62 胸と勇者とパーティーメンバー
「幸運をつかんだ少年はその後、家業の手伝いをしながら教養を与えられる一方、ある程度の剣術も修め文武両道の立派な若者へと成長した」
「商人なのに? 剣術も習ったんだ」
「まあ商品の運搬に付き添った時なんか。野盗の襲撃が一番恐ろしいからね」
「ああ……そうか。そうだよね」
「彼に剣術を教えた師匠は没落貴族の令嬢で、元国家騎士団所属だった冒険者
マルローネ・ド・イゼルホーク」
――今度は俺が〝ドキン〟とした。ウルの方にも、モロバレだったらしい。
「ねえねえバシュックさん! その女師匠って、胸は大きかったんだろうか!?」
(『 そんなこと関係ないじゃん! なに訊いてるのかね、キミはっ 』)
「ああ。大きかったかもね(苦笑い)。伝わってるのは確実に美人で魅力的な女性だったってこと……年上だけど、彼女も若かったからラルフの初恋の相手だとか、恋仲だったことにして吟じたりする同業者もいるくらいさ」
「師匠と弟子だったこと以外はハッキリわかってないんだ?」
「うん。だけど英雄譚には恋愛絡みの要素が欠かせないし、どうしても憶測が入り込むね」
(まいったな。…………この勇者はウルだけじゃなく、俺とも共通するバックグラウンドを持ってやがる。まるで二人の陰画を見せつけられてる気分だ)
「このままであれば平凡だが幸福に歩めたであろう彼の人生を、一変させた出来事が起きる。……そう、魔王の出現と教会からの召喚だ。彼に天命が降ったわけだ」
――〝 まさに地湧のひと。低きより高められ、遂に聖杯(教会)へ到る。
穢土への路を今こそ清め、他年ベルクを鎮(圧)せん 〟――――
「最初こそ戸惑いを見せたラルフだが、そこは定められた救済者。やがて神によって選ばれた者としての自覚を持つに至った。大魔導師ネスキヲラと神官ノイマンを随行者として伴ない、遠征を開始する。この二名が最初のパーティーメンバーとなった」
「次のメンバーは? バシュックさん!」
「あわてないで。順繰りに話してゆくから」
このあとは次々と遠征先の国・街・村で遭遇する魔王軍尖兵のモンスターや、魔物を撃退しつつ駒を進めていきその都度、仲間となる者たちと出会う場面が続いた。
一人ひとりの名前を挙げ、種族や性別(男性ばかりだったらしい)・性格、特技などを紹介するんだが、この部分は俺には長くて憶え切れん。帳面に書き付けて、相関図を作成する必要があるな。ウルは興味深そうにずっと聞き入っている。
偉い集中力だ。
自分が関心を持っている分野については、一度聞いただけで記憶してしまう。
若い好奇心って、本当に素晴らしいなぁ。
但し。
どうも中には反社組織の元メンバーや仇持ちなどもいて、彼らパーティーメンバー達全員が清廉潔白な者たちの集団というわけでも無かったようだ。
――〝 エルフの神弓三名、ドワーフの匠・斧使い二名、魔導師三名、内ヒューマン(2)及びパンサー・ヘッド(獣人1)
神官二名ヒューマン、僧侶一名リザードマン、魔法剣士一名ヒューマン、
盗賊一名ヒューマン、戦士二名ヒューマン、黥夫(刺青者)一名ヒューマン。……
そして勇者ラルフ・ファンスロットが一名。ヒューマンの面々なり。 〟
――――
「……以上。これらのパーティーメンバーたちは、いずれもラルフの人柄に触れているうちに友人となり、あるいは信服し、またある者は改心して付き従うことになった者達が占めた。
パーティーメンバー達もラルフを筆頭に十七名までなったこの頃には、誰も彼らを単なる勇者一行とは呼ばず〝あかつき戦闘旅団〟と称するようになっていた」
「どうして《あかつき戦闘旅団》なの? バシュックさん」
若者はウルの質問に鼻白んで(う~ん)と、少し気まずそうな口調で答えた。
「それがねぇ……私が調べた限りどうも当時、実際にはこんな呼ばれ方はしてなくて、我らが先輩吟遊詩人の誰かが、楽器の弾き語り中に創作した名称らしい。
たぶん勇者が起す神威の大開放時に発生する現象《全方位の暁》からとったんじゃないかな。これについては、後の話に詳しく出てくるから」
――〝 遂に時は来たれり
黒雲を切り裂く尖剣の烈光と化し、空と陸から突き進む共連れ。
あれこそが、暁の戦闘団十七聖騎士。
魔王配下の魔獣の群れを、怒涛の如くに覆す。
帯剣ゴットライト・ソードをば引き抜き、勇者ラルフ、主怪の面前へ入れり 〟
――――
「魔王の膝元へ。その域内まで達した時の、勇者メンバーの戦法は大体決まっている。
敵方は本陣を要に大群でもって勇者たちを包囲して前後左右に頭上からも襲い掛かって袋叩きにしようとするんだけど、最初から少数のパーティー一行は中央突破して本陣への道を切り開き、何としても勇者を魔王の前に押し出そうとする。
この時も黄金の翼を以って飛行する勇者に襲い掛かる怪鳥の群れを、地上から弓と支援魔法で打ち落として血路を開く事に成功した。
剣士や斧使い、他のメンバー達もあらゆる方向から押し寄せる魔物を斬りまくって、血路を開く」




