86.案内するぞ
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「ルル! 見ろ、これがオジジだ。口うるさいぞ」
「そう、ですか……」
「なんじゃと!」
「ばれた、次はデイルのところに行くぞ!」
「これ待たんか! レウス!」
レウスは狩から帰ると話すようになったルルに集落を案内し始めた。
集落の集会場とそこにいるオジジを紹介したあと、デイルの巣穴にむかった。
レウスはルルが話すようになってかなり嬉しいようで、ウキウキしながらルルを抱きかかえて集落を飛び回る。
「デイル! デイル従兄さん! ルルが話すようになったぞ!」
「声が大きいな……ルルって、もしかしてその妖精のコ?」
「うむ、そうだ! 他にも魔法を使って僕を魔物からも守った! 元気になってきたということだ!」
「そんなに行動的に? 会話できるのか?」
「話しかけると答えるぞ」
デイルは話しかければ答える、というのにコミュニケーションのいびつさを感じるものの、一歩進んだのかと素直に驚いた。
まだ力が感じられず、瞳が暗いルルをレウスはひょいと両脇を掴んで持ち上げる。
足がまだぷらんと垂れていて、不安定さを感じさせた。
「ルル見ろ、デイルだ。僕の従兄で、お前の番になる人だぞ」
「番……?」
「あ、はは……えっとルルちゃん? レウスはこういっているけど、あんまり気にしないでね」
「何故だ!? デイルは賢いし、字も読める! 顔もいいし、干物をくれるし、言うことなしだぞ! ルルも良いと思うだろう!?」
「…………」
「本当に気にしないでね……だいたい、番の決定権はメスにあるし……というか、まだ話し始めたばかりだからそれどころじゃないだろう。狩から戻って来たばかりなら、ちゃんと休むことと、休ませること」
「じゃあ、あとひとつ教えたら休む!」
「はいはい……」
デイルが嬉しそうに、子供の様にはしゃぐレウスに困ったように微笑んで、さっさと行きなと手でしっしとした。
レウスはルルをしっかりと抱きかかえて、再び谷の方へと飛び立った。
そして、どこかの巣穴にまた行くかと思ったが、突然高く高く飛びあがった。
随分な高さまで上がったところで、ルルが寒さに震えているとやっと気づいたレウスが「寒いのか!?」と言って、魔法でルルの身体を守ったことで寒さは和らいだ。
寒さが和らいだことで、ルルはゆっくりと瞳を開いた。
空高い場所から見る世界は本当に遠くまで見える。
谷が続き、森が生い茂り、さらにその先には海が見える。
日が落ちる直前で、橙色、紫色、青色、白色と様々な色が混じり、何色と断言できない複雑な空の色になっている。
そんな空と地上の真ん中にいると、不思議とこの世界の一部になったような、異物でもあるような不思議な感覚がした。
「見ろ、ここからの景色が僕は大好きなのだ」
「……」
「さらに、この時間帯はもっと好きだ」
「…………きれい」
レウスは単純に問いかけに答えるわけではない、純粋なルルの気持ちの表れに気づいて、ハッとしてルルの顔を見た。
ルルの暗い瞳に日の光が混ざって、ほんの一瞬だけ元のルルのきれいな瞳が戻っていた。
少しだけ、ぼーっとしてルルを眺めてしまっていたが、しばらくするとまたルルの瞳は絶望で暗く戻ってしまった。
「か、帰るか……」
レウスは何故だか心臓がどぎまぎしてしまって、今まであれほどうるさかったのに、巣穴に帰るまで一言も話さなかった。




