120.心の奥底
妖精界に降り立ったリリィの姿をしたアリィは、ひとりひとりをゆっくりと見渡し、嘲る。
「ルルが私のことを呼んでくれていると思ったら……ふふ、みなさんお揃いで……あらぁ、ルコウ兄さん! 久しぶり……私のこと結局見つけてくれなかったのね……ひどい」
「アリィ……リリィの姿をして、声をして、ふざけたことをするのは大概にしろ」
「うふふっ、そんなに怒らないでよ。せっかく久々に会えたのに……あらあら、兄さんが大切にしている王子サマ……兄さんの子供……? ふふ、ふふふ全員殺したら、兄さんはどんな顔をするのかしら?」
「そんなことに揺さぶられるほど子供じゃねぇぞ」
アリィは狂ったように笑い、鎖で動けないでいるシオンに向かって魔法の炎の球を放つ。
すぐにルコウが攻撃を蝋の剣で受け止め、剣は炎を切り裂いて塵尻になった。
「フランメ、ペイアー、殿下たちをもっと下がらせてくれ」
「はい父上」
「ひーっおっかねぇ!」
フランメがシオンを引きずって、ペイアーがロージーを横抱きにしてその場から離れる。
アリィの攻撃は激しい雨のように止むことがないが、それを全てルコウが薙ぎ払っていく。
シオンは引きずられながら、その攻防に息をのむ。
「あれが……ルコウの本気か……僕たちに剣術を教えるなど児戯のようだったろうな」
「父上……きっと、肉体があれば……もっと……」
「フランメ?」
「なんでもありません。もう少し離れましょう、巻き込まれてはたいへんですから」
フランメのつぶやきにシオンは少し違和感を抱きつつも、今は身動きをとることができず、引きずられるままだった。
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アリィとルコウ、トトララの戦いをルルディはじっと眺めていた。
『うっ……………』
突然、ルルディが苦しみ地面に膝をつき、気づいたペロージアが駆け寄る。
「ルル、しっかりしろ」
『……………だい、じょうぶです………ペロージアお姉さまはわたしにかまわず、魔道具の調整を……』
「……わかった」
ペロージアはぎりぎりまで魔道具の調整を行う。
ルルディは冷や汗を流しながらも立ち上がり、またアリィに視線を戻した。
(………ごめんなさい、ペロージアお姉さま、ルコウお兄さま…………わたしはあの子をまだ……)
(ごめんなさい、人を利用するのもこれで最後………ごめんね、ヴィオラもう少しだけ、眠っていて……すべてが終われば、きっとあなたの幸せが戻ってくる。わたしが、あなたの幸せを守るから)
ルルディの黒ずんだ瞳が悲しみと別の感情に揺れていることをまだ誰も気づいていない。
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ヴィオラはルルディが身体をのっとられてから、不思議な幸せな夢を見ていた。
ヴィオラは夢の中でルルディとして、大好きな家族であるペロージアやリリィ、ルコウ、愛するレウス、そしてアリィと過ごす幸せな日々を過ごしている。
夢の中の今日は、花畑でアリィと遊びに出かけた。ヴィオラが器用に花輪を作り、アリィに花輪をかぶせてあげるとアリィは恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。
「ルル、あたしにはこういうの似合わないよ」
「そんなことないよ、とってもかわいい!」
「も、もう……またそういうこと言う……」
「ふふ、いっぱい言いたいもの可愛いも、大好きも……だってあなたは……あなた、は……」
ヴィオラは違和感を感じて、言葉が詰まる。
目の前にいるアリィがとても心配そうにヴィオラの顔を覗き込んだ。
「ルル、大丈夫?」
「う、うん……」
「おーい」
「げ、お邪魔ムシ」
「なんだその顔は! アリィは十分にルルと遊んだであろう? 次は僕の番だ」
花畑の向こうから大好きな恋人のレウスが手を振って、笑顔でやって来る。
アリィはむすっとして、つんとした態度をレウスに向ける。
「さぁ、ルルおいで、僕も料理をリリィに手伝ってもらいながらやってみたのだ。味見をしてみてくれ、少しだけなら大丈夫であろう?」
「ルルが食べる前にあたしが味見する。いくらリリィがついているとはいえ、変な味だったらルルに食べさせてあげらんないもん!」
「お前も食べたいなら素直に言えばいいのだ」
「ち、ちがうし!」
レウスが優しく微笑んで手を差し出す。
ヴィオラも微笑み返して、その大きな手に重ねようとすると、レウスはにこっと笑って、そのままヴィオラを抱っこしてぐるぐると回す。
突然子供の様なことをされて、ヴィオラもころころと笑う。
(幸せ……レウスさんに触れられると、心が温かい)
(幸せ……アリィの笑顔をみると、とても心が満たされる)
(二人とも大好き……愛してる……)
『愛したかった……! 今だって愛してる!!』
ヴィオラは誰かが絞り出すように、押し殺すような悲痛な叫び声が聞こえた気がして、辺りを見回す。
しかし、アリィとレウス以外には誰もいない。
「あれ?」
「ん? どうしたルル?」
「……いえ、なんでも……ないです」
「よし、では行くか!」
レウスに抱っこされて、みんなでレウスとリリィの作った料理を食べに行った。




