69.誕生
ここから妖精の章に入ります
(過去のお話なので、ヴィオラとシオンはお休みです……(-_-)zzz)
以下妖精の章注意点です
※ガールズラブ要素がぐんと上がります
※倫理観の欠如した人たちが多いです
※暴力、性暴力表現、流血があります
ヴィオラは深い眠りに落ちている間、はるか遠い昔の出来事のとても長い夢を見た。
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オーロラのように色とりどりに光る空、豊かな草花がしげる妖精の世界。
ここには争いもなく、食べる必要のない妖精には飢えなど存在しない。
ただ静かで穏やかな世界。
穏やかな日々を過ごすペロージアは退屈を感じつつも特に何かをするわけでもなく、時折魔法できょうだいたちにいたずら、という名の迷惑行為を繰り返していたが、ペロージアはきょうだいたちの中で一番魔力が強く、魔力至上主義の考え方がしみついている妖精たちはペロージアを誰も止められなかった。
そして、それはペロージアに退屈と払拭できない孤独感を感じさせていた。
(今日はどうしようかな……またルコウと遊ぼうか……ルコウは反応が面白いし、今度はそうだな、丸一日宙づりになる魔法とか、鳥の声しか出せなくなる魔法とか)
無邪気でありながら大変迷惑な考えを巡らせていると、地面が魔力で波打つ感覚がした。
そして、その波はずっと先へと流れていく。
「あ……今日はきょうだいが生まれるのか……どうせ皆迎えに行かないだろう。薄情者め……優しいボクが迎えに行こう。それでそうだな、どんな魔法で迎えてあげよう。くふっ、くふふ……姿を猪に変えようかな?」
ペロージアは新しいおもちゃを見つけたかのように目を輝かせているが、他人から見れば明らかに歪んでいるようにしか見えない。
妖精界の片隅に大きな蕾を掲げる巨大な魔法の花の群生がある。
その根は妖精界中にはられていて、ゆっくりと魔力をたくわえて時折蕾から大妖精が産まれてくる。
「母さんは……今回もいない、まぁ、ボクが産まれた時からいないし……他のきょうだいもいない、薄情者」
ペロージアがぶつぶつと呟いているうちに、魔法の花の蕾が地面まで垂れると、少女を蕾からぺっとまるでごみを捨てるかのように吐き出した。
少女は魔法の花の粘液でべっとりと濡れていて、ぴくりとも動かない。
そして、また魔法の花の蕾は天を向いた。
(おかしい……いつもなら魔法の花が魔力を渡して花びらが枯れるはずだ。それがまるで不純物を吐き出すように……まさか、失敗?)
今まで数回だけみたことがある。魔法の花が大妖精を産み落とそうとするときに上手くいかないときがある。その時に人の形はほとんどしていないものが多く、すぐに動かなくなってしまう。
そういうとき、ペロージアがいつも土に埋めてやっていた。ただそれも彼女にとっては作業のような感覚だった。
(今回は人の形をしている……でも、すぐ命が消えてしまうかな? とても小さいし、大妖精にしては色も薄いし)
少女は、意識はあるようで、震える手をのばし、生まれたての小鹿のように力を振り絞って立ち上がろうとし始めた。しかし、魔法の花から出た時に身体に着いた粘液で滑り、どたっと転げてしまった。
ペロージアはぼーっと遠くからその姿を眺めているだけで、手助けしようとはしない。
しばらく、少女は立ち上がろうとしてはこけるを繰り返す。何度も繰り返しているうちに、少女は体力をなくしたのだろう動けなくなり、かすれた呼吸音だけが聞こえる。
終わりそうかな?と思いやっとペロージアが少女に近づく。
少女は浅く呼吸をし、今にもこと切れてしまいそうな哀れな存在だった。
「もう楽になった方がいい。怖かったら、ボクが手伝ってあげる。大丈夫、痛みはないよ」
ペロージアが少女の傍にしゃがむ。
少女は倒れて傷つき、身体には土や草が張り付いていて汚れてしまっている。ペロージアは潔癖なところがあって「汚いな……」と呟いた。ただ、少女の小さな紫色の花を思い出させる瞳が少し綺麗だと思ったが、それも一瞬だけだった。
「手伝う?」
少女は首をゆっくと振った。
そしてまた力を振り絞って、立ち上がろうとする。
「もう、やめたらいいのに……」
ペロージアが呆れたようにつぶやく。
ペロージアの諦めとは反対に、もてるすべての力をもってついに少女は立ち上がった。
足はおぼつかなく、今にも折れてしまいそうだ。
「驚いた。そんな力まだあったんだ。欠陥品なのに」
ペロージアは人に対して配慮というものはない。ただ、悪気なく純粋に思ったことを口に出してしまう。こんなことを言われれば激高してもおかしくはないのだが、少女はどうしてか優しく微笑んでいた。
「み、まもって、くださ……て、ありが、とう、おね、えさま」
少女が初めて発した言葉は純粋な感謝の気持ちだった。
魔法の花から産まれた大妖精はこの世のことを花の根を通して知っている。
少女はペロージア以外誰も来てくれていなかったことも、自分が欠陥品であることも理解していた。だからこそ、こうやって自分が生きた瞬間を見守ってくれたペロージアには感謝を告げたかった。
体力を使いきった少女は、がくんと膝を折って地面に倒れてしまいそうなったがそれをペロージアが受け止めた。
ペロージア自身、どうしてこんな欠陥品の汚い生き物に自ら触れてしまったのかわからなかった。生きていて初めて感じる気持ちだ。
そして、もっと驚くべきことは自分の瞳からしずくが流れていることだった。
少女が震える手でペロージアの頬に伝う涙を拭う。
「なか、ないで……おねえ、さま」
「ボク、泣いてる? どうして?」
「いいこ、いいこ……」
少女は優しくペロージアの頭を撫でる。こんなことたとえきょうだいでも許したことはない。
困惑の中、ペロージアはぎゅっとその少女を強く抱きしめた。
産まれたばかりの温かさが、ペロージアの身体に移ってめぐるような感覚がした。




