96.幸福
ルルはレウスとお互いの気持ちを確かめ合ってから、幸せな日々を過ごしていた。
ルルがレウスに料理を振舞うとレウスはとても喜んでくれる。
レウスはルルを喜ばせようと海まで連れて行ってくれて、ルルが笑顔になる。
ルルがレウスに文字を教えるとレウスは楽しそうに学ぶ。
レウスが毎日「好きだ」と言って抱きしめてくれるとルルは心が満たされた。
ルルは、レウスと一緒にいられる幸せと一人になったときに現れる、自分だけが幸せでよいのか、という罪悪感が心で行き来していた。
ただ、ルルはこれ以上自分のことに巻き込まないように、レウスの前では暗い顔を見せることはしなかった。
ルルの不安はもう一つある。
アリィは時々帰ってきてくれるのだが、何をしていたのかは話してはくれず、ただ「大丈夫」と言って笑うだけだった。
そして、いつも疲れているようで、ぐったりとした様子ですぐにベッドに深い眠りについてしまう。また目が覚めると、ルルを置いて再びどこかに行ってしまうのを繰り返していた。
今日もルルはレウスの巣穴を訪れる。
レウスはアリィの家づくりを見てから自分もハマってしまったようで、ためしに自分の巣穴を改造し、それに興味を抱いた他の集落の人たちと共に、集落のみんな巣穴を快適に暮らせように大改造した。
さらに移動の際にルルの魔力の消費を抑えるため、集落の巣穴を行き来できるよう巣穴と巣穴をつなぐ道を岸壁を削り、木材で補強したり橋を作ったりして道を作った。
遠回りにはなるものの、ルルだけでなく集落の魔力の弱い老人や子供たちにとっては移動が楽になった。
ルルは通り道を通ってレウスの家までたどり着き、扉を叩くとすぐにレウスが扉を開けた。
「レウスさん」
「ルル来たか! さぁ、入ってくれ、またいろいろ作ってみたぞ」
レウスは笑顔でルルを迎え入れ、当り前になった挨拶として口づけをする。
部屋の中は工房のようになっていて、木材や石、鉱石やきらきらとしたものがあたりに散らばっている。
「は、入ってくれと言ったが……うむむ、ちょっとものでいっぱいになってしまった。これではルルが踏んで怪我してしまうな……よし!」
「レウスさん? わっ!」
レウスはルルをひょいと横抱きにした。
レウスの体温がぐっと近くに感じられて、ルルの体温が反応するように高くなる。
「あ、そういえばルルはきれいな白くてねじれた角、見ていないか?」
「角?ですか? いいえ……なにかあったのですか?」
「以前、ユニコーンの角をデイルにあげたのだが、どうやら失くしたらしくてな……デイルの巣穴を改造した時にいろいろとものを動かしたからその時だとは思うのだが……ううむ、もし見かけたら教えてほしい」
「わかりました」
レウスに抱きかかえられながら、工房を進んでいく。レウスが作った子供用のおもちゃやオジジに頼まれたという専用の杖、椅子などの家具まで作っているらしい。
作ったものをルルに見せては説明していき、その時の彼の瞳がきらきらとして、そんな彼の瞳を見ているとルルの心はこの上なく幸せを感じていた。
「……それでこれが試作2号! なかなかこの回るところが難しくて」
「ふふっ、子供用のおもちゃですね。かわいい。レウスさんは本当にすごい人です、しかもどんどんすごくなっていきますね」
「ふ、ふへへ、なんだかこっぱずかしいぞ……」
レウスが恥ずかしがって頬を赤くする。
そんなレウスが愛おしく感じて、ルルはレウスの頬に口づけをする。
「ふ、不意打ちだ……」
「ふふ、油断しましたね」
「ぐぬぬ、ルルが可愛いのがいけないのだぞ……」
レウスの瞳に熱を帯び暗くなるとルルはあっ!と思ったが、すでに身体の自由はレウスに握られているのでそのまま寝室に連れていかれてしまった。
ふかふかに変わったベッドに、レウスとルルが身体をうずめる。
肌と肌が直に触れ合うとより近くに相手を感じられる。
お互いの高い体温が交じり合うと一つの生き物になったかのような錯覚に陥る。
高揚感と幸福に二人は身をゆだねた。




