うらばなし
ラスト、甘味警報。
甘々だって書けるんだぜ!
青年と千華の、掲げていた手から、光が消えて。破れていた空間が、幻のように溶け、元の穏やかな寺院の庭が戻ってくる。
何もかもが『元通り』になった、その場所で。しんと、一瞬の静寂が通り過ぎて――。
「やったー! やっとアイツらとおさらばできたあぁ!!」
「千華! ご住職に迷惑! 嬉しいのは分かるけど、声を抑えて!」
掲げていた手をそのままバンザイに移行させて叫んだ双子の姉を、予想していた千秋が窘めた。二人の様子を見守っていた青年――『魔王』だった彼が、くすくすと笑う。
「大丈夫だろ、千秋。この庭、バカみたいに広いし」
「バカみたいに広いから、声も響くのよ。――お疲れさま、斗真くん」
「疲れたのは千秋もだろ。無関係だったはずなのに、勝手に千華に巻き込まれて、散々だったな」
「それそれ、もっと言ってやって」
妹と少年の会話に、千華が頬を膨らませる。
「仕方がないじゃない。いきなり異世界なんて非常識空間に喚び出されて、『魔王を倒さなきゃ帰れない』なんて無茶ぶりされて、よくよく調べてみれば魔王を倒したところで帰る手段なんてどこにもなくて、必死に調べて見つけたのが『双子の絆』っていう伝承だけだったんだから」
「確証も何もない伝承に他人を乗せる辺りは、さすが巨大財閥のお嬢様だったよな。見事な口先三寸だった」
「褒めてるの、貶してるの?」
「俺がお前を褒める義理がどこにある。貶してるに決まってんだろ」
「ひっどーい。私だって、好きで明堂院の家に生まれたわけじゃないのよ?」
――和やかに話す二人を見ながら、千秋の脳裏に、半年前の『あの日』が鮮やかに再生された。
千華が、五人の異世界人を連れて戻ってきた、あの日。千秋の目の前で空間がびりびりに裂けたのは、実は二度目だった。
『うわ……っとと。――お、本当にいた、同じ顔の子』
『えぇと……どちら様ですか?』
『あぁ、俺、風嶺斗真。君は、小鳥遊千秋さん……で合ってる?』
『合ってますが……何故、私の名前を?』
『君の姉さんを名乗る、千華って子から聞いた』
『千華!?』
そのとき千秋は、半年前に突然姿を消し、身分違いの恋に絶望して身投げだの、煩わしい立場が嫌になって失踪だの、好き勝手囁かれている姉のことを、本気で案じている最中だった。そこにお誂え向きに飛び込んできた、『千華』と会ったという青年。現れ方が相当にぶっ飛んでいたとかは、この際関係ない。
『千華、千華は無事なの? どこにいるの!?』
『ちょ、落ち着いて! 説明したいのは山々だけど、今は時間がない。この後すぐに、俺を追ってちょっと厄介な一団が来るはずなんだ。――千華も、その中にいるよ』
『……本当?』
『あぁ。けど、千華にくっついてる連中が、マジで滅びれば良いのにって奴らでな。……勝手は百も承知で頼む、千秋さん。俺たちを助けてくれ』
いまいち事情は飲み込めなかったが、目の前の青年は誠実そうだ。何より、彼の『助けて』には、悲愴な重みがあった。
千秋は頭をフル回転させ、疑問は全部飲み込んで、頷いたのだ。
『私は、何をすれば良いの?』
『とりあえず、千華に合わせてくれたら何とかなる。後、俺はそこの繁みにでも隠れてるけど、絶対にやって来る連中に、俺のことは話さないでくれ』
『分かった』
そうして、青年が無事に隠れ、千秋が座っていた椅子にもう一度落ち着いたところで、二度目の空間びりびりが起こったのである。
千華が、最初から『千華お嬢さま』モードだった時点で、厄介な裏事情が満載であることなど明白だった。本人の意思とは裏腹に、巨大財閥の跡取りとして育てられてきた千華は、ある計画のためにかなり昔から『千華お嬢さま』という鼻持ちならないお嬢様を演じている。素を見せるのは、千秋も含めた極々親しい、信頼できる限られた人間だけ。血を分けた、誰より近しい存在の千秋がすぐ目の前にいるのに、千華が最大級の警戒で『千華お嬢さま』にならざるを得ないほど、千華にべたべたしている連中は『危険』なのだ。
千秋も即座に頭を切り替え、事情を知らない人用の、『千華お嬢さまに従順な召使い千秋』モードを演じて。
――語られた『事情』に、怒りで脳が灼き切れる幻覚を覚えた。
自分たちの世界のことくらい、自分たちで解決しろ。他の世界の人間を、あまつさえ千華を巻き込むな。
しかも、そこまでしたくせに、『魔王』をこちらの世界に逃がしただと?
