74 シェスの心情・異世界からの来訪者
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私は失意の中で、一人の小さな友人と出会うことができました。
驚いたのはその子は9歳のハーフリングの女の子で、冒険者。しかも最高位ミスリルランクの冒険者だったのです。
そんな話は今まで聞いた事もありませんが。
最初に出逢った場所はギルド会館。
対面のとき態度や口調でとても早熟な子だと感じました。
そして色々と質問をされたのですが、直後に私の人柄を見極めるための問いだと知って、年齢にそぐわぬおませさんだなあ、とも感じました。
こうしてコロンポルまでの運搬と護衛を引き受けて頂いたのです。
一緒に旅を始めて夜に野営をすることになると、ウルさんは私だけが入れるテントを手際よくこしらえてくれました。体を晒した状態では、よく眠れないだろうという配慮からでした。
振る舞いのすべてがとても落ちついていて、人の噂に聞いた通りに相手を和ませ、安心させる上級冒険者のそれでした。
でも焚き火の前で話しているうち、少しずつ大人びた様子は消えてゆき、9歳という歳相応な口ぶりになっていったのです。
ウォルフェさんは時どきとっても甘えんぼな顔を覗かせました。
(きっと、これがあなたの本質なのですね)
そう思ってこの子の事をもっとよく知りたいなと考え会話を重ねるうち、昼頃のやりとりの流れである疑問がわいたことで、尋ねたのです。
「……ウルさんは現在は9歳なんでしたよね? 赤ん坊のころに故郷がドラゴンに焼き払われて孤児院へいらしてから其処を出られた。
その後は幾つの頃からどこで魔導を学び始めて術を修めて、どれくらいの期間でミスリル級ランクの冒険者にまでなられたのですか?」
ウルさんからの返事はなく、会話が途切れてしまいました。
(これは、間違えてしまいましたか!)そう思って話題を変えようとした時、返答があったのです。
『シェス。その件についてだが、夜の食事が済んだあとじっくり説明したいんだ』
最初の頃の大人びた口調に戻って――――
それはごまかしの無い、大切な決意のもとでの告白があると私に予感させました。
こうしてその晩に明かされたのは、ウルさんの奥底にあるもうひとつの
〝人格〟
…………『心』についてだったのです。
本当に不思議で、驚くべきいきさつが語られました。
ウルさんの中に居るもう一人の方の名前はノル・ホタカミといい、しかも異世界エルデランから訪れた狩人だというのです。
事情があってすぐに帰れないと知ったホタカミさんは、この世界で冒険者申請をしました。
むこうの世界から持ってきた魔道具を使って仕事を始めると、数件の依頼ごとにランクを上げて〝ドラゴンスレイヤー〟と呼ばれる程になりました。
ミスリル級になるまでに、そう時間は掛からなかったとか。
二人が出会ったのはウルさんが孤児院を抜け出してから十一日目。
行き倒れていたホタカミさんを見つけ、魔導具を譲られたのが全ての始まりだったそうです。
「師匠の意識が出てるときと普段のボクでは、急に態度が変わったりするけど怖がらないで。ホタカはなるべく表面に出ない様にすると、言ってくれてるし」
「そのお話が本当なら、むしろホタカミさんの声を直接聞かせて貰えませんか? ウルさんにとっては保護者と言ってよい方なのでしょう?」
会話の途中で様子が変わるなんて、私にとっては最初から瑣末なことでしたし、全然気になりませんでした。だから安心して全部さらけ出して欲しいと思ったのです。
私たちの住む〔アストラン〕と、対をなして創造されたという異世界
〔エルデラン〕。
その存在を疑ったことはありません。
アストラ修道会にだけ伝えられる、外典に記されたもうひとつの世界からやって来たと称する方との対話。異世界の同胞と話す機会を得られるのであれば、幸運なことですから。
こうして私の前に立ったウルさんの顔つきと雰囲気が変化して、その人は現れました。
――『申し訳ないシェス。本来なら最初に説明するべき事だが、避けてしまっていた』
――「いいえ。私はおっちょこちょいな上に空気を読むのが苦手で、周りの調子を乱してしまうようです。だから今回も他への移動を指示されて旅をしています。でもホタカミさんは、こんな私のあるがままを受け入れてくださったのでしょう? だから真実を明かしてくれたのではありませんか」
――『ホタカで構わないよシェス。……それを言うなら君の方こそだ。口調と態度の変化は明らかだったのに、気にするそぶりも見せずウルと接してくれていた。俺は心の内で手を合わせ感謝していたんだよ』
これまでの印象通りで親切な方。思わず口をついて――――
「お二人に出会えたことを、創造主に感謝いたします」
「 ありがとう、シェス! 」
歓喜の抱擁。その時ウォルフェさんは、そっと囁きました。
「いまはもうボクだから。おっさんは奥へ引っ込んだから、安心して」
「私は気にしません。どちらでもウルさんには違いないですもの」
ウォルフェさんだけでなく、私にとっても幸運な出会いをしたと感じました。
そのホタカさん……力になりたかったウルさんに対しても機嫌を損なうような詮索をしてしまった。
冒険者の方たちが仕事上で扱う道具については、秘密に係わることが多くてあれこれ訊ねるのは良くない。と分ってはいたのですが、全部を打ち明けられた事で気安さが生まれてつい好奇心が抑えられなくなっていたのです。
冒険者のお二人の役に立てる方法が、私にもあるのではと考えてしまって………………
私が持っているのはごく小さな神威魔法によるヒールと、もうひとつは支援魔法《誘導》ですが、どちらかと言えばこれの方が強いです。弓矢などが確実に標的へ向かうように誘う効果があります。
もしウルさんが持っている火花杖が私の想像した通り、とても早く何かが飛び出して当てる魔導具であれば、同じように支援ができるかも知れない――――――――
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