41.番
シオンと父が二人きりになる。
父と母は基本的に離れることがなく、母がいるときは母が多く話すので、正直父と二人きりで話す機会は滅多になく、少しだけシオンは落ち着かなかった。
「まずは、呪いが解けて本当に良かった。それに、呪いのことを話せず、申し訳なかった」
「もうそれはいいです。結果的に、ではありますが……かけがえのない人を見つけられたので……」
「それをあとで母さんにも言ってやれ」
「か、考えておきます」
「ふふ、さっそくヴィオラさんの効果が出ているな」
父が柔らかく笑う。
シオンは自分でもヴィオラと出会ってから随分と心に変化があったと自覚はしていたが、指摘されると身体がむずむずした。
「それで、話とはなんですか? あまり彼女を一人にしたくないのですが」
「それだよ。私たちの本能についてだ。軽くは知っているだろうが、まだヴィオラさんが完全にお前の番になっていないようだし、きちんと話しておこうかと」
父は一人掛けのソファに深く座り、シオンも向かい合って座る。
「ヴィオラさんは人間のようだね」
「そうです。人間の世界から来た、人間ですよ。反対しますか?」
「まさか。第一、番と決めたのなら種族は関係ないし、竜族から番を奪うことは争いの原因になる。過去に1度起こったが被害がひどかったそうだ……問題は人間には、というか他の種族の多くには番という感覚が初めはない。時間を積み重ねていくことで、不思議なことにその感覚が番となった相手に移っていくものだ」
「…………そうなのですか」
「私たち竜族には番を決めるのに段階がある。まずは心でその人を番と認め、次に身体で認める。だが見たところ、ヴィオラさんにはお前の匂いが染みついていないし、逆もそうだ」
「……何が言いたいのです?」
「きちんと番にするのはできるだけ早い方がいいぞ。誰かに万が一匂いをつけられたら、いくら心で番と認めていても身体が拒絶してしまう」
「父上………まさか、真剣な顔をしているから何を話すかと思えば……そこを心配されているのですか!?」
「大事なことだ。逆にお前も匂いをつけられないように気をつけろ。不本意でも身体に匂いをつけられると、心にまで食い込んでくる。そして、その矛盾はいつしか心を壊してしまう……」
「もちろん、そうならないようにします。ずっと昔から気を付けてきましたし……それに、まだ僕の呪いが解けたことは外部にはばれていないでしょう? ぎりぎりまで貴族たちには伝えずにいようと思います。押しかけてくるのは目に見えていますから」
「あぁ、それなんだが手遅れだ………」
「ま、まさか………」
「もう、国中に知らせがまわっている」
「ぐううううああああああ!!!? どどど、どうして!?」
「すまん、嬉しくて、つい……」
「父上ええええ!!!」
いくら何でも勝手なことをしすぎている両親に、シオンは怒りでどうにかなってしまいそうだった。
この両親でシオンがすれてしまっても仕方がない(´・ω・`)




