

「助かります、学園長……っ!」


 この狂信者だらけの王都から離れられる。

 俺はついに平穏な日々(出張先での静かなバグ修正作業)を手に入れられるのだ——。


「アッシュ様! 出張となれば、このエレナがお供せねばなりません!」

「待て! 大森林には危険な魔獣が潜んでいる。騎士団総長たる私の護衛が不可欠だ!」

「「私もついていきます!!」」


 ……俺のささやかな平穏への逃避行は、またしても狂信者たちによって跡形もなく粉砕されるのだった。


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