68.あたしはだれ
「あははっ、あははは! あーあ、面白かった。あの豚、本気でルルになり替われると思ってたのかなぁ? やっぱり3日ももたない。ルルに関するものを処分するように言ったのもね、ホントは嫌がらせなんだ。くすくす、あぁ、きっと今頃あいつらすごく慌てて……絶望して……苦しんで……ふふ、ばーか、苦しめ」
ヴィオラの母の皮を被った何者かは、ベッドで眠るヴィオラの隣で寝そべり、涙を流しながら無邪気に笑う。
その隣で、深く眠らされているヴィオラは起きる様子がない。
「ふふ、ふふふ……ルル、おかえり。びっくりしたよ。身体も名前も変えてあっちの世界で生き延びているだなんて…………はは、今の今まで気づかないなんて、わた……あたしもバカだよね……あ、はは」
無邪気に笑っているというのに、隠しきれない感情のいびつさが表情に表れている。
「でも、悔しいな……今回もあいつにルルの心を盗られるなんて……本当にムカつく……身体もべたべた触って………死ねばいいのに、あの王子………ルルのきれいな身体をむさぼる奴は大っ嫌い……………でも、いいの……もっといいものあるもんね…………わし、あたしたちだけに許されたもっと尊いこと」
何者かは起き上がって、ヴィオラを見つめる。
その瞳には深い深い執着と愛情がどろどろと渦巻いている。
「ルルの魂……ワタクシ、あたしに……今度こそちょうだい、ね、いいでしょ?」
何者かはにこりと微笑んで、手をヴィオラの胸に添える。
すると、添えられた手が不思議なことにヴィオラの胸の奥に入り込んでいく。
ヴィオラが苦しそうに全身から汗を流してうめき声をあげているが、何者かは止まることなくより深く手をヴィオラにうずめていく。
「あ、はは………ちょっと苦しいよね? もっと絶望してくれていたら取り出しやすかったのだけれど…………あの時みたいに……………でも、思ったより絶望してくれなかったから。けっこう手間かけたのになぁ、やりすぎもいけないから加減が難しいよ」
「うう、く、あぁ…………」
「大丈夫、もう少し………もっと俺、あたしを受け入れて……お願い……」
何者かは少し泣き出しそうな声をだして、より深く腕全部をヴィオラの中にいれてしまった。手を伸ばして、まさぐり、目当てのモノを探す。
「あっ! これ! これで……ぼく、あたしたちはずっと一緒だよ。今度こそひとつになろうね」
目当てのモノの存在を近くに感じとった何者かは瞳を輝かせた。
そして、もう少しと手を伸ばしてそれを握りしめようとしたとき。
「ぎゃあああああああああ!!!!!」
何者かは悲痛な叫びをあげて、ヴィオラから手を引き抜いた。
引き抜いた手は酷くただれていて、そのただれは顔の半分にまで及んだ。
「おああ、ああぁ……身体が!? 魂がいうこときかな……ううゔ……リリィ……大人しくしろ………………は、はぁ、はぁ」
何者かは苦しみ悶えて床をしばらく転げ回った。
顔のただれは収まったが、まだ手は溶けてしまったように形が不安定だ。
「この魔力………ペロージアのクソババア……まだ私…………あたし? あ、あれ? あたし? 僕? ワタシ? ああぁ………………うああああん!!」
何者かはペロージアへの憎悪で顔を歪ませたかと思えば、次は子供の様に泣き始めた。
ベッドによじ登ってヴィオラに抱き着いて大泣きし始める。
「うああああん、ルル、なぐさめて! あのクソババアまたあたしの邪魔するの! イジワルするの! あたし、こんなに頑張ったのに!!」
眠っているヴィオラは反応などないので、ヴィオラの手をとって自分の頭を撫でさせた。
「ルル……ルルぅ……………なぐさめて、あたしの名前を呼んで…………もう一度、大好きって、言って……………あたしはずっとずっと大好きだから……………おねがい」
ヴィオラの柔らかい手に心をゆだねて、何者かは目をつむった。
これで、王都の章はおしまいになりまーす
作者の癖にお付き合いいただきありがとうございます(/ω\)読んでくださったアナタはすごい!
次は妖精の章、過去編ですので主人公ヴィオラとシオンはお休み、別の人たちメインのお話になります。
ヨロシクです!\(^o^)/




