56.あなたと一緒なら
いちゃこらタイムだ!(/・ω・)/
今日一日いろいろなことがあり、ヴィオラの身体はずっしりと疲れで重たかったが、これから始まるシオンとの生活に心躍る気持ちもあった。
入浴を済ませてこの城で過ごす部屋へと向かう。
寝室にはすっかり当たり前のようにベッドでくつろぐシオンの姿があった。
移動に仕事に疲れたのだろう、毛布もかぶらず横になって目をつむっている。
(殿下、お疲れなのね……でも、これでは風邪をひいてしまうわ)
ヴィオラが近づいて毛布を掛けてあげようとしたとき、シオンがぱちりと目を覚まして「隙あり!」と言ってヴィオラを抱き締めてベッドに転がす。
ヴィオラは驚いて「ひゃあ!」と情けない声をだしたが、シオンの無邪気さにころころと鈴が転がる様に笑い出した。
「あはは、うふふ、びっくりしました。起きていたのですか?」
「うむ、そうだ。ああやって横になっていればヴィオラはきっと毛布をかぶせに来るからな、全て計算づくだぞ」
「うふふ、殿下の作戦勝ちです。すっかり騙されました」
ふふん、と満足げにしているシオンにヴィオラがそっと近づいて、軽くついばむような口づけをした。ヴィオラ本人としては悪ぶっている顔でにやりと笑って見せると、シオンがその可愛さにぴきりと固まって、赤面してしまった。
「ふふふ、隙ありです。油断しましたね、殿下」
「う、むむむ……(我慢、我慢、我慢、がまん、がまん!!)」
シオンは歯を食いしばって、ベッドにうつ伏せになって唸り、足をバタバタさせている。シオンの健気な努力の甲斐あってヴィオラもスキンシップに積極的になり始めているのだが、ヴィオラの可愛さに気持ちが酷く乱れてしまうことはシオンにとっては予想外だった。
「殿下?」
「き、気にするな、ヴィオラの愛らしさに悶えているだけなのだ」
「もだえ? そうですか……?」
ヴィオラはよくわかっていないようで、首をかしげていた。
シオンが悶えている間、手持無沙汰になり、シオンの背中に寄り掛かって、シオンの頭から生えている角を指の爪でかりかりとなぞり始めた。
ただでさえ理性と本能の間で戦っているというのに、背中から感じるヴィオラの体温と肉体の柔らかさにシオンは気がおかしくなってしまいそうだった。
「殿下には角が生えていて、草花族の方にはお花が……蟲族の方には触覚が……亜人族の方にはもふもふの耳……人魚の方は鱗が……」
「ヴィオラには唯一無二の愛らしさがある」
「そ、そういう話ではありません……いろんな方がこの国には住んでいるのだなぁって今日一日でより実感したので、いろんな種族の方、子供も若者もご老人も……本当にいろんな考えの人が住んでいて……殿下やお義父さま、お義母さまが今までずっと国民の方たちのためにたくさん努力なさって、今の生活やこれからの未来を守ってくださったのだなぁ……と」
「……これからのことに不安を感じさせてしまっているか?」
やっと悶えるのが終わり、落ち着いて話ができるようになったシオンが振り返ってヴィオラを見る。
自分の立場は重く、ヴィオラにとってはあまりに大きい負担を強いてしまっていることをシオンは理解している。
もし、ヴィオラの心が潰れてしまうようならば、別の道もあると告げようかと思っていたが、シオンのその考えは杞憂であったとすぐにわかった。
ヴィオラは穏やかに微笑んでいて、瞳は希望に満ちていた。
「とても大変なことだとは思うのですが、殿下と一緒ならどんなに大変なことでもできてしまう、そんな気持ちになるのです。国民の方たちのためにも、もちろんわたしたちのためにも頑張りたいのです」
「ははは、ヴィオラとなら僕もなんだってできそうだ。君を見つけられてよかった」
ヴィオラが穏やかな好きという気持ちでシオンを見つめると、シオンは愛おしさを込めた熱を帯びた視線で見つめ返す。ヴィオラはなんだかその熱視線に耐え切れず、おずおずと後退して枕に顔をうずめて隠して背を向ける。
「あぁ、もうそんなふうに見つめないでください。ドキドキしてしまいますから……」
「そんなふうとはなんだ? 言ってくれないとわからないぞ」
「その………わたしのこと……………ううん、言えません、言いませんから!」
「ふふん、そうか。なら、僕が答えを教えようか?」
「へ?」
ヴィオラが腑抜けた返事をして振り返ると、シオンが無邪気でありながらも魅惑的な笑みをみせ、ヴィオラの心臓を跳ねさせる。
ヴィオラは耐え切れなくなり、枕で顔を隠し防御を固めた。
「む……それで僕が止まるとでも? 可愛いので逆効果だ」
シオンの気配が離れて(あれ?)と不思議に思ったヴィオラだったが、すぐにシオンの目的がわかった。シオンはヴィオラの片足を持ち上げて、脹脛をゆっくりとなぞり足の甲に軽く口づける。内踝をざらりとする舌で舐めてからまた口づけをする。
ヴィオラは全身から汗がブワッと出て、頭がパンクしてしまった。
「は、わ、へ、シ、シオン……」
「ん? 口づけまでならいいのだろう? 今日はとても僕は我慢をした、少しくらい羽目を外してもいいはずだ。うむ、いいだろう」
シオンは自分にそう言い聞かせると、口づけは足首から始まり、ゆっくりと上り、口づけを落とすたびに「僕の可愛いヴィオラ……好きだ……好き……」と呟く。
(あぁ……シオンがわたしのことが好きだって伝わってくる……優しいけれど、シオンの触れた部分が熱い……)
ヴィオラが身をよじると、彼女の足の付け根にあるあざがシオンに見えたが、彼女はまだ見ることを望んではいない気がして、シオンは見ていないふりをした。
ヴィオラの枕を持つ手が緩んでいたので枕を奪い取って、ヴィオラの手の届かない場所に投げた。
「あ、枕……」
「ヴィオラのかわいい顔が見えないではないか……君のことが愛おしくてたまらない……本当なら誰にも触れさせたくないし、近づかせたくもない……僕はヴィオラを独り占めしたくてたまらないのに」
シオンの手がヴィオラの両手に重ねられて、シーツに縫い付けられるように拘束された。
シオンの手はヴィオラの手よりもずっと大きくて、無理やりではないのにその手はびくともしない。
(これ、にげられな……)
ヴィオラがそう思ったのもつかの間、シオンに唇を重ねられた。
軽い口づけは段々と深くなっていく。
(あ……シオンの舌……ざらざらして……ながくて)
何度も深い口づけを繰り返したがヴィオラの息継ぎのためにシオンが一度離れる。
ヴィオラが深く呼吸を繰り返し、頬は紅潮し、瞳は涙で濡れている。しかし、この涙は悲しみの涙ではないと匂いでわかってしまうシオンは毛が逆立った。
シオンが必死で歯を食いしばって理性と本能の間で戦っている最中に、抑える手が緩んでヴィオラはシオンの首に手を回す。
「シオン……すき……」
彼女の甘い声にシオンの頭の回路が処理しきれずはじけ飛んだ。
そして、そのままぱたりとヴィオラのに重なるようにして倒れてしまった。
「シオン? シオンどうしたの? 大丈夫!?」
「う、うむ……(心の準備ができていないのは僕の方なのかもしれない)」
自分のかわいい番のあまりの刺激的な姿に耐えきれるように修行が必要なのではとシオンは思った。




