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婚約破棄されたはずなのに、全然自由ではありませんでした!  作者: あけはる


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第2話

その夜はほとんど眠ることができなかった。

目を閉じるたびに、あの一文が浮かぶ。


『君の安全は、すべてこちらで管理している』


 婚約は破棄したのだ、ありえない。

 そう思うのに。


 昼間の出来事が、否定を許さなかった。


 あの馬車。

 あのタイミング。


 そして――助けに現れた、騎士。

 リリアナには見覚えがあった。


 ルーカス・グラーフ。

 王都騎士団の第一部隊の副隊長だ。

 

 王太子妃教育で王宮でくらしていた期間、リリアナについていた。

 

 そのルーカスがまだリリアナの近くにいる。

 ということは・・・


「お嬢様……少し、お顔色が優れません」


 朝食の席で、マリアが心配そうに声をかけてきた。


「大丈夫よ。少し寝不足なだけ」


 マリアを心配させないようそう答えながらも、

 思考は止まらない。


 偶然か。


 それとも私は、まだ“管理されている”のか。


「・・・確かめるしかないわね。マリア」


「はい」


「今日は予定を変えるわ」


「……どちらに?」


「誰にも伝えていない場所へ行く」


 マリアの目がわずかに揺れる。

 それがどれほど異例か、彼女は理解している。


 婚約を破棄したとはいえ、この国では最も位の高い貴族令嬢である。

 勝手私的な行動はほぼ許されない。


 けれど、あえて言い切ってみる。


「私はもう、自由、でしょう?」


 少しだけ強く。


 マリアは一瞬迷ったが、静かに頭を下げた。


「……かしこまりました」


 屋敷を出てあえて人通りの少ない裏道へ。


 店も、目的地も、その場で決めてみる。

 誰にも予測できない行動。

 

「わくわくするわね」


 少し恐怖感を忘れそうになりながら、貴族街を歩く。


 何も起きない。

 視線も、気配もない。


「……やっぱり、気のせい」

 

 若者に人気なパティスリーの瀟洒なドアを開けた

 リリアナの胸に安堵が広がっていく。


 その瞬間だった。


 ――ギィンッ!!


 鋭い音。


 反射的に振り返ると

 かわいらしい文字が描かれた看板を支える金具が外れ、

 背後の石壁に突き刺さっていた。


 あと一歩踏み出していたら、頭を直撃していた。


「……っ」


 デジャブ。

 胸の奥に、嫌な感覚が蘇る。


 偶然だと思っていた。

 そう思わされていた。

 けれど今なら分かる。


 あれはすべて

 “監視されていた結果”だったのだと。


「危ないところでしたね」


 振り返るとやはりルーカス・グラーフが立っていた。


 昨日と同じように、まるで、そこにいるのが当然のように。


「……どうして」


「巡回です。王都の警備は騎士団の任務ですからね」


 穏やかな微笑み。


 だがその意味ありげな視線は、別の方向を見ていた。


 路地の奥。


 黒い外套の影が、わずかに揺れ

 そして、消えた。


 もはや疑いようがない。

 嫌でも理解してしまった。


 これは偶然じゃない。


「……失礼いたします」


 それ以上そこにいることができず、私はその場を離れた。



 屋敷に戻った瞬間、膝から力が抜けた。


「……ありえない……」


 否定したい。


 でも、もう無理だ。


 机の上に、手紙が置かれている。


 震える手で封を切る。


『だから言っただろう』


 次の一文を読んだ瞬間。


 全身が冷えた。


『君が選ぶ行動は、すべて予測可能』


『安心していい』


『最適な結果になるよう、調整しよう』


 優しさのはずなのに。

 逃げ場を奪われたような息苦しさ。


 窓の外に、気配。


「……殿下」


 王太子アルベルト・ヴァルツェンリードが。


「どうして……」


 彼は、静かに微笑んだ。


「君が非効率な選択をするからだ」


 責めるでもなく。


 ただ当然のことを告げるように。


「だが問題ない」


 一歩、近づく。


「君がどこへ行こうと」


「何を選ぼうと」


 その目は優しく。


 そして、どこまでも逃げ場がなかった。


「すべて、最適化している」


 その言葉に。


 はっきりと理解する。


 逃げられないのではない。


 最初から、“自由に選ぶこと”自体が許されていなかったのだ。

最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければご評価やブクマなど応援いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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