60.罪は背負って
真夜中にどこかの国のどこかの砂漠で白い人型の物体が一つ動いている。
白い人型の物体は手に握っている杖でさくさくと砂をさしている。
「うむ、ここかのぉ……」
砂漠を一人で散策しているのは、シオンの側仕えのルコウで、目当てのものを見つけたらしく砂漠の真ん中で立ち止まった。
ルコウが大きく手を振り、魔力を込めると、砂が暴風とともに巻き上がり、砂の竜巻ができた。
ルコウはその竜巻の中に迷うことなく飛び込む。竜巻の中心は底が見えないほどの深い穴ができていて、その中に落ちていく。
大きく巻き上げた砂の下は広い空洞になっていて、ひんやりとした空気とわずかな空からの明りだけが届く。
暗いので、魔法で光の玉をつくり明るくする。
すると、ルコウ一人だけかと思われたこの空洞内にいくつもの四つ足の魔物の影が浮かぶ。
「おぉ、おぉ、しっかりと罠があるわい……しかし、舐められたものじゃ、これだけとは……」
生き物たちは腹を空かせているようで、蝋の身体のであるルコウにさえよだれを垂らして近づいてきた。
「さて……久々にやるかのぅ」
ルコウの姿が溶け、再び人の形に戻ると、少年の姿となり、手には蝋でできた剣を握っている。
「そろそろ急いで帰らねば、殿下とヴィオラ様の結婚式に間に合わないからのぉ、悪く思うなよ、獣たちよ」
獣が四方から一斉にルコウにとびかかった。
ルコウは蝋の重たい身体であると思わせないほど身軽に跳び、獣の後ろをとり、蝋の剣を振る。蝋の剣は鉄以上に切れ味がよく、獣は真っ二つに身体が引き裂かれてしまった。
「さぁ、次はどいつじゃ?」
余裕に妖しく笑うルコウに獣たちは襲い掛かり続けたが、あっという間にルコウに肉片とされてしまった。
「ふぅ……片付いた。老体には堪えるのぅ……さて、これで五つ目か……ううむ、思ったより小さいものばかり、あやつ、力の依り代を多く分散させたのか?」
獣の相手が終わったルコウがさらに空洞の奥へと進むと、小さな光る石を見つけた。
そして、それを地面にたたきつけて踏みつぶすと、その石からおぞましい人の泣く声が響いた。
「小さくとも囚われた魂の数は多いのぉ……あれから、いったいどれだけの哀れな魂を捕らえ糧としてきたのか……これも、ワシらの罪か……」
ぽつりとつぶやくが、誰かが返事を返すことはない。
ただルコウの心の中で罪の意識が渦巻いて、居座るだけだ。
「せめて、殿下やヴィオラ様にワシらの負債を背負わせないようにしなければ……ペロージアがやつの力を多く削いでくれたのは幸いじゃった……」
ルコウはここに来たときと同じく竜巻を起こし、砂漠へと飛び出た。
ルコウは元のおじいちゃんの姿に戻り、暗闇が広がる空を眺めた。
「アリィ……お前の欲望はいつになれば終わるのか……」




