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怪物に愛されて、少女は幸せな日々をおくる【本編完結】  作者: Nadi
妖精の章

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93.うまくいくといいね

 結局、アリィに罵倒されていてもレウスは動かず、ずっと家づくりを見学していた。

アリィは質問し続けてくるレウスにうんざりしていたが、レウスの質問が止まらないのでさっさと答えた方が楽だと途中からいやいや答え始めていた。


 その間にアリィが作成してくれた岸壁をくりぬいて作られた窯と石の器を使い、ルルが森から採って来た果物や香辛料、川で採った魚をいろいろと考えながら煮詰めて特性スープを作った。


 美味しそうな匂いが漂うとレウスが匂いに引き寄せられた。


 「ルル、まさか料理をしているのか? というか、料理ができるのか!?」

 「はい、お口にあうと良いのですが……」


 ルルが固い木の実をお椀代わりにしたものに、スープを流しレウスに渡す。

レウスは瞳を輝かせて、猫舌なのか随分とふーふーとした後にスープを一気に飲むと、彼の赤い瞳がより輝きを増した。


 「う、うまい!! まさか、とっておきの干物や肉よりうまいものがあるだなんて……!?」

 「うふふ、よかった」

 「すごい、こんなうまいものを作れるだなんてルルは天才なのか!?」

 「え、さすがにそこまでは……」

 「うるさいな、もっと静かに食べられないわけ? ルル、あたしにもちょうだい」

 「えぇ、もちろん。アリィ本当にお疲れ様、こんなに素敵な家を作るだなんて、本当にすごいわ」


 アリィにも具材たっぷりのスープを注ぎ、アリィに手渡す。

アリィが食べている間にレウスは小さなお椀では足りなかったのか、おかわりを5回もしていて、ルルはびっくりしていたがたくさん食べてくれるレウスを嬉しそうに見つめていた。

 夜には家づくりが終わり、レウスはついに家から追い出された。

やっと静かな時間を過ごせると、アリィは落ち着いて一息つく。


 「離れ離れになったときはどうしようかと思ったけど、ルルが見つかって本当に良かったよ」

 「うん……アリィ、本当に巻き込んでしまってごめんなさい……本当にたくさん傷ついて、痛かったよね、怖かったよね……それにわたし……」


 謝罪の言葉を続けようとしたルルの手をアリィが握る。

アリィは優しく微笑んでいて、ルルに対しての怒りなど微塵もない。


 「もういいからさ、それよりこれからのこと考えよう。きっとあたしたちこれから長い間妖精の世界には戻れないと思う。というか、戻らない方がいい……あいつがいる限り……」

 「……ペロージアお姉さま、ルコウお兄さま、リリィお姉さま……みんな、大丈夫かな……」

 「たぶん、あのブスはペロージアのこと気に入っているみたいだったから、殺されはしないと思う。それにみんなそんなに簡単に死にやしないよ」

 「…………うん」

 「それにまだルルがこうして無事なことはバレていないと思うから、しばらくはおとなしくしていれば大丈夫だと思う」


 ルルが不安そうにじっとアリィを見つめていて、その視線に気づいたアリィが首をかしげて微笑んだ。


 「なに?」

 「ねぇ、アリィ……わたしに隠していることある?」

 「……本当にどうしたの突然? そんなのないよ」

 「だって……アリィの魔力がなんだか……冷たい感じがして」

 「……そうかな?」

 「ねぇ、アリィ、もし、わたしのせいで何か無理をしているなら……」

 「ルル」


 ルルが言葉を続けようとしたが、アリィがルルを抱きしめてそれを遮った。

抱き締められる力が少し痛く感じるくらいだった。


 「ルルこそ、あたしに言ってないことあるでしょ?」

 「え?」

 「……好き、なんでしょ? あのレウスとか言う男のこと」

 「え!?」


 ルルが素っ頓狂な声を上げた。

ルルは確かにレウスに惹かれていたのだが、恋をしたことがないルルには初めての体験であり、それに今は自分の心の変化に気づけるほどの余裕はなかったのだが、よくルルのことを見ているアリィにとっては一目瞭然のことだった。