千秋は、怒りながらも冷静だった。彼らの言う『魔王』が、一度目に出てきたあの青年だと、すぐに飲み込めた。
……問題は、彼がどう見ても人間にしか見えず、しかも普通に『風嶺斗真』と日本名を名乗ったことだ。
千華と、クズ共と、話を合わせ。どうやら千華が、しばらくコイツらを『魔王討伐』の名目でこの世界に留まらせたいのだと知り、ひとまずは希望通りにするため、住職に頭を下げて部屋を借り、厄介者共を寺の一室に押し込んだ。『お前は手配をしておいで』という千華の言葉は、『ここは任せろ』の意。
頷いて、庭にとって返し、『魔王さんはいらっしゃいますかー』と、自分でも驚くほど低い、平淡な声で彼を呼んだ。
『こえぇ……』
『すみません、あなたに怒っているわけではないのです。ただ、ちょっと怒髪天が収まらなくて』
『よし、ひとまず深呼吸だ。言葉が無駄に丁寧な時点で既にかなり怖い』
言われて、『召使い』モードが解けていなかったことに気付く。言われたとおり深呼吸をして、苦笑した。
『ごめんなさい。本当に、あなたには怒ってません』
『そうなのか?』
『一つお伺いしますが、あなたきちんと人間で、日本人ですよね?』
『あっちの世界では、ずっと『魔王』呼ばわりされてたけどな。俺は人間だし、ついでにこの国で生まれ育った、生粋の日本人だよ』
『……どういうことです。『魔王』を倒すために、千華はあいつらに拉致られたんでしょう。その『魔王』すら、この世界の人間って』
『――そもそも、全部欺瞞なんだよ。ルヴィーア王国の、な』
そうして、斗真から聞かされた内容に、今度こそ千秋は絶句する。
空気中に『魔力』が満ちる、かの世界では。『器』が大きければ、人も、動植物も、魔的な存在となる。
『器』が大きい人間は、魔術師として尊ばれ。
『器』が大きい動植物は、魔物として高い知性と能力を備え――それ故、人から恐れられる。
それは、かの世界における自然の摂理だ。誰が悪いわけでもない。
しかし、いつの頃からか、囁かれるようになった。
――魔物が次々生まれるのは、それを生み出す『魔王』がいるからだ。
――魔王を倒せば、人はもっと豊かになる。平和になる。
その噂を証明するかのように、『魔王の城』が発見され。どれだけ討伐隊を送っても、蹴散らされる。
あるとき、神にもっとも近いとされる国、ルヴィーア王国が、祈った。
どうか、我らに、魔王と対峙できるだけの、『希望』をお与えください――と。
神はその声に応え、自らの愛し子を、地上へ遣わすようになる。
それが、『神子』と『魔王』の、永きに渡る対決の始まり――。
『魔物が人を襲うのは、人が魔物の縄張りを荒らすからだ。どれほど知性が高くても、魔物の本質は獣で、本能が勝るんだから。それでも知性が高い分、縄張り外に逃げた人間をむやみやたらと狩ったりはしないし、人間に数では勝てないって分かってるから、必要以上に攻撃を加えることもしない』
『それなのに、あの世界の人間は、魔物と棲み分けようとは考えなかった?』
『欲深なんだよな。それであるとき、ルヴィーアの魔術師は考えたんだよ。『魔物たちを従えられるほど、大きな『器』を持つ者に、最果ての地で魔物を管理させてはどうか』って』
『……けど、そんな人間は、あの世界にはいなかった』
『その通り。困ったそいつは、欲しいものを喚び出す術を改良し、時空にまで干渉して、異世界から対象者を連れてきたんだ』
欲しいものを喚び出すその術は、当然物が対象で、返すことなど考えていない。
ここで、一方通行の『魔王』を生み出す、歪な魔術が生み出された。
『ルヴィーアの魔術師は、最初の『魔王』を騙くらかして、『魔物の管理人』の役を押しつけたらしい。あの世界、『器』が大きければ大きいほど長生きできるから、最初の『魔王』は数百年生きたって伝わってる』
『……けど、そのせいで、『魔王』の噂が蔓延したのね?』
『最初の『魔王』にしてみりゃ、頼まれて管理してる土地に武器持った奴らがどやどややって来たら追い返すだろって、それだけの話だったんだけどな。なんかおかしいって気付いて、調べて、騙されたって分かったときには手遅れだ。騙した魔術師は既に死んで、必死で帰る方法を探しても、もとの術式に『送還』が想定されていない以上、一から作るしかない』
『でも。それだけなら、最初の……被害者だけで、話は済んだはずだわ』
『それだけならな。けど、ルヴィーアはさらに調子に乗った。そもそも自分たちが生み出した『魔王』を倒したいと、神に祈って。ルヴィーアの神ってのがまた、脳内花畑の勘違い女で、『人々の嘆きに応えるワタシ、GJ!』などうしようもない奴なんだよ。で、そもそも異世界の人間倒せるのは同じ世界の人間だけだって、『神子』を拉致って戦わせるってわけだ』
