人類終末機関 其の伍
食堂に増えたメニューはレン的には大当たりだったらしい。
味付け的にはどうもそこそこ濃い味の触手丼的なヤツって話だったが...ちょっと腹減ってきたし行くかな。
因みに触手の摘出準備は終わった。機材と収納用のケース準備するだけだしな。
「さてと、食堂何階だったかな...」
飲食は地上に近い場所で!みたいな話が昔地下暮らしが始まったばかりのころにあったらしく、いまだに企業の食堂や休憩場所が設置された階層は上の方に多いらしい。
今でこそそういう話はなくなっているけど...まぁ昔の名残ってことなんだろうな?
さっきまで居た苗床ちゃん達の居住階層には自分と蓮ぐらいしかいなかったおかげでエレベーターに乗るだけなら空いていたが、上層に近づくにつれて混んできたな…。
「あ、すいません降りまーす」
職員用のエレベーターであの混み様、自分はやはり企業住みでいいやと乗るたびに思う。
しかしまぁ食事目的で来たが、時間が若干昼時よりズレているお陰でそこそこ空いているのは有難い。
実際エレベーターで降りたの何人も居なかったしな。早い内に済ませるのもアリだが、自分は大抵遅くなるというか後回しにしがちだからな。
「さてと...例の新メニューは、っと」
あれか、いや事前に聞いてたはずだが改めてみてもいまいちピンとこないな。なんだよ「テン丼」って...確か「テンタクル丼」の略だっけか?
「まぁいいや、ひとまず「生存可能液」と「テン丼」と…いいか、後で触手取り出した時に食べるかもしれないしこれだけで」
メニューを選んで座る席を決めて、しかしいつみても簡素だよなぁこの食堂。俺は好きだけど一時期他の職員から寂しい空間って言われてたっけ?
基本的に椅子と円柱型のテーブルしかないからなここ、寂しい空間なのは全く否定できないんだよな。
「お、相変わらず料理注文から完成まで早いな?」
円柱のテーブルは、食事の配送用パイプも担っている。だから円柱の中央が開閉式になってるし飯は下からせり上がってくる。
「昔の食事資料も読んだことあるけど...これ所謂ゲテモノ料理だよな」
いやまぁ触手喰ってるこの世界でもうその認識はないんだろうけど、地上歴の資料読むたびに色々考えるんだよな...いやまぁ美味しいからいいやって思考はどうも昔と変わってないらしいけど、この国。
「あ、旨いわ...確かに濃い味だなぁ。俺結構好きだな、覚えとこ」
かなり好きな味付けだ...これはまた頼もう。そしてこうやって美味しい食事を味わう度により一層、苗床ちゃん達に感謝して仕事ができる。
いやまぁ根本的に趣味で働いてるから心の底からってあれではないけど、人波に感謝ぐらいしますとも、ええはい。
――閑話休題――
「程よく満たされた...満足だぁー」
満腹ではないが、まぁこの後食べるかもしれないし。っていうか自室戻ればある程度間食用の色々置いてあるし、大丈夫だろう。
「さぁてこの後はどうするかなぁ...準備は終わってるけど後でもう一回確認するとして、若干夕方まで暇だな?」
暇なときは大抵読書かギャンブルか食堂で食事か...もしくは業務の延長か。
最下層ではないが相当下層の階のボタンを押してエレベーターの奥で待機する。
他の乗っていた職員にチラ見されたけど、ある程度真面目に趣味として働いているお陰で役職というほどじゃないがそこそこの地位を貰っている。
だからまぁ下層に降りようとしても「あぁこの人か...」という風に思ってもらえるのは助かるね。
一通り自分以外が何かしら用事のある階層で降り、結果最後まで乗っていた俺は即ちエレベーターに乗ってた全員の中で一番下の階層に来たわけで。
「まぁ最下層ではないけど、暇なときに来るぐらいでちょうどいいしなぁここ」
エレベーターを降り、まっすぐな通路を進む。
左右に部屋はなくただ正面の扉に続いているだけの無機質な通路。
いやでもこの企業の施設大体無機質だからな、別にいつも通りだわ。はいというわけで到着ーからの開錠!
「さて処分場に新しいのは追加されたかな?」
扉を開いて目の前にあるコンソールを起動する。
特に新しい対象が増えていたりはしなかったため、一番直近でここに入れられた対象を目の前に呼び出す。しかし部屋ごと移動させるってのはコスト面ではいいのか悪いのか...まぁ俺が気にすることじゃないか?今度上司に聞いてみよ。
「えっと最後に追加された奴は...何番だっけ?」
この処分場は地上歴でいうところの刑務所に当たる、まぁ所謂犯罪者を閉じ込めておく場所ってことだ。
勿論そんなのを一企業が担っていいのか?みたいな話はたびたび出るが、その犯罪者の被害にあった人達や被害者遺族は自由にこの場所で閲覧出来る。
その人達が反対意見を出してないってことはそういうことなのだ。
「ま、死刑とか勿体ないし…昔に比べたら有情なんじゃない?知らんけどな」
やっと運ばれてきたお部屋がコンソール前のガラス面で停止する。
所謂いつ面ガラス張りの状態でこっちから一方的に見れる状態になるわけだ、犯罪者とこのガラス板一枚越しってのは異常な状態なんだろうが、ガラスの強度を知っているので特に何の感情も湧かない。
「さてマイク繋げなきゃ聞こえないだろうけど、いつみても哀れというかなんというか...いや同情はしないけどね?」
コンソール上で受刑者の犯罪歴が表示されるので同情はしない、しないがまぁこの光景を無関心で見れるほど心壊死してないのでね?
「まぁなんというか...お疲れって感じかな」
器具に固定され、全身を触手に覆われた人を見て抱いた率直な感想だ。
この部屋に今入れられている触手はどの処分品かと確認してみれば、よりにもよって「元食用個体」だった。
「食用個体の触手はなぁ...当たりはずれが激しいからなぁ?」
そう、ここは犯罪を犯した人間の処分場であり、同時に...…
用途未定の触手達の実験場なのだ。
処分場の触手君:苗床ちゃん達から産まれた触手のうちの一つ。
無事産まれたはいいものの、その後の苗床ちゃんがとても苦しんだため確認を行った際混じっていた。
現代でいう山芋とかそういう成分を常に表面から分泌しているタイプ。
味は悪くない、というか酒とかとかなり相性はいいが、現状毒素の方が強いため、処分場で品種改良と実験を繰り返している。
え、受刑者ですか?分娩台型の拘束具で動けない状態で全身(内臓を含む)余す所無くこの触手に這いずられているしちゃんと繁殖にも貢献している。産む度痛いしかゆいしで地獄だけど研究員からしたらそんなの知ったこっちゃない




