107.なんだってやる!
シオンたちは、気づくとどこかの町の裏路地に移動させられていた。
どうやらペロージアにもたされた金色の紙に指定されたものを近づければ、物はペロージアに送られ次の場所に移動させられるようだ。
シオンとロージーは、見慣れない薄暗く異臭のする裏路地に少しぎょっとして辺りを見回している。
町に時々繰り出しているペイアーやもともと平民であるフランメやルコウはこの場所がどこなのかを冷静に考えていた。
「どうやらまた別の場所に移動させられたようですね……殿下、ワタシがここがどこなのかそこらの人に聞いてまいります。父上、その間に殿下の姿を変える魔法を……このまま出ては殿下のお姿は目立ちすぎます」
「そうじゃの……ペイアーもフランメと一緒に行っておくれ」
「はーい」
フランメとペイアーが裏路地から大通りへと向かっていく。
その間にルコウがシオンに魔法をかけて角を見えないようにし、髪の毛は黒色に変え、ロージーとシオンの持つ剣を魔法で異空間に隠した。
それでもシオンの整った顔立ちは人の目を惹きつけてしまう。
「お顔まで変えるとなるとううむ……この外套を被ってくだされ」
ルコウが異空間から外套を取り出してシオンにかぶせた。
その間にフランメとペイアーが戻ってきて、フランメは明らかに苛立っていて、ペイアーはどうしてかにこにこしていた。
「最悪です。どうやらついに国外に来てしまったようです。ここは、亜人族国家、サブルム王国の港町リマニです」
「最悪? 最高じゃん! ここの飯、めちゃうまいよ? 前に来たことあるし、保証する!」
「これでは遠すぎて城と連絡も取れません。立場のある人が異国に来ているのですよ。宿も探さないと……殿下が安全に過ごせ、なるべく目立たずに滞在できる、宿、ですよ?」
「人の行き交いが盛んだから宿はいっぱいあるし、変にお高い宿に泊まった方が目立たないか? オレが来たときに泊まった宿はよかったぜ、そこにしよう!」
「勝手に決めないでいただきたい」
フランメは無表情ながらも苛立ちで口調が少し強くなっており、苛立つフランメをルコウがまぁまぁといさめる。
「ペイアーがこの中で一番ここのことを知っておるし、まぁ他の宿も考えるとして候補にはいれよう」
「……父上がおっしゃるなら」
「やりぃ! あそこの従業員のお姉さん可愛かったんだよね!」
ペイアーが指をぱちんと鳴らしてにやりと笑うが、ロージーとばちりと視線が重なって、ペイアーがぎこちなく視線をそらした。
視線をそらされたことにロージーはむっときて、ロージーもそっぽを向いた。
皆が話している間、シオンはじっと金色の紙に視線が向いていて考え込んでいた。
「ルコウはこの『インプンドゥル』を知っているか? 僕は聞いたことがないのだが……」
「あぁ、妖精の一種なのですが、魔物を生み出す瘴気を生まれる際に浴びてしまった、稀有な存在でして……狡猾で人の言葉も理解し、雷の魔法を使う鳥のような姿のこともあれば、夜な夜な美男子に姿を変えて美しい女子を誘惑し生き血をすすると言われております」
「人を害するのであれば、ユニコーンほどに気を遣う必要はなさそうだな」
話を聞いていたロージーがうんうんと頷いた。
「それならばあたしが囮になります」
「お、おい、ロージー何言って……」
「ペイアーは黙ってて、女性を狙ってくるのなら、あたしが餌になるしかないでしょう? 殿下もそう思われますわよね?」
「……………………ならば、僕も囮になる」
「へ?」
「僕も女装して囮になる」
「「はぁーーーーーー!?!?」」
フランメが頭を抱えてその場に座り込んでしまい、ペイアーは愕然として乾いた笑いがでる。
「は、あはははは、おいっ! この中で一番背が高くて! ムキムキの奴が何言ってんの!?」
「ロージー一人より二人の方が安全であろう」
「だからって…………………いや、顔は化粧をすればイケるか? 体格は服を考えれば」
「ペイアー! 殿下を女装させる方に考えをもっていかないでよ!」
「ロージーだけ危険にさらしてじっとすることなど、僕には出来ぬ。頼む……」
真摯にシオンに頭を下げられては、ロージーはそれ以上何も言えなくなった。
こうして、『美女二人でインプンドゥルおびき出し作戦』を進めることとなった。