『ちょっと待って! 連れてきたのが『神』なら、『神子』は帰れるんじゃないの?』
『脳内花畑だぞ。『ワタシの国、素晴らしいでしょう? もとの世界よりずっと良いわよ!』って、親切心のつもりで帰しやがらないそうだ。――ちなみにコレ、千華が直接言われたらしい台詞な』
神に生死の概念があるかどうかは不明だが、百回殺してもまだ足りないバカ女である。
ふつふつと沸く千秋の怒りを知ってか知らずか、斗真の説明は終わらない。
『これでルヴィーア王国には、『魔王と対抗できる国』ってアドバンテージがついた。周囲の国から一目置かれ、当然国力も増える。こうなったら、『魔王』を途切れさせるわけにはいかない。古い文献から最初の『魔王』を知って、『魔王』が死ぬ度に異世界から喚び出して、そんなことをずっと続けてるわけだ。――何代か前の魔王が『やってられっか』って自殺してからは、ご丁寧に自分では決して死ねない呪いまで付与してな』
『――どれだけ勝手なのよ!!?』
ついに爆発した千秋に、斗真は、何故か優しく微笑んだ。
『千華の言うとおりだなー。『千秋は優しいから、この話を聞けばきっと怒る。怒って――アイツらを蹴散らす手助けをしてくれるわ』って』
『する! 優しいとか関係ないでしょ、ここまで虚仮にされて黙ってられるか!』
『千秋さんが虚仮にされたわけじゃないけど?』
『千華を勝手な理由で拉致って戦わせたってだけで、万死に値する振る舞いよ!』
ここまで、聞いたのは『魔王』側の事情だけだが、千華が『千華お嬢さま』モードでガードしている状況から、『神子』へのルヴィーア王国の身勝手さも想像がつく。
斗真が、深々と頷いた。
『俺はあの世界で『魔王』になって一年ちょいの若輩者だったけど、召喚されたのは二年前で、先代から話を聞いてる。歴代の『神子』は、ある日突然ルヴィーア王国に『落とされ』、よく分からないまま『魔王討伐』に駆り出されて……大概、旅の途中で妊娠して、なし崩し的にあの世界に骨を埋めることになってたみたいだな』
『……なに、それ。ちゃんと恋仲になってから、でしょうね?』
『幸せに生きて死んだ神子の話って、あんまないんだよな。――そういうことだろ』
低く付け足した斗真の声に、この件に関し、彼も千秋に負けず劣らず怒っていることを知る。『魔王討伐』そのものがアドバンテージであるルヴィーア王国にとって、本当に『魔王』が倒されてしまっては困るわけで、『魔王』を倒せる『神子』を戦いから離脱させるために、手っ取り早いのは誰の目にも明らかな『慶事』ということか。――胸くそが悪いにもほどがある。
『そう。……あいつらが、やたらと千華にべたべたして、馴れ馴れしかったのって、そういう理由』
『正直、『神子』が現れたって聞いたとき、『魔王城』まで辿り着けるとは思ってなかった。千華には悪いけど……どうせまた、可哀想なことになるんだろうな、って』
『千華が、あんなミエミエの下心満載な男ども、軽くあしらえないわけないわ。『お嬢様』モードだったってことは、手玉に取ってあしらう方向か』
『挙げ句、普通なら一年は掛かる『魔王城』まで、半年足らずで到着しちゃうし』
『無駄な寄り道一切しないように頑張ったんでしょ。そこまでして急いだってことは……千華は、『魔王』が帰還の鍵を握るって、確信していたのね?』
『……話には聞いてたけど、マジでツーカーだな。千華と千秋さんって』
『私のことも『千秋』で良いですよ?』
『それはどうも。千秋も今更敬語要らないから』
くすくす笑って、斗真はぐぐっと背を伸ばす。
『そもそも『魔王』の始まりって詐欺だから。歴代魔王も、拉致の被害者だし。けど、『魔王』として喚び出されるだけのことはあって、俺も含めて『器』とセンスは桁違いなんだよね。――そんな奴らが、代々大人しく、されるがままになってるわけがないだろ?』
『私なら、ルヴィーア王国滅ぼしてる』
『あぁ、そこは最初から召喚術に組み込まれてて無理でさ。『王国に危害を加えない』って。そうじゃなかったら、あの国、とうの昔に無くなってるよ』
『……確かに』
しかし、『王国に危害を加えない』という制約が掛かっている拉致被害者を、加害者である王国が『魔王』として討伐対象にするとは、つくづくルヴィーア王国は腐りきっている。
千秋は、ぶすくれながら斗真に視線を流した。
『それで、危害は加えられない魔王さんたちは、どうすることにしたの?』
