ご説明を願います
「えーっと、全部説明してなかったっけ?」
おどけたように首を傾げるリノに、俺は青筋を立てて言い返した。
「説明してねぇよ、これっぽっちも!」
「えー。面倒臭いけど、あたし優しいし説明したげるね」
リノはわざとらしくため息をつくと、一つずつ指を折りながら話し始めた。
「えーと、まずはここの説明だよね。ここはね、お前の居た世界のパラレルワールド的な感じの世界! でも違うところが一つ――魔法がある! ただそれだけ。でも、それが大きな違い。そして君はあたしが見えて、あの時あの場所に入れた! これで第一関門突破ね」
「第一関門……?」
「そう。そして第二関門は、動けなくなった風のあたしを動かすこと。観察眼と、あたしの安全。どちらも守られてたら合格! お前はあたしにへんたーいなことをせず、しっかり観察して動かす方法を導き出した! だから案内したの!」
「っ、……」
あまりに堂々とした言いっぷりに、俺は言葉を失った。その様子を見て、リノがにやにやと顔を覗き込んでくる。
「どうしたの! びっくりしちゃった? もしかして、色々言わなかったこと怒ってる? それはごめんね〜、説明しなかったのは――」
「違うけど、違うくない。俺は……」
怒りで肩を震わせながら、俺はリノを睨みつけた。
「お前が、わざと動けないのを『演じてた』って点が、む、か、つ、い、て、ん、だよ! ッざけんな!」
「ちょっと! 急に大声出さないでよね。まじでこの美少女の鼓膜が破れたらどうしてくれんのよ」
「お前もッるせぇよ!」
「まぁまぁ、そんなに怒るなよ〜。次に、この家はあたしの家。はい、この家に入るよー」
「今言ってももう遅いんだよ! あほ!」
「アホじゃないし。大天才だし。で、なんだったっけ、次?」
リノはぷいっと膨れてみせたあと、人差し指を顎に当てて小首を傾げた。本当にマイペースな奴だ。
「えーっと。その子について……って、なんで俺がお前の説明に協力しなくちゃいけないんだよ」
「あはは、教えてくれてありがとっ! えーとね、その子はキャピ! かわいい獣人族の子だよ。あたしはキャッピーって呼んでるよ」
「へぇー……」
俺は、浴槽の縁でツンとそっぽを向いている白髪の少女に視線を戻した。
「キャッピー、こんにちは……?」
「話しかけないで」
「冷たっ!泣くぞ。」
あまりの塩対応に、俺はリノを振り返る。
「キャッピーって、誰にでもこんな感じなの?」
「いや? あんたにだけだね」
「なんか地味に傷つく……」
がっくりと肩を落とす俺を見て、リノは笑った。
「まぁ、この子はそんな感じ。てか、こっちも質問していい?」
「……まあ、色々答えてもらったし、一個ならいいよ」
「ケチが。あんたの名前は?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「言ってないよ。あんたも説明不足じゃん」
言われてみればその通りだった。俺は頭を掻きながら、名乗った。
「そうかもね。俺の名前は板倉拓実。」
「タクミ、ね。わかった」
リノがそう頷いた瞬間だった。彼女の手のひらから、淡い光がぽうっと放たれた。光はみるみる形を変え、やがて一羽の白い鳩のような鳥へと姿を変える。
「板倉拓実、リノの仲間として登録」
リノが厳かに告げると、手元にいた白い鳥がコチコチとした機械的な声で鳴いた。
『ショーチシマシタ、ショーチシマシタ』
そして、パタパタと羽ばたきながら、お風呂場の窓から外の夜空へと飛んでいった。
「な、何をしたんだ……?」
「この世界での住民登録よ。感謝しなさい」
ドヤ顔をきめるリノに、俺は眉をひそめる。
「住民登録? 俺はこの世界に住む気はないぞ」
「こっちとあっちを行き来すればいいでしょ。あたしがいれば可能なんだから」
「……そうなのか」
「まぁね。あたしだし」
相変わらずの自信満々な態度に呆れつつも、俺はふと、自分がいま置かれている状況を思い出した。
「そっか……。てか、早く出てってくんない? 俺、今から風呂なんだわ」
体には、申し訳程度のタオルが巻かれているだけだ。
「あ、……なんかごめんね」
さすがのリノも気まずくなったらしく、頬を少し赤く染めて、慌ててキャッピーの手を引いて浴室を後にするのだった。
前回少しミスをしていたみたいで今は直してありますがすみませんでした。




