75 ちょっと待て!? ミーティング直後の聞き流せぬ言説
シェスのお話も舞台をアストランのみに絞り、地上へ降りた肉の子らがどんな風に子孫を増やして、どう分布していったかの説明へと移行している。
……この様にして地上に降りた子らはどんどん肉の子孫を増やして行き、親子となる契約が履行されることで、さらに加速していきました。
それに従い、多くの子らが足を止め伸び悩み、あるいは道を踏み外す子も出てきます。
記憶を失うことの厳しい一面でした。
でもその中で、著しい進捗をみせる子も現れました。
その子らは、地上に降りて間もない若年の身ぎりから忘れていた過去を思い出し、父の教えを周囲に語り伝えた上で、すんなりと元いた天界へ帰って来る。それを幾度か繰り返しました。
神はその様をご覧になり、言われました。
「お前たちには、もはや修行の旅が必要ないと見える。これ以後は、私の傍にあって仕事を手伝うようにしなさい」
(もしかして――これが〔〝天使〟〕の誕生ってやつか?)
一部の信仰エリートの出現が、天界に残された子らへも変化を与えたらしく、
その推移の説明に入るみたいだ。
俺は次第に眠気を催すウルの寝落ちが迫るのを見越して、あらかじめ了解して貰いたい事を伝えておく。
(『ウル。実は相談したい事があるんだけど』)
(「……なあに?」)
(『ビクセン郡へ入ったらシエルレオナのギルドに寄るが、今回はミスリル製のゴルゲットを敢えて封印して、新人冒険者としてレッド(鉛)級から始めないか』)
(「ええっ……どうして?」)
(『どうもコレ、注目のほか余計なトラブルを引き寄せるじゃん。
実際コロンポルでは他の冒険者たちの嫉妬を買って、実力を試される破目なったろ。目立たない様にした方が良い気がするんだよね』)
(「でもさ、周りのヒトが小さい体を見てむしろ恐怖を覚えるようにするとか、同じ小人族冒険者たちを励ませるような強い存在を目指す――……とか言ってなかった?」)
(『それはそうだが。相手が絡んで来たのなら仕方ないけど、こっちから積極的に目立って挑発する必要もないかなと思えてきたんだよ。キミの安全を考えると』)
(「そうするとして……シエルレオナのギルドへ行って、試験を受けてから新人として冒険者登録するの?」)
(『いいや。新人は鉛級から始めるから登録のみで、例えばプロ試験みたいなものは無いんだ。仕事も危険度ゼロの雑仕事だけだからね』)
(「うう~ん……すると、まずはドブ掃除とか草むしりから…………」)
(『いやいや。これは飽くまでも鉛製のゴルゲットを手に入れるための方便さ。ギルド内の雰囲気を知るまでの、仮の等級ってこと。空気のいいギルドと確認できて、気心の知れそうな奴がいたなら本当の等級を明かしても大丈夫だろ』)
(「偵察して、そこにいる冒険者たちをテストするの?」)
(『ああギルド職員も含めてね。低いランクの者に、一体どういう態度で接して来るものかね? …………見えるんだよ。ヒトの本心が』)
(「それならさ、ギルドマスターだけには前もって明かしておいた方がいいよ。コロンポルで貰った資格認定書を見せてさ」)
(『うん、そうか……そうだよウル。キミって天才か? せっかく頂いた認定書だもんな。事前にギルド長の了解を得て抱き込んでおいた方が、後のトラブルの心配も要らないだろうし。……
どうも俺は、そのあたりにいま一つ大雑把なところがあってイカン』)
(「じゃあ……方針決定ね……」)
ふう。やっと今後の方針をウルとすり合わせる事ができた。
シェスによる世界開始の物語りは、依然と静かな口調で子守唄がわりに紡がれ続けている。
――神が子らに自由意思を与えたことで、弊害も明らかになりました。
よりによって自らの傍で働くように選りすぐられ、破格の恩寵を受けた子らの中から、反抗する者たちが現れたのです。
そのため父なる創造主に忠実な子らとの間で、戦争になりました。
結果は然るべく神軍の勝利に終わりました。
敗北した反逆者はことごとく天界から放り出されて、それらの者たちはいずれも《エルデラン》の方向へ落っこちていきました。
( ちょーーーーーっ、シェス! 今さらっと頓でもないこと言ったよね?! 投げ落された連中って、ひょっとしなくても【〝ルシファーと愉快な仲間たち〟】の事だよな!? )
…………今宵は、ここまでに致しましょうか。
「うん。…………おやすみなさいシェス…………」
「 おやすみなさい。ウォルフェさん 」
( なあっ! ……………………オイオイ。…………………………………… )