『歴代が、ずっと構築してきたのが――時空に干渉する、大規模魔術』
先代は、あと一歩で間に合わなかった、と斗真は目を伏せた。その様子だけで、斗真にとってその人が大切だったと伝わってくる。
なんと言えば良いのか分からなくて、結局千秋は、そっと斗真の手を取ることしかできなかった。
柔らかく握り返して、斗真は笑う。
『ありがとう。悲しかったけど、先代と交わした最後の約束は、果たすことができたから。これからちゃんと、弔える』
『……約束?』
『あぁ。『――お前は、帰れ』って』
優しい人だったのだ、と千秋は思った。自らの命が潰えるその間際に、心から他人を慈しめる。そんな人だったから、斗真も、これほど悲しんでいるのだろう。
『俺は、先代の遺志を継いで、研究を続けた。そして、ついに、目指すべき世界の座標さえ特定できれば、時空を開いて道を固定することができるようになったんだ』
『『魔王』が自力で帰れるようになったら、ルヴィーア王国にとって、何よりの痛手よね』
『あぁ。そうなんだけど……俺は残念ながら、自分の生まれ育った世界の座標を、特定することができなかった。どうしようかと考えていた矢先――俺の前に、千華が一人で現れたんだ』
『あなたが、魔王? ……文献にあったとおり、本当に異世界の人間を拉致してるのね』
開口一番そう言い放った千華は、自分は『神子』として拉致られた、明らかに怪しい話が信じられずいろいろ調べて、『神子』と『魔王』のシステムがルヴィーア王国のマッチポンプだと知った、『魔王討伐』のパーティは、肩書きと見た目だけは立派だが、頭の足りていない馬鹿揃いで、そんな奴らに夜毎貞操を狙われる今は正直悪夢、私は早く帰りたいのだと一息で話した。
『あなた、明堂院家って知ってる?』
『Mグループ運営してる財閥の総帥一家の、明堂院家のことか?』
『よし。やっぱりウチの世界の人だった。……ねぇ、『魔王』は帰還について調べてるんでしょ?』
『何で知ってる!?』
『ルヴィーア王国は馬鹿揃いだけど、その中には用心深い馬鹿もいるのよ。文献の端っこにさり気なくメモられてて、覚え書きっぽかったから信憑性は高い気がしたの。それで、帰還の方法は?』
千華が帰りたがっているのは確かで、斗真も帰りたくて仕方がない現在、『神子』と敵対する理由などどこにもない。即座に共闘を約束し、斗真は『魔王』が編み出したのが、帰還術ではなく時空干渉術で、自分はそれを発展させ、座標さえ特定できれば目指す世界との道を繋げられるようになったと説明した。
『凄いわ、予想以上! 座標さえ、特定できれば良いのよね?』
『あぁ』
『なら――私を、使えないかしら』
私ね、一卵性の双子なの。あっちの世界に、私と全く同じ遺伝子を持った、双子の妹がいるわ。
文献にね、あったのよ。術者にとって、双子は特別だって。双子を利用し、離れた空間を繋いだ魔術師の逸話も残っていたわ。
双子で空間を繋げられるなら。界を跨いでも、それは有効ではないかしら。
私と、私の妹で。あちらの世界の座標を、特定することはできない――?
まさか、千華の語る『文献』がおとぎ話レベルの眉唾モノで、『魔術師の逸話』が関係者の間では『物語』扱いされていたなんて、そのときの斗真が分かるはずがない。まるっと信じて、千華を通じ、彼女の向こうの『千秋』を探り――。
『見つけた!』
『座標、分かる?』
『あぁ。これで帰れるぞ!』
斗真はすぐにでも術式を発動させようとしたが、それを止めたのも千華だった。
『何でだよ!』
『ここで、私たちが姿を消しても、また別の誰かが拉致されて、同じことの繰り返しよ。逃げたってバレたら、今度こそ『逃げるな』って呪いもつくかも。そうなったらもう、『魔王』に打つ手はないわ』
『……じゃあ、どうするんだ』
『私に任せて。考えがあるの』
――そうして、その『考え』に乗った斗真は、その翌日、敢えて『魔王城』で『神子姫ご一行』と戦い、追い詰められたフリをして。
『くくく……神子姫よ。そなたの内には『道』があるな』
悪役満載の台詞と共に術式を発動し、『千秋』を座標に、こうして帰ってきたわけである。
千華とのあれこれを聞いた千秋は、とりあえず、深々と、頭を下げた。
『それはまた……姉が、大変なご迷惑を』
『いや。千華の考えは正しい。俺もアイツらをこのままにはしておけないと思ったから』
むしろ困ったのは千秋だよな、と斗真は頭を掻く。
『いきなり目の前で、空間が破れて。びっくりしたろ』
