人類終末機関 其の肆
このお話は不定期です。
思いついたり書きたくなったら一気に書きます。
触手が食用に出来ると発見した者は、すぐ次の思考に移った。
"どうすれば安定して増やせるのか?"と。
答えは、その触手を発見し、管理していた企業の職員が寄生されたときにすぐ理解した。
「寄生させて産ませるって、今でこそ常識みたいに言ってるけど割と狂ってるよなぁ...」
「そんなに、変な事なんですか?」
大体苗床の子達の検査が半分ほど終わったところで、今まさに確認中の子から聞き返されてしまった。
いやまぁ独り言感覚で喋りながら作業してた俺が悪いですね、はい。
「変...というより、まぁ同じ人間同士で役割を分けるって発想が狂気だよなぁって思うんだよね」
「狂気...ですか」
そう、狂気。いきなり地下で暮らさなければいけなくなり、あまつさえ食料の事もある状況。
そりゃ集団パニックになったって誰も文句は言えない状況だ。
ただそんな状況でも冷静に「この触手食用に出来るぞ!」とか「雌の個体に寄生したら繁殖するぞ!」なんて発想になる連中を採用している企業だ。
俺も含めて皆若干イカれてるのさ。
「よし、異常なしだな...そしたら今日寝る前に摘出して終わりだな」
「そっかぁ、ちょっと寂しいかも?」
「いや腹の中に触手がいる状況に慣れすぎだろ...でも一年も一緒に居れば愛着も湧くか?」
「そうなのかな...でも美味しいの知ってるから出てきたら食べたいかも?」
日本人のDNAに"ゲテモノ食い"って項目が記載されてるのでは?と、割と真剣に悩むことになってしまった。一年間自分の体の中で共に育った触手に愛着が湧くのはギリギリ分かるとして、それを取り出した後食べたいって発想はやはり狂気なのでは?
「いやまぁ本人の自由と言えばそれまでか、べつに俺は関係ないしな…明日の朝ごはんに出来るか確認してみるよ」
「私は食べたいなぁ」
「わ、私はいい...でも取り出したら見てみたいかも」
「その辺は今日の夜摘出後に決めるから、ゆっくり考えといてくれ...別にわざわざ食べる必要もないからな」
「「「はーい」」」
まぁ触手は基本、宿主に痛みとかは与えない。自分が寄生している相手である以上、余計なことをして大変な目に合うのは触手側だからな。
ただ勿論体格だったりで最初のころ苦労した苗床ちゃんはある程度いた...恨みがある子も何度か見たことがある。
「自分の手でどうにかしたいって話はまぁ...何年かに一回はあるからな、各々どうした以下は考えていいぞー。ある程度なら許可取ってきてやる」
全員の検査も終わったので、各々がベッドから降りて他の子達と話をし始めた。
邪魔な機会は全て床下にさっさと沈めて、夜になるまで自由に過ごしてもらう。
「んー特におかしな個体は居なかったし、動きもいつも通り...どの個体もすでに食用に出来る時期は若干過ぎてるけどまぁ食べれなくはないな」
もし食べたい子がいる場合は許可を出せそうだ。味付けは醤油がおすすめだが、一応各種調味料は用意しておくか。
ただ、健康な触手は来年も利用可能だし、育ちすぎている個体も別用途で利用可能だからなぁ、全部が全部処分ってなったら......まぁいいか、多分何とかなるだろ。
「一年頑張った子達のお願いぐらい簡単に叶えないとな?」
「随分優男な発言ですねぇ先輩?」
「おぉレンか、いや優男っていうかごく普通の発言だろ?」
苗床ちゃんたちは我々人類の食糧問題の鍵だからな、あと普通に一年頑張ったご褒美って割と誰だってあげたくなるじゃん?
「まぁそれはそうかもしれないですけど、先輩が担当に変わるまでは割と使い捨て的な考え方だったらしいじゃないですか?」
「効率的、と言えば聞こえはいいけどな...あれは結果的に滅びていく動きだったからなぁ」
自分の前任者、ってほどでもないが前に苗床ちゃん達を管轄していた奴はどうも、同じ人間であるという基本を忘れた働き方をしていたらしい。
まぁすぐ本部の人間にバレて解任、次の担当として俺に白羽の矢が刺さったわけだが。
「そういえば、解任された前の人って誰でしたっけ?」
「忘れた、名前どころか顔も声も朧げにしか思い出せんわ...ただその後どうなったかは知ってる」
「え、その後って...別部署移動とかじゃないんですか?」
「さっきの研修担当じゃねぇんだぞ、そんな生ぬるい処罰な訳ないだろ?」
「減給と仕事増加と左遷ってまぁまぁ重めじゃないっすか?」
それは一般企業の話だろう、ここをどこだと思ってるんだ...「国家培養触手機関」だぞ?
「触手は雌の個体に寄生する、現在の常識だよな?」
「現在のっていうか、現代までの変わらずの常識っすね」
「雄に寄生させれないのかって苦情も勿論あったんだよ、歴史の中で」
「まぁそれはそうでしょうけど、最近は無くなったんですっけ?」
無くなったわけじゃないんだよなぁ?
「寧ろ雄、それも人の男性に寄生させる技術の確立に動いてるぞ、うちの企業」
「ゔぇ!?マジっすか...それって俺たちも対象だったりしないですよね?」
「なにその最悪の健康診断みたいな発想...話の流れで対象者が誰か分かるだろ」
「え?...…...もしかして?」
「まぁ基本は罪人らしいけど、うちの企業の秩序を乱す奴も対象らしいから、せいぜい気をつけろよー?」
「軽く言うことじゃないでしょ先輩!?」
軽く言うことだよ、だって他人が触手に寄生されてもどうでもいいじゃん?
例え身内でも罪を犯したりした奴とか、それこそ触手に寄生される瞬間の担当になってもいいぐらいだわ。間近で見て爆笑しながら作業してやるわ。
「レン、お前がもし対象に選ばれるようなことやらかしたらすぐ教えてくれ。お前の寄生作業は俺が担当してやるからな!」
「うっわ嬉しくねーその満面の笑み」
ははは、喜んでくれていいぞ?素敵な先輩と後輩のコミュニケーションじゃないか!
相手の不幸を全力で笑い飛ばせる間柄とも言うがな。
「あ、因みに寄生箇所の臓器選べるらしいぞ?」
「いらんっすよそんなゴミみたいな情報...なんかもっと有意義な話とかないですか?」
「苗床ちゃんたちは明日で解放」
「次の子達が入ってくるだけでしょ、でもまぁいい事だから60点ですかね」
「この間ニュースになってた犯罪者の触手刑を執行するの俺ー」
「どこが有意義な話?でも普通に後日談気になるんであとで教えてくださいっす。あと興味惹かれたから75点」
「んー、あぁそういえば食堂に新しいメニュー増えるってさ」
「100点っすね、行ってきます!」
「美味かったら教えてくれー」
既に食堂に向かう後ろ姿に声をかけつつ、夜の苗床ちゃんたちからの触手摘出の準備を進める。
処分場:食用に不向きであったり、過剰成長した触手達の研究場。
ただ頭のネジが数十本単位で消失した職員しか居ないため、基本的に研究内容がぶっ飛んでる。
その一つとして、余計なことやらかした奴(面倒事を起こした職員や、外の犯罪者等)をモルモット以下の扱いで利用する。
性別がどちらにせよ娯楽感覚で消耗されるため、研究自体の進みはかなり良好。
因みに犯罪者の処分の際に録画を行っており、被害者から要望があればいつでも閲覧できるようにしている。国家公認の残虐正当防衛。




