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魔力詰まりは万病の元 〜回復魔法で治らない「身体の重だるさ」を、不遇の鍼灸師が針一本で調律する。魔力のコリを解したら、最強の戦乙女や聖女に懐かれました〜  作者: 夜凪レン
第3章 東方刺客・霊脈編

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第26話 聖なる泉の解体。――針一本で『王の不老不死』を打ち砕く

「無駄だ、小僧! この『聖なる泉』はヤクモ殿の術式によって、王宮全体の霊脈と接続されている。貴様が何をしようと、この『不老不死の循環』を止めることはできん!」


 医師団の残党、筆頭幹部のバドスが狂ったように笑う。

 彼の背後では、エメラルドグリーンに輝く泉が、不自然なほどの魔力を放っていた。その輝きは、壁の向こうで繋がれた数十名の聖女たちの「命の灯火」を削り取って作られた、偽りの光だ。


「……不老不死、ね。あんたたちの言うそれは、ただの『他人の命の継ぎ接ぎ』だよ」


 レンは泉の縁に立ち、水面に右手をかざした。

 視界サーモグラフィに映るのは、泉を中心に蜘蛛の巣のように張り巡らされた、黒い魔力の吸引線。


「リセッテ、このシステムの『逆流耐性』は?」


「……計算しました! この術式は『吸い上げる』ことだけに特化していて、内部からの圧力……つまり『戻る力』には極めて脆いです! 一点を突けば、ドミノ倒しのように崩壊します!」


「よし。……エルフリーデ、三十秒だけこのバカ共を黙らせておいてくれ」


「了解。……十秒で済ませる」


 エルフリーデの剣が閃き、魔法を唱えようとした医師たちが次々と「峰打ち」で地面に沈む。その隙に、レンはポーチから、これまでで最も長く、しなやかな『導魔極長針』を抜き放った。


「――『還流調律リバース・チューニング』。……借りたものは、利子を付けて返してやれ」


 レンの指先が、泉の底に沈む『魔力集積核』の、わずか数ミリの隙間を射抜いた。

 

 キィィィィィィィンッ……!!

 

 耳を突き刺すような高周波が、地下室全体に響き渡る。

 レンは針を通じて、自らの黄金の気を「逆方向」に叩き込んだ。


$$ \Psi_{reverse} = \oint \frac{P_{in} \cdot \sigma}{\delta t} + \alpha \cdot \Delta G $$


($\Psi_{reverse}$:逆流魔力圧、$P_{in}$:吸引圧、$\sigma$:共鳴定数、$\Delta G$:強欲による歪み係数)


「な……な、何をした!? 泉の色が……黒く……ッ!?」


 バドスが絶叫する。

 瑞々しいエメラルドグリーンだった泉が、ドロドロとした黒色に変色し、激しく泡立ち始めた。

 レンが仕掛けたのは、魔力の「全自動返却」。

 

 吸い上げられていた聖女たちの気が、レンの針を導火線にして、本来の持ち主へと猛スピードで逆流を開始したのだ。


「――っ、ぁ……! 身体が、熱い……!」


 壁の向こうから、聖女たちの驚きの声が聞こえてくる。

 枯れ果てていた彼女たちの経絡に、純粋な気が勢いよく戻っていく。一方で、その「吸い上げ装置」の中枢を担っていた泉は、過負荷オーバーロードに耐えきれず、激しく振動を始めた。


「バカなッ! 国王陛下に捧げる不老不死の魔力がッ!!」


「陛下には、ポーションの飲み過ぎで溜まった『宿便』でもプレゼントしてやれよ。……さあ、弾けるぞ!」


 ドォォォォォォォォォォンッ!!!

 

 爆発音と共に、聖なる泉が粉々に砕け散った。

 噴き出したのは、ヤクモが仕込んだ黒い術式の残滓。それが医師団の残党たちに降り注ぎ、彼らの魔力回路を強制的に「トトノわせて(初期化して)」いく。


「ぎ、ぎゃあああああああああッ!! 魔力が、私の魔力が消えるぅぅッ!!」


 長年、他人から奪った魔力で寿命を延ばしてきたバドスたちが、一瞬にして本来の「年相応の老人」へと萎んでいく。自業自得の、医学的ざまぁ。


「……ふぅ。……これでお掃除完了だ」


 レンが針を抜くと、部屋を覆っていた重苦しい「淀み」が消え、清々しい朝のような気が流れ込んだ。

 

 倒れていた聖女たちが、次々と自力で立ち上がり、地下室へと入ってくる。

 その先頭に立つのは、セラフィナ。彼女は涙を流しながら、救い出された仲間たちを抱きしめた。


「レン様……。ありがとうございます……。本当に……」


「礼なら、彼女たちの『養生』を手伝ってやってくれ。急に気が戻ったんだ、三日はおかゆ生活だぞ」


 王宮の闇を打ち砕いた一刺し。

 だが、その崩壊の余波は、王宮の最上階……偽りの健康を享受していた国王の元へと、確実に届こうとしていた。

第26話、お読みいただきありがとうございました!

「不老不死」という甘い言葉に隠された医学的暴挙を、レンが物理的に粉砕しました。

医師団の幹部たちが、本来の「おじいちゃん」に戻ってしまうシーン、カタルシスを感じていただけたでしょうか。


聖女たちを救い出したレン。

しかし、泉が壊れたことで「不老不死」の夢を絶たれた国王が、黙っているはずもありません。

次話、激怒する国王と、レンの正々堂々たる「直接診断」が始まります。


「医師団の自業自得っぷりが最高!」

「聖女さんたちが助かって本当によかった……」

「レン先生、王様にもお灸据えちゃうの?」


と思ってくださった皆様。

ぜひ【ブックマーク】と、最高評価の【ポイント(★★★★★)】で応援をお願いします!

皆様のポイントが、レンが王様に突きつける「厳しい診断結果」の説得力になります。


次回、第27話「激怒の国王と、黄金の問診。――陛下、その健康は『偽物』です」。

王宮の最高権力者相手に、レンの針がどう立ち向かうのか。お楽しみに!

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