『あーまぁ、確かに、トラウマものの光景ではあったけど。事情も分かったし。……それより、そういうことなら斗真くん、早く家に帰らないと。きっとご家族の方、心配しているわ』
『行方不明になって、二年か。さすがに諦められてる気もするけど』
あちらの世界とこちらの世界の時間の流れはそこまで変わらないようなので、あちらで二年を過ごした斗真は確かに、こちらでも二年間の行方不明だ。
千秋は、強く斗真を睨みつけた。
『何言ってるの? 斗真くん、ご家族と仲悪かった?』
『いや、至ってフツーだったと思うけど』
『なら、そんな簡単に、家族の命を諦めるわけないわ! 私だって、たった半年だったけど、世間でなんて噂されたって、千華が死んでるなんて考えもしなかった。斗真くんが帰ったら、泣いて喜ぶわよ、絶対!』
そうして千秋はまず、斗真の二年ぶりの帰宅をサポートし、連絡先を交換して、千華との『繋ぎ』になり。
同時進行で明堂院家に連絡、千華が見つかったと報告し、話の分かる何人かに『信じられないと思うけど』と前置きした上で、洗いざらい話して協力を求めた。普通に考えて、高校二年の小娘が一人で、異世界の頭が残念な男五人を完璧にフォローできるなんてあり得ない。見えないところで、優秀な人たちが動いていた。
――怒濤の展開だった半年を思い返し、千秋は心なしか遠い目になる。
「千華の『考え』は私も分かるところだったから、協力したけど。この作戦、私の負担が大きすぎたんじゃない?」
「そこは悪かったと思ってる。正直、千秋以上にあの脳味噌空っぽな連中を上手くあしらえる人が思いつかなかったの」
「……ま、竜也兄さんならあしらうより先に問答無用で叩きのめす方向に入るだろうし、猛さんは口が上手くないし、美加さんは表情筋が不自由だし、……他も」
「全員アシスト方向に特化してるんだよな、『千華お嬢さまの側近』方は」
「――悪いか、魔王」
木陰から声が響き、斗真が苦笑する。千華が手招きした。
「竜也、いつまで隠れてるの? もう馬鹿共はいないわよ」
「俺は納得できてないぞ、千華。あんのクソ誘拐犯共、一発殴っても良かったろ」
「あら、ダメよー。あくまでも、『この世界』と『神子』に絶望して、逃げ帰ってくれなきゃ意味ないんだから」
「俺だって『この世界』の一部だと思うが?」
「ワガママ放題の『千華お嬢さま』を本気で想う『男』なんて、あいつらが知ったら面倒じゃない。あくまで『千華お嬢さま』は、家の権力を好き勝手に使って酷い振る舞いばかりする女で、周囲も持て余してる存在でなくちゃ」
「……言いたいことは、分かるけどな」
たちまち千華と二人だけの世界を構築した男に、置いてけぼりの千秋と斗真は苦笑いしか出てこない。
寺院の庭で密かに隠れ、異邦人たちの帰還を見届けた彼の名は、小鳥遊竜也。千秋を引き取り育ててくれた小鳥遊夫妻の実の息子であり、血の繋がりはなくても千秋の兄。そして、千華が『千華お嬢さま』を演じている理由そのものでもある。
邪魔者が文字通り世界からいなくなり、手を取り合う二人の姿はどこから見ても、『祝福されしラブラブカップル』。馬に蹴られる趣味は千秋にはないので、斗真とこっそり視線を交わし、無言で庭から立ち去った。
完全に声が聞こえない範囲まで離れ、そこでようやく二人は足を止める。
「なんだあのデロ甘空間……」
「あー……あの二人が一瞬で桃色空間構築するの、今に始まった話じゃないから」
「大変だったんだな千秋」
「うん。割とよく『爆ぜろ!』って思ってた」
千秋にとってはどちらも兄姉だが、竜也と千華は血も戸籍上も繋がってはいない。千秋繋がりで二人が知り合い、恋に落ちたとしてもなんら問題はないのだが、二人ともが『身内』な千秋は複雑だった。もちろん、千華と竜也は『可愛い妹』であるところの千秋を仲間外れにしようとはしなかったけれど、ある程度大きくなれば、「むしろ外せ! ピンクな世界に私を巻き込むな! 二人きりで末永く爆発してろ!!」くらい思うようになる。
遠慮のない千秋の言に、斗真はくすくす笑う。
「対抗して彼氏作ってやる! とか思わなかったんだ?」
「それがねぇ……考えたことあるにはあるんだけど、身内に突き抜けたのがいると、一周回って自分の恋愛どうでも良くなるのよ」
何しろ、双子の片割れを主家に逆らって助けたという、ただそれだけの理由で小鳥遊家を嫌い、竜也がどれほど優れていても下働きとしてしか認めようとしない明堂院家を見て、「こんな家要らない」とあっさり見切りをつけ、自ら追い出されるためだけに『ワガママ放題お嬢さま』を演じる姉と、そんな彼女を公私ともに支えようと、敢えて下働きの地位に甘んじる兄である。巷に溢れる恋愛マンガも真っ青なドラマを十年近く見せつけられれば、心の底から「自分の恋愛はいいや」と思える。
