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ドラゴンマスクより「僕」  作者: 美憂


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15/18

負けられない

「瑠!初戦で開始5分の初ゴール!」

かあちゃんから連絡が来た。

「イワシさんとの1対1ドリブル突破からのカットインでシュート!」

実況アナウンサーかw

なぜかドイツ語の横断幕と瑠のユニ着てるかあちゃん、笑顔で指さす瑠。

母ちゃん、誰よりもサポーターだし、僕の時は着なかったユニ着てるし・・・

まぁ、かあちゃんに向けてるんだろうけど、こちらを指さして笑う瑠は

「私は一歩、近づいたよ」って言ってるみたいだ。

おめでとう。とか、言ってる場合じゃないな。

僕も・・・やらなきゃ。


2026年、この年のW杯はキーパーが主役だった。

スーパーセーブ。

ビルドアップ。

一本のロングフィードで試合をひっくり返す。

日本代表の若い大型キーパーも世界を驚かせた。

……すごい。

でも、あそこに立ちたい。

僕が日本代表に招集されるには、ブンデスリーガであれ以上の結果を出さなきゃならない。

それもあるけど、

何より自分のやりたいプレイができなきゃ、ここに来た意味がない。

そして、瑠に負けられない。


ドイツは、正キーパー固定のクラブが多いんだ。

日本ほどカップ戦でのメンバー入れ替えもない。

つまり、練習して、練習して、出番をひたすら待つ!


僕は、練習では評価されてる…と思う。

第2キーパーはベンチに入るが、ベンチで90分を終える試合が続く。ベテランの正キーパーはサポーターの信頼も監督の信頼も抜群に得てる。

そりゃ、出番は待つしかない。

機会さえあれば。

出してくれたら、やる。

ひたすらポジティブにベンチをあっためていたら、出番は突然来た。

「明日、お前がゴールを守れ。」

監督が笑顔で言った。

僕?マジか!


チャンスだ!

でも、なんで?


「奥さんが、産気づいた。今から休みをもらうよ」ベテランキーパーは笑顔で言った。

よかった。怪我じゃなかったんだ。監督は

「代わりはいる。安心して休むといい」そう言って僕の肩をポンポンと叩いた。

そんな理由で回ってきた出番を、喜んでいいのか分からなかったけど、彼にとっても僕にとってもハッピーな理由だから

「任しといて!Viel Glück, Papa!」

「Danke.楽しめ。

いつも通りでいい。ゴールは、お前が守れ」

そう言って彼はロッカールームを出て行った。

これは、絶対勝利で、いや、無失点でゆりかごパフォーマンスしなきゃ!

彼が教えてくれたことを勝利で返したい。


自分を変える。

彼を見習う。

自分の強みを磨く。

サポーターに認められるために。

監督に認められるために。

世界と戦うために。

このために、僕はここへ来た。

翌日。

ブンデスリーガのピッチに立つ。

初めて、自分の名前がスタジアムに響いた。

練習試合の何百倍の地鳴りのような声量。


Zuki!Zuki!Zuki!

Laser!


ゴール前に立つ。

目の前には、何万人ものサポーター。

全身を包まれるような、ピッチから這い上がってくるようなサポーターの声、チームカラーが波打つ。


僕はゴールキックを打ち放つ。

まるでレーザービームのように。


ここが、僕のスタートラインだ。


「Zuki」って、ドラゴンマスクの由来「都築」と1字違いと気がついた。ドラゴンマスクは、僕にも勇気をくれるんだ。

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