人類終末機関 其の陸
さてマイクを繋げてっと...…顔まで全部触手塗れだから聞こえてるかもわからないんだよなぁ。ま、いっか。
「もしもーし、聞こえてるか分からないし別にそっちの声はこっちに届かないから反応しなくていいけど、今どんな気分?」
おぉさっきまで体を捩るぐらいしかしてなかったのに、こっちの声か最後の煽りか、どちらにせよ反応して首がものすごい勢いで動いている。
「今その触手達の事調べながら見てるけど、あれなんだね...所謂めっちゃ痛いしめっちゃ痒い感じの触手割り当てられたんだねー。うけるわ」
おーめっちゃ暴れてる、まぁ拘束されてるから多分ガチャガチャ音が鳴ってるだけでそれ以上の効果はないんだろうけど。
拘束具をガチで開発してる部門もどうやら有るらしいからなうちの企業。まぁそれがこうやって活躍してるのを見るとちゃんと役立ってるんだなぁと目頭が熱くなるよ...。
「えーっとその個体の繁殖率は...あ、結構産んでるんだ、じゃあ内臓の方もかなりズタボロっぽいねぇ」
刑罰に応じて、その時研究中の触手が割り当てられるし何なら割り振ったこともあるけど、しっかり罰なんだよなぁこれ。
あとたまに安堵を浮かべるやつもいるけど、ここに来た時は必ずこれだけは伝えないといけないんだよね。
「そうそう、勘違いしてるやつもいるからちゃんと伝えておくけど...ここに収監された時点で死ねると思っちゃだめだからね?」
ビクッ...っと触手の中の奴が跳ねた気がする。まぁちゃんと自覚してもらわないと刑が生ぬるく感じるかもしれないですからね?
「うちの医療技術は優秀だよ。仮にも触手をこんだけ品種改良させたりしてる企業の奴らだからね」
処刑場での実験は正直人間には耐えれるものじゃない。ただそれを解決してしまうのがうちの医療班の凄まじい所だ。
欠損や臓器の機能停止程度なら復旧させれるとかいう化け物じみた医療技術を持っているが、どうも非合法というか安全性も何もないらしいから犯罪者相手にしか使えないそうだ。
「まぁだから生き地獄って言葉すら足りないと思うけど...精々残りの人生、ちゃんと反省して生き続けてね」
マイクを切る。どうも絶望したのか発狂したのか触手の動きが若干変化したが、特に問題なさそうなので最後に実験内容だけ選択してから他の部屋を見ることにしよう。
「んー量は今の時点で十分そうだし...繁殖力もいい塩梅だったからなぁ。触手の体格に影響出るようにしておくか」
次の繁殖時に産まれる触手が大きい個体や小さい個体が産まれやすくなるはず...まぁ大きいと産むとき滅茶苦茶辛いし、小さいと逆に産んだ後が辛いだろうけど。
「ま、それは一々教えなくていいでしょ...次のお部屋見ましょっと」
しかし何度見ても部屋が動くってのは怖いな...触手搬入だったりの管理が楽なんだってさ?
「かなり古い番号まで見たけど、この企業で余計なことした奴が定期的に混じってるの本当に笑えるわ」
研修期間にあのフロアも見るはずなんだけどなぁ…あの部屋で一生過ごすって聞いたら普通問題を起こさないよう気をつけるはずなんだが...まぁミスした程度なら一生ってことは無いだろうけど、それでも一回も入りたくはない。それなのに収監されている奴は何を考えていたんだろうか...何も考えてなかったんだろうな、きっと。
「しかし暇つぶし兼業務だから微妙に消化不良だな...どうするか」
この階で出来ることなんぞ犯罪者観察日記をつけるぐらいだが、自分が知らないうちに改良された部屋がいくつかあったからその辺は見てて面白かったな。
「んー、まぁまた暇なときに変化を見に来て楽しむぐらいでいいか」
嫌な趣味という人もいるだろうが、地味に被害者を案内したことがある俺としては大事な趣味だと思っている。
加害者だったものを、深淵でも覗くかのように瞬き一つせず見つめていた子を案内したこともあるが、帰り際にはっきりと「もっと長く苦しく、私が満足するまでお願いします」と言っていたあの子。
「どうも定期的に着てるっぽいんだよなぁ、さっきのコンソールで見た限り」
そしてあの子が来る度にその加害者部屋は改良がされている。
......ただなぁ、あそこまで改良した触手って使い道あるのかな?
「ま、そういうのは今気にすることじゃないな」
自室に戻って本でも読んでるかな、苗床ちゃん達の作業までもうちょいだし...下手に遅刻しても悪いしな。
一応今の所、この企業で収容違反的なことが起こる予定はないです。
皆頭のネジ数本飛んでるような社員達ですが、下手にふざけるとそれこそ収容される側になるのでね。