ちなみに、ただでさえドラマチックだった千華と竜也の恋物語は、ある日突然千華が異世界に拉致られ、恋人のもとに帰りたい一心で腐りきった世界に立ち向かい、見事に帰還を果たしたという要素が加わって、もうそこらの創作では太刀打ちできない領域に達した。千華が行方不明になっている間、彼女の無事を信じて探し、待ち続けた男の純情も足せば、涙なしには見られない一大巨編が完成する。
それにしても。
「あらゆる意味で千華がぶっ飛んでいるのは、生まれたときからの付き合いだから分かってたけど。まさかこっちの人員巻き込んで、誘拐犯たちを精神的にフルボッコする作戦立てるとはね」
「よっぽどあの馬鹿共のこと、腹に据えかねてたんだろ。俺が千華連れてこっちに帰ってから、時空閉じても良かったんだけど、時空移動後の残留魔力で脳内花畑女神を凌げるほどの閉鎖ができるかって考えたら微妙だったから。それならいっそ、あっちの方から『あんな世界は二度とごめんだ』って拒否してもらった方が、確かに手っ取り早い」
「最初は調子に乗らせて、魔力切れと明堂院家からの信用失墜を狙い、無力になったところで『千華お嬢さま』のワガママ発動、無邪気に役立たずの烙印押して、この世界に馴染もうと努力させた上で、その努力全部を軽やかに踏みつける……ね。最初聞いたときはそんなに上手くいくかなと思ったけど、びっくりするぐらいドンピシャリにハマったなぁ」
「ぶっちゃけ今回の神子パーティ、地位とそれぞれの得意分野剥奪したら、顔しか残らないくらいに無能だからな。普通は最低一人、『魔王』の真相教えられて舵取り役を任されるのに、それもなかった。たぶん国の上層部も、千華の『イケメンに囲まれてこの世の春を謳歌している世間知らずの小娘』演技に騙されたんだろ。神子が旅の途中で孕みさえすれば良いわけだから、積極的に抱かれたい素振りを見せる神子相手に舵取りは必要ない。顔重視で選んだパーティがアレだ。――つくづく策士だよ、千華は」
嘆息する斗真に、千秋は困って笑う。千華が黒いのは、残念ながら否定できない。
「あれでも、巨大財閥の跡取り娘として生まれ、それに見合った教育も受けてきてる人だからね。しかも、それ全部逆手にとって、最終的に財閥潰してでも目的達成しようとする程度には過激だし。馬鹿しかいない国を手玉に取って、落としどころまでの粗筋組み立てるくらい、朝飯前なんだと思う」
「その『粗筋』に、ちゃっかり妹組み込むのも?」
「帰還に『双子の絆』が有効って分かった時点で、どうせ巻き込むならとことん、って考えたんじゃないかしら? だからって、馬鹿五人の『世話役』はハードだったけど」
明堂院家直系の血を引きながら、理不尽な理由で本家から厭われる千秋は、筋道の通らない空虚な罵倒への耐性は随一だ。実の母親から「お前は滅びを産むのよぉ! なんで生きてるの! 今すぐ死になさい!!」とメンヘラよろしく叫ばれて、耐性がつかなければ生きていられない。ちなみに千秋の中で(実は千華の中でも)彼女を『母』と思う心は、とっくの昔に消え去っている。
千秋なら、振ればカラカラ音がする頭の持ち主であっても、適当にホイホイあやして操縦できると知っていたから、千華はこの作戦におけるもっとも重要な『世話役』を任せたのだろう。
千華の立てた作戦は、魔力と信用を失い、途方に暮れた馬鹿共の心を、ひたすら、ただひたすらに折っていくものだ。しかし、魔術第一の世界から来た者たちにとって、魔術が使えなくなった段階で、既に心は折れている。それをさらに折るためには、側で程良く励まして、さり気なく折れた心を修復する存在が――『飴』が、どうしても必要なのだ。
ルヴィーアではひたすらに彼らをヨイショしていた千華が、そのまま『飴』になっては意味がない。あちらでは女神の如く讃えていた存在に踏みつけられてこそ、絶望が深くなるのだから。千華の絶対的味方で、自尊心だけやたら高い馬鹿の暴言にもめげず、そういった奴らの扱いにも馴れていて、最初から最後までつき合える、明堂院家と関わりある人物を挙げろと言われたら、残念ながら千秋自身、自分以外に思いつかない。
肩を竦めて、千秋はふわりと笑った。
「千華を散々苦しめて、兄さんをやつれさせた、誘拐及び強姦未遂犯たちを許す気はなかったし。むしろ報復の手伝いができてすっきりした」
