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緋凰の王女〜愛する人に裏切られた王女は、幼馴染の護衛と国を取り戻す〜  作者: 杉下桃
2章〜黄魚国〜

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9.黄亀国

その後、男が運転する荷車に乗せられて、何時間も揺られていた。

明らかに人が通るように舗装されていない道を走り続け、小石が車輪に挟まっては、ガタゴトと振動が大きく伝わってくる。


「蒼天は、こんなルートがあるなんて何で知ってたの?」


ずっと不思議に思っていた。迷うことなく男の元に向かっていたことに。

なぜ、このような方法があることを知っていたのだろうか。


「ああ。一時期、裏ルートを使って不法入国してくる奴らの取り締まりに駆り出されたことがあったんだ。まさか、こんな時に役立つことになるとはな」

「へ〜〜。蒼天、そんなこともしてたんだ」

「ガキの時は、自分が役に立つんだって証明するために必死だったからな。何でもやったよ」


昔のことに蒼天が思いを馳せた時だった。

荷車がいきなり停車したのは。


「おい!着いたぞ!」


どうやら、国境を超えて黄亀国へ到着したようだ。私と蒼天は荷車から降りる。

辺りは閑散としていて、国の中心からは少し離れた場所に下されたようだった。


「向こうの方に真っ直ぐ歩いて1時間もすれば、首都に着く」

「ああ、助かった」


依頼をした時は不審な男だと思ったが、対価を払った客にはそれなりの対応を見せるようだった。


「なあ、紅髪の姉ちゃん」


男の視線が私に向けられ、蒼天が警戒の色を滲ませた。


「気をつけたほうがいいぜ。その赤髪はよく目立つ」

「……?」


そう言って、男は荷車の進行方向を変えて、赤蛇国の方へ戻って行った。

その男の言葉の意味がわからず、私は首を傾げる。それは、蒼天も同じだった。


「あいつ、一体何なんだ。陽華の髪の毛にやたらこだわるな」

「“鳳凰”」

「え?」

「いや、林峻もそう言ってたなと思って。私のこと“鳳凰の子”だって」


そして、あの男も、私の赤髪を見て“鳳凰の象徴”と言っていた。きっと、この髪の毛が高く売れることも、その“鳳凰”というものが関係しているのではないか。


“鳳凰”について、詳しく知らなければならない、そんな予感がした。


その後、私と蒼天は黄亀国の中心へ向かって歩いていると、暫くしてお店や住宅が立ち並び始め、辺りが賑やかになっていった。街には、老若男女が行き交い、皆が朗らかに笑っている。長閑でゆっくりとした時間が流れている街だった。


「この先どうするの?」

「黄亀国の王に会って、匿ってもらう」

「そんな簡単に会えるものなの?」

「わからない。でも、こっちには王女がいるんだ。どうにかなるだろう」




……その数分後。




「……え?」

「だから、お通しできません」


門番に私たちは王宮に入ることを許可されず、私たちは立ち尽くしていた。


「何でだよ!赤蛇国の王女である彼女が、あんたらの国王に謁見させてほしいって言ってんだぞ」

「そもそも赤蛇国に王女がいるなど、聞いたことありません」

「は?」

「赤蛇国の王に孫娘はいないはずです」


その門番の言葉にもしや……、と思いを馳せる。

私の存在はまだ外に知られていないのではないか。18歳になった年に外に向けてお披露目をする手筈だったのだ。他国に私の存在が知られていなくても不思議ではない。


「いや、そんなわけ……。だって実際にここにいるんだ」

「お帰りください。しつこいと、衛兵に突き出しますよ」


門番と蒼天が言い合いになっていたその時だった。


厳かな馬車が静かな音を立てながら近づいてきた。突然、衛兵が道の脇に立ち、勢いよく敬礼をする。そして、馬車が目の前で停車し、馬に乗った男が私たちを一瞥して私たちの前に立ち塞がる門番に尋ねた。


「そこで何をしている?」

「はっ!赤蛇国の王女を名乗り陛下に会おうとする怪しい者がいたので、衛兵に突き出そうとしておりました」

「お勤めご苦労」


そして、再度、馬車が再び走り出そうとしたその時だった。


「止めなさい」


馬車の中から男性の声が聞こえた。

馬に乗った男は不思議そうな顔をしながらも急停止する。

そして、馬車の扉が開き、降りてきたのは、小柄で柔和な笑みを浮かべたお爺さんだった。


そのお爺さんは私の前に立ち、顔をじっと見つめ一言呟いた。


「お嬢さん、“鏡霞”の娘かい……?」

「…………え」


私は、驚きのあまり言葉を失った。久しく聞いていなかったその名前。

それは、大好きな母の名前だった。私が、6歳の時に病で死んだ母の。


「どうして、それを……?」

「やはり、そうか。よく似ているよ、鏡霞に」


元より柔和な笑みを浮かべていた男の表情が、さらに綻んだ。

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