 「わ、わたしが……すき? レウスさんを!? え、え……そ、そうなの?」

 「質問で返すって……さては、自覚がないな。もう、見たらすぐにわかるって」

 「え、え……あ、えと……でも……そんな……ううんと……」

 「いいじゃん」

 「へ?」

 「ちょっと……いや、だいぶウザいけど、悪いやつではないみたいだし」

 「い、いいって?」

 「告白してみたら?」

 「ま、待って、わたしはそんな……それに、レウスさんにはデイルさんと番になるようにって言われているし……ご迷惑をとてもかけたし……その」

 「なにそれ? こんなに可愛いルルが好きって言って断りやがったら、あたしがぶっ殺してあげる」

 「そ、それはだめ……それに、お姉さまたちだって……辛い目に合われているかもしれないのだから、そんなこと考えている場合でも」


 アリィにからかわれて、ルルが人とは違う金色の血のために頬から耳まできらきらときらめく。アリィはくすくす笑って、慌てふためくルルの頬を両手で包む。

しかし、笑っていたアリィから微笑みが落ち、スッと表情がなくなると、ルルに不安が戻って来た


 「真面目な話さ、ルルの傍にはあの男くらい魔力の強いやつがいないと、きっとルルが辛くなる」

 「わたし、レウスさんを利用したくは……」

 「これは利用じゃなくて、共生。ルルは魔力の代わりに美味しいごはん作ってあげなよ。それと、ルルが我慢してむこうの状況が変わるわけないし。ルルが幸せになることにペロージアたちが嫌な気持ちになるわけないでしょ?」

 「……そう、なのかな……」


 アリィは無邪気に笑って、むにむにとルルの頬をつねった。


 「告白成功したら教えてね!」

 「も、もう、やめへよ」

 「ふふっ、変な声」


 (そう、うまくいくといいね…………ううん、うまくいってもらわないと……)

 レウスはその夜、久々の一人の夜を過ごしていた。

静かでもう眠りを妨げるものはないというのに、ずっと頭の中が騒がしくて、眠りにつけずに寝床でじっと天井を見ていた。


 「ぐぬぬ……もう駄目だ!」


 レウスは何かを決心して、自分の巣穴から飛び出した。


 レウスの目的地は従兄のデイルの巣穴で、デイルは魔法で明かりをつくり、本を読んでいるようだった。

レウスの「デイル来たぞ!」という声で、本を閉じてゆったりとこちらに来る。


 「よっ、ルルちゃん元気になってよかったな。彼女、わざわざ挨拶と謝罪に来たよ。まさか本当にあれほど回復させるなんて、本当に驚いた」

 「挨拶!? ル、ルルはなんて言っていた?」

 「ははっ、安心しな、本当に挨拶だけだよ」


 レウスは見るからにほっとして、肩の力が抜けていた。

今日、レウスが来た理由をデイルはとっくにわかっていて、緊張しているレウスの様子見て苦笑する。

だが、こちらから言うのも違うので、じっとレウスが話し出すのを待った。


 「あ、あの、ルルのことなのだが……」

 「うん、なにさ?」

 「そのだな……」

 「うんうん」

 「すまんっ、デイル従兄にいさんの番にすると言っていたが、あれは嘘になった!! ルルには、僕の番になってほしい……頼むのは、これからなのだが……」

 「あー、はいはい、頑張れよー」

 「お、怒らないのか?」

 「なんでオレが怒るわけ? だいたい、オレの番にする、って言ってたのお前だけだぞ。オレもましてやルルちゃんも承諾してないだろうが」

 「な!? デイルはルルに興味ないのか!? あんなに可愛いのに!? しかも、料理もうまかったぞ、笑顔になるとあの瞳がきらきらするのだぞ! なにより、あれほど死んだ魚のような目をしていたというのに、元気になったその頑張り! 素晴らしいものだぞ!」

 「あー! あー! もう、惚気はいいから、それ本人に行って来いよ。オレはお前がくれたユニコーンの角の研究で忙しいの! 魔道具に加工しようかなそれとも、粉末状にして他の魔道具の……」


 デイルはレウスのことはもう放っておくことにしたようで、さっさと帰れとレウスに手でしっしっとするとぶつぶつと呟きながら研究に戻ってしまった。

レウスは恥ずかしさからなのか、緊張から解放されたのか、ぽーっとしてデイルの巣穴から自分の巣穴に戻った。

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