「……割と危なかった自覚はあるか? アイツら、四面楚歌の世界でただ一人親切な君を、勘違いして囲い込もうとしてたぞ」
絶妙のタイミングで『魔王』として降臨してくれた斗真であるが、実は作戦の初期段階から、こっそり隠れて推移を見守ってくれていた。並外れた『器』と『感性』を持つ彼にとって、格下の魔法使いから自らの魔力を隠すなんて造作もないことで、彼らが探していた『魔王』は結構な頻度で同じ屋根の下にいたのである。
だからこそ。作戦の中盤以降、初期の千秋への暴言をころっと忘れ、しまいには千華に向けていた劣情を千秋に移行した、どうしようもない異世界の男たちに、彼は裏で憤っていた。
千秋はといえば、実は『血筋だけならセレブ』な設定持ちの常として、あの手の視線を向けられることはそれなりに多かったため、そこまで深刻に捉えてはいなかった。ぺろりと舌を出す。
「そこまで私鈍くないって。千華と同じ顔だからか、ああいう目で見られるのって結構あるし。――そこそこ上手に捌いてたと思うんだけど、斗真くんから見たらまだまだだった?」
「いや。気付いていないフリも、あしらい方も見事だった。……そうか、千秋にとっては日常か」
「日常ってほど頻繁でもないよ?」
「頻繁じゃないと、あんな風に自然にかわせない」
言い切って、彼は千秋を、まっすぐに見つめてきた。
……何となく、予感めいたものを感じ。千秋も、彼を見つめ返す。
「なぁ、千秋」
「うん、なに?」
「さすがに、二年間神隠しに遭って、五体満足で帰ってきた人間を、世間はそっとしといてくれなくてな。今の家は賃貸だし、この際思い切って引っ越そうか、って父さんが言ってるんだ」
「お金に余裕があるなら、それも一つの選択よね」
「父さんが事情を会社に話して転勤を申し出たところ、D市に支社があるから、そこでどうだと打診された」
「あら、ここから随分近いのね」
「必然的に、住む場所もこの近くになる。不動産屋に案内された母が一目で気に入った物件が、E町の四丁目だ」
「……小鳥遊の家も同じ番地です」
「二年行方不明だった俺は、年こそ二十歳だが、今年受験だ。今の騒がしい環境より、俺のことを誰も知らない高校で勉強した方が集中できるだろうと、丁寧な受験対策で有名なA高校を勧められたので、今編入手続きをしている。――来月、編入予定だな」
ついに千秋は言葉を失った。A高校は千秋の通う学校で、千秋も今年受験生。つまり、目の前の彼は近く、ご近所さんかつ同窓生になるのか。斗真の志望学部を聞いたことはないけれど、たまに作戦会議の流れで勉強会に突入し、お互いに苦手分野を教え合う中で、そうかけ離れた科目を習っていないことは察している。丁寧な受験対策を謳っているだけあって、高校三年のクラス分けは完全な志望学部別、そして千秋のクラスは他のクラスに比べ、二人ほど人数が少ないことも重ねて考えると。
(同窓生どころか、同級生になる可能性も高いわよね……)
千秋はそこまで知らないが、斗真のような特殊例の編入の際、編入生が学校に馴染めるよう、最大限の配慮をされるのが普通だ。斗真の事情を知った上で、普通に仲良くしている千秋がいるクラスに彼がやってくることは、もう決定事項であると言って良い。
ゆっくりと笑う斗真の瞳に、隠しきれない熱が宿る。逃げたいのに――『明堂院のお嬢さまの妹』ではなく、ただ『千秋』を求める眼差しに、縫い止められて動けない。
竜也が千華と千秋を見分けられるのは、『千華』を見ているからだ。同じように、斗真は最初に逢ったときからずっと、『千秋』を見ている。千華がイタズラで、千秋のフリをして斗真と顔を合わせた際、何の捻りもなく「俺は千秋に逢いに来たんだが?」と返されたと聞いて、うっかり胸が高鳴った。……自分の恋愛には、興味なかったはずなのに。
「……そうやって、物理的に近くなってから、ゆっくり攻略するつもりだったんだけどな」
「と、うま、く……」
「好きになった女の子が、しょっちゅう他の男から狙われてるって知っちゃ、黙ってられない」
「待って、」
準備が。心の準備が、まだできていない。大きく息を吸い込んだ。
「単に千華と同じ顔だから、粉かけられるだけよ。明堂院の系譜からは抹殺されてるって知ったら、興味なくして去っていくわ」
「確かに、千秋は千華と同じ顔だけど。――全然、まあったく、似てない」
気付けば、斗真の顔が、信じられないほど近くて。反射的に後ずさろうとした瞬間、背中に熱を感じた。――男の腕で、囲われたのだと知る。
逃げ道を塞いだ目の前の彼は、壊れものを扱うかのようにそっと、千秋の髪を撫でた。
