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元おっさん、TS転生して美少女Vtuberになったら百合営業のはずがガチ恋されました〜バレたら炎上確定なのに今日も配信がやめられない〜  作者: カルラ


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第3章:百合営業を強制される

 配信が終わった後、俺は深く息を吐いた。


「……慣れてきた気がするのが怖いな」


 自分で言って、自分で少し引いた。


 つい数時間前まで、一般人だったはずなのに。

 今は当たり前のように配信している。


 人間の適応力ってやつは恐ろしい。


「順応が早いですね」


 いつの間にか隣に立っていた女性が言う。


「いや、流されてるだけだ」


「それも才能です」


「都合よく言うな」


 軽く肩をすくめる。


 だが女性は満足そうにタブレットを操作していた。


「現在の登録者数ですが」


「聞きたくないような聞きたいような」


「急上昇中です」


「雑だな」


「具体的には、デビュー数時間で――」


「やめろ怖い」


 手で制した。


 数字を見たら実感してしまう。

 今の状況が“現実”だと。


 それはそれで怖い。


「それでですね」


 女性は一拍置いた。


「次のステップに進みます」


「嫌な予感しかしない」


「コラボです」


「やっぱりな」


 俺は天井を見上げた。


 さっき配信で言ったばかりだ。

 まさかこんなにすぐ現実になるとは思わない。


「相手は誰なんだ」


 恐る恐る聞く。


 女性は画面をこちらに向けた。


 そこに表示されていたのは――。


 黒い衣装の、美しい女性。


 長い黒髪。

 鋭くも整った瞳。

 どこか冷たい印象すらある佇まい。


 だが、その人気は桁違い。


「黒羽ルナさんです」


「無理だろ」


 即答だった。


「いやいやいや」


 首を振る。


「相手トップクラスじゃないか」


「はい」


「新人と絡む理由がない」


「あります」


「ないだろ」


 だが女性は迷いなく言った。


「話題性です」


「……あー」


 納得してしまった自分が悔しい。


「“中身おっさん疑惑の新人美少女Vtuber”」


「やめろその呼び方」


「それと、“クール系トップVtuber”」


「温度差ひどいな」


「並べると面白いでしょう?」


「まあ、面白いが」


 完全に見世物だ。


 だが、それが商売なのだろう。


「で、何やるんだ」


「百合営業です」


「無理だろ」


 さっきより強めに言った。


「いや本当に無理だろ」


「なぜですか」


「俺の中身を考えろ」


 男だぞ。


 しかもおっさんだぞ。


 そんなやつが百合営業とか、どう考えても事故だ。


「大丈夫です」


 女性はさらりと言う。


「相手がリードしてくれます」


「余計に怖いわ」


「彼女は慣れていますから」


「何にだよ」


「百合営業に」


 断言された。


 プロだ。


 完全にプロの領域だ。


「いやでも」


 俺は最後の抵抗を試みる。


「相手は普通に女性だろ」


「はい」


「俺は中身男だぞ」


「外見は女性です」


「そこじゃない」


 倫理観の問題だ。


 いや、倫理観で止まる世界なのかここは。


「それに」


 女性は少しだけ意味深に笑う。


「視聴者は喜びますよ」


「知ってる」


 それが一番タチが悪い。


 コメント欄の反応が容易に想像できる。


「……はあ」


 観念した。


「やるしかないんだな」


「はい」


 即答だった。


 数日後。


 コラボ当日。


 俺は配信ブースに座っていた。


 いつもより心拍数が高い。


 明らかに緊張している。


「落ち着いてください」


 スタッフの声。


「落ち着けるか」


 小声で返す。


 画面を見る。


 待機コメントがすでにとんでもないことになっている。


『ルナ様とのコラボ!?』

『どうなるんだこれ』

『事故の予感しかしない』


「俺もそう思う」


 思わず呟いた。


 そして――。


 配信開始。


『きたあああああ』


 コメントが一気に流れ出す。


「はいどうも」


 俺はいつもの調子で話し始める。


「白雪ミコです」


 少しだけ声が上ずる。


 自覚して、軽く咳払いをした。


「えー、本日はですね」


 一拍置く。


「とんでもない方をお呼びしております」


 コメント欄がざわつく。


『もういる?』

『まだ?』


「いや俺が一番緊張してる」


 正直に言った。


 その瞬間。


 別の声が、配信に乗る。


「ふふ」


 静かで、落ち着いた声。


 だがどこか艶がある。


「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」


 背筋がぞくりとした。


 画面にもう一つのアバターが表示される。


 黒羽ルナ。


『きたああああああ』

『本物だ』

『圧がすごい』


「は、はじめまして」


 俺はぎこちなく頭を下げる。


「白雪ミコです」


「ええ、知ってるわ」


 ルナは微笑む。


「あなた、面白い子ね」


 その一言で、コメント欄が爆発した。


『認められてる!?』

『すごいこと言ってる』


「いや、そんな」


 思わず照れる。


 いや待て。


 なんで照れてるんだ俺。


「ふふ」


 ルナは楽しそうに笑う。


「もっと気楽に話していいのよ」


「いやそれができたら苦労しない」


 つい本音が出る。


『草』

『通常運転で安心した』


「そういうところよ」


 ルナが言う。


「飾らない感じ、嫌いじゃないわ」


 距離が近い。


 言葉の一つ一つが、妙に柔らかい。


 だが同時に、逃げ場を与えない。


 これがプロか。


「えーと」


 俺は話題を探す。


「今日は、その……よろしくお願いします」


 ひどい。


 挨拶が雑すぎる。


 だがルナは気にしない。


「こちらこそ」


 穏やかに返す。


 そして――。


「せっかくだし、もう少し近づいてもいい?」


「は?」


 一瞬、思考が止まった。


 次の瞬間。


 画面上で、ルナのアバターがこちらに寄ってくる。


 距離が近い。


 近すぎる。


『!?!?!?』

『距離バグってる』

『てぇてぇ』


「いやいやいや」


 俺は思わず後ろに引く。


「近い近い近い」


「そう?」


 ルナは首をかしげる。


「女の子同士なんだから、これくらい普通よ」


「普通じゃないだろ」


 反射的にツッコんだ。


『中身おっさん出てるww』


「出てない」


 即否定した。


 だがルナは、じっとこちらを見ている。


 その視線が、妙に鋭い。


「あなた」


 静かに言う。


「本当に面白いわね」


 笑みが深くなる。


 その瞬間、理解した。


 これは――。


 完全に遊ばれている。


 そして同時に。


 このコラボは、確実にバズる。


 そう確信してしまった。












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