115.大切と好き
部屋に入るとロージーは物憂げな表情で立っていて、ペイアーはいろいろと言いたいことがあったのに、その感情が流されていく。
「………ごめん」
「へ?」
ロージーがペイアーに静かに謝った。
まさかの第一声が謝罪の言葉とは思わず、ペイアーは間の抜けた声がでた。
「ペイアーがあたしのことを心配してくれているのはわかってる………ごめん」
「そ、それは……」
確かに、ペイアーはロージーの心配をしていた。
しかし、それだけの感情ではないことにペイアー自身わかっているので、ロージーに謝られると言いえぬ罪悪感が心にわいてくる。
「あたし、全然素直じゃなかったね……はぁ、なんであたしペイアーにばっかりきつく当たっちゃうんだろう……? 今回だけじゃなくて、いつも……」
「……それは、オレの女癖が悪いから……巻き込まれてんだから怒るのは、当り前、というか……」
「巻き込まれているんじゃない。あたしから、関りに行ってただけ……そうじゃないとペイアーは無茶するじゃない。昔、刺されたって聞いた時、あたしがどれだけ……心配したか……」
「そ、それは、ごめん……」
「けど、終わりにしようと思う」
「ちょ、ちょっと待って! 何が終わりって!? その先聞きたくないんだけど!」
「駄目、ちゃんと聞いて」
ペイアーは嫌な予感がして、自分の両耳をふさいだがロージーに両腕を掴まれると力負けして両手を引きはがされた。
しかし、腕の数に分があるペイアーはもう二本の腕で耳をふさごうとしたのだが、ロージーの手首から伸びるツタで四本腕はまとめて拘束された。
それでも暴れるので、押し倒す形になり床に押さえつける羽目になった。
「あー! あー!! きかない! 聞かないからな!」
「なんて諦めが悪いの? ちゃんと聞いてよ!」
「ぜーったい嫌だ! だってオレ、ロージーに『嫌い』とか言われたら死ぬ! ショック死するから!!」
「何を勝手に想像してるの!? 好きに決まってるじゃない!」
「へ……………………?」
「あ………………………」
ロージーがあっとした表情になると、形勢逆転し、ペイアーがぐいぐいとロージーに迫る。
彼の勢いは翅にまで伝わっていて、普段たたんでいる翅が大きく広がる。
黒い翅は広げるとエメラルド色に輝いて見えてきれいなのだが、それに心を奪われるほどロージーは落ち着いてなどいられない。
「ホントに? オレのこと、好き?」
「~~~~っ! 嫌いだったらこんなに関わろうなんてしないでしょう!」
「マ、マジでオレのこと好きでいてくれたの?」
「あんたいつも女の子にこんなふうに言い寄ってるの!? かなり気持ち悪いわよ! もうっ近い」
「んなわけないだろっ、こっちは必死なんだ……って、そんな話じゃない! じゃ、じゃあオレたち……」
「好きだけど……だからこそ、あんたと関わるのもうやめる……」
「は? え? いやいやいやいや……な、何言ってんだよ」
ロージーが近づきすぎたペイアーの肩を押し、距離を作る。
「あたし、ペイアーのこと好きだよ。でもそれ以上にシオンやヴィオラ様のこと大切に想っている。二人のためなら、危険を冒して怪我することだってある、命を投げ出す覚悟もある。きっとずっとペイアーを心配させちゃう……」
「……」
「ペイアーのことをあたしはきっと一番に考えてあげられない。それでペイアーのことたくさん傷つけてしまうと思う。でも、それがあたしの生き方だから変えられない。けど、あなたは……もっと普通に恋をして、家庭をもって、子供だって……そうやって穏やかに暮らす選択肢があるから……いろいろ噂とかあるけど、それでもいい縁談の話がきてるの知ってるよ。もう女好きでいる必要なくなったんだから、もう普通の人生を歩んだって……」
ロージーは涙がこぼれてしまいそうなのを必死で抑えているせいで、声が震えている。
だが、ここで泣いてしまうのはズルいような気がして、拳を痛いほど握って耐えていた。
「だから……ちょ、ちょっと!?」
ペイアーはツタで縛られた腕をぐっと上げ、腕を輪のように広げてロージーを囲う。
抱き締めるというほど甘くはなく、拘束というには優しすぎる。なによりペイアーとの距離がほとんどないせいで体温が高くなってしまうのがロージーは嫌なほど自分で理解してしまう。
「は、なれてよ」
「オレが傷つくとか、親父が勝手に決めた縁談にのっかった方が幸せとか、なにが普通とか、何勝手に決めてんだよ。そっちの方が傷つくんだけど」
「なんでよ? だって……」
「ええい、だってもない! ロージーがシオンやヴィオラちゃんのこと大切に想ってることくらいわかってるさ。そんなことわかってて、オレはお前の傍にいたいと思ってんの」
「そ、そんなのあたしに都合よすぎるじゃない……」
「そう? オレにとっては特等席なんだけど。オレがロージーの一番近くにいることが大事なの」
「でも、大切にできるかわからないよ」
「言っただろう、シオンとヴィオラちゃんが大切なのはわかってる。そこ以外の割合がオレに多く振られていればよし」
「どういう意味?」
「あのトルエノとかいう奴とオレ、どっちが好き」
「えぇ? なんでトルエノさんがでてくるのよ?」
「どっち?」
「そりゃあ……ペイアー、だけど……」
「フランメとオレだと?」
「ペイアーだけど……なんの質問?」
「フフ、フフフン、そうかそうか、つまり、シオンとヴィオラちゃん以外だとオレが一番好きってことだろう? 実質1位じゃん」
「……………なんかやっぱりさっきからちょっとおかしなテンションになってない?」
「そりゃあなるだろ、好きな女の子がオレのこと好きだったんだよ! ならない理由がない!」
「威張って言うことじゃないでしょうが……」
ロージーは、満面の笑みを浮かべるペイアーに少し引きつつも、お互いの気持ちが重なっている確信を得てしまっては、もうそれを知る前には戻れなさそうだ。
動いているうちにペイアーを縛っていたツタは緩くなりほどけ、手が自由になるとすぐに両手はロージーの手を握り、残りの片方は腰にまわされ、もう片方は頬に添えられる。
ロージーは、ペイアーにごく自然に逃げ道をふさがれたことに気づいたのは顔が近づいてきたときで、とっさの反射神経でふいと顔を背けた。
結局口づけは頬に対してになったが、ペイアーは不満げにロージーをじとりと睨む。
「えー! キスしないのかよ!?」
「今はそういうことに現を抜かしている場合じゃないから。ヴィオラ様をお救いすることが優先事項だもの、そのためにもう休むから、ペイアーも自分の部屋で休んだら?」
「はぁ……おあずけかー……ヴィオラちゃん、ひょっこり帰ってきてくれないかな……」
「ヴィオラ様は誘拐されているのよ、そんな普通に戻ってこられたら苦労しないわ……その……ヴィオラ様を助けてから……また話そう」
「お、おう……」
ロージーが立ち上がって、ペイアーを自分の部屋に戻るように促すために扉を開けたところ、ちょうどロージーの部屋の扉を叩こうとしていたフランメとはちあわせた。
彼は焦り動揺しているようで、彼のグラデーションのかかった瞳は酷く揺れている。
「どうしたの? まさか殿下に何かあったの!?」
「ロージーさん……とペイアーさん」
「なんだよそんな焦って?」
「ヴィオラ様が戻って来ました」
「「…………………………えええええええ!?!?」」
ペイアーさんは本命の前ではうじうじ、と…( ..)φメモメモ
二人のイチャコラも書きたいいいぃ