「最初から、似てなかった。同じ顔なのにここまで似ないもんなのかって、びっくりしたよ」
「そんなこと……」
「千秋に声掛ける男が全員、千華の代替に千秋を狙ってるとは、俺は思わないけど。……仮にそうだとしても、『千秋』にそういう目を向けた野郎は、全員ライバルだ」
耳元で囁かれた言葉には、戦慄するほどの色気があった。背筋が震えたことは……そこに手を添える斗真には、しっかり伝わったことだろう。
くすりと、笑う音がする。
「な、千秋。諦めて、落ちてこい。『魔王』に目を付けられた時点で、千秋はもう、逃げられないんだから」
「ま、待っては……」
「あげられない。堂々と千秋の横に立って、『俺の』って主張する権利が、今すぐに欲しいんだ」
……ものすごく、今更な気もする。『魔王』として奴らの前に現れたとき、千秋に一瞬触れただけの魔術師を、遠慮容赦なくぶっ飛ばしたのはどこの誰だ。言葉にしていなかっただけで、斗真の態度は割とあからさまだった。
大切な片割れを、千秋の世界に戻してくれた、恩人。自分だって大変なのに、千華の『考え』に問答無用で巻き込まれた千秋を、いつも気にかけてくれた。
明堂院家の理不尽を目の当たりにしては、全力で怒って。窓際に追い詰められ、「ここから飛び降りて死ね」と言われた千秋を、危険は承知で助けてくれたこともあった。「今すぐあの女蒸発させてやる」と息巻く彼を、「これ以上魔力を無駄遣いしないで」と諫めたのも良い思い出だ。
この、半年の間に。斗真は千秋の中で、もう、かけがえのない存在になっている。
「……千秋。返事は?」
問いかける声は、甘い。本人は意識していないだろうけれど、竜也のデロ甘に「おま言う」と返される程度には甘く、耳から入るだけで溶けてしまいそうだ。
恋愛初心者の千秋には、こういうとき、返す言葉が分からない。囲われた腕の中で、そろそろと両手を上げて……斗真のシャツを、ぎゅっと掴んだ。
瞬間、背に回った斗真の腕に力が籠もる。抱きすくめられて、心臓が一つ、大きな音を立てた。
「と、斗真くん」
「――あっちに拉致られたのを赦せる日は、たぶん一生来ないけど」
吐き出すような呟きに、千秋は全てを奪われ、耳を傾ける。……聞き逃してはいけないと、本能が囁いたのかもしれない。
「帰ってきてから今日までに、受け入れることはできたんだ。……千秋と逢うために、通った道だ、って」
「斗真くん……」
「ありがとう、千秋。君がいたから、俺はこの世界に帰ってくることができた。君を好きになって、空白だったはずのこちらの二年も埋まった。――千秋に逢えたことを、どれだけ感謝したか分からない」
首を、横に振る。感謝なら。
「違うよ、斗真くん。斗真くんが、助けてくれたの。千華を連れて帰ってきて、兄さんと私を助けてくれた。……それからずっと、助けてくれてる」
「何かしたいだけだ。俺が、千秋に」
「私も、できることをしたい。斗真くんの、ために」
口にしてから、すとんと落ちた。……そうか、これが。
「……好き」
「ち、あき?」
「胸の中が、自分以外で溢れてる。……私、本当に、斗真くんのことが好きなのね」
「――!」
一瞬、息ができないほど強く、抱き締められて。ふとそれが緩んだかと思えば、顎に手がかけられ、上向かされる。
状況を把握する前に、唇に、柔らかいものが触れた。目を丸くした千秋に、斗真は苦笑する。
「不意打ちでそんなこと言われたら、我慢が利かない」
「そ、んっ」
「こんな可愛い恋人ができて、俺もう人生の運使い果たしたかな」
話しながら口づけを繰り返すとは、斗真はなかなかに器用である。千秋はいろいろ諦めて、静かに目を閉じた。
出来たてほやほやカップルは、兄姉組に勝るとも劣らない甘々な空間を作り、夕方のお勤めのため渡り廊下を歩きたい寺の住職を、密かに困らせていたのであった。
――この、数年後。
『喉元過ぎれば熱さを忘れる』を見事に体現したルヴィーア勢が女神に祈り、よりにもよって千秋がルヴィーアへと誘拐され。『魔王』がいなくなった世界で跋扈する魔物討伐を押しつけられそうになった。
万が一を考えて、一度の時空移動ができる程度の魔力を温存していた斗真は、この事態に怒り狂い。千秋を追いかけてルヴィーアへと出向き、制約のなくなったその身でガチの『魔王』として暴れ回ることになる。
異世界の人間を攫っては、好き勝手してきたルヴィーア王国がどうなったのか。お花畑女神は果たして、自省し心を入れ替えたのか?
結末はまた、別の機会に語られることであろう――。
如何でしたか?
こちらのお話につきまして、詳しい後書きは活動報告で!