60 現勇者と先代勇者の関連って?
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(これは。……この若者〝ウルに対する100の質問〟みたいなものを、事前に準備してたような感じだ。
本当に仕事熱心な男だ。
まあここで会ったが百年目ってところなんだろう。
さっきの『好きな色は?』なんて問いでは咄嗟に『白と赤』って答えちまったが心理テストかよ? だがそれなら『回答拒否』の質問に対しても、答えられないコトが回答になっている可能性があるな)
バークが心理学的なものを念頭に置いているなら、図形を示してきて『何に見えますか?』などと訊いてきたらもう確定だ。
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「……はい。此方の質問は以上です。長時間ありがとうございました」
満足したらしい吟遊詩人が告げて取材を切り上げ、頭を下げるのを見た途端だった。
「 それじゃさ、いよいよボクが聞いちゃう番だね!? 」
「あっ……ははい」
(『ほれ、お嬢さん! また喰って掛からん勢いで。かなり近くへ寄り過ぎてるから!』)
「それからね、これからはボクの呼び名『ウル』って。呼び捨てでいいから」
「ええ?! それは……」
(『なに!? ウルよ。彼のコト、そこまで気に入っちゃったのか?』)
「もうトモダチだから。近しい呼び方でいいの」
「では……私のことは〝バーク〟とでも呼んで頂ければ」
「でも年上でしょう? バシュックさんの方がよくない?」
ウルは内心で俺に確かめる。
(「ねっ師匠。〝チョーヨーノジョ〟って言うんでしょ?」)
(『長幼の序ね。でもキミは上級冒険者だろう。長ったらしい名前を呼ぶのも面倒だから、彼自身が良いと言うなら構わんのじゃないか?』)
「解かりました」
俺たちが内心で話し終えると同時、彼はさっそく呼び名を変えて返答した。
「ウルが呼びやすい方でお願いするとしましょう」
そう応じた直後、彼は小型のハープを取り出し、弦を撫でるような仕草で静かに奏でだした。
持ち運びに便利なので吟遊詩人たちが好んで使用する、文字通りの膝ハープだ。
「ウル。あなたは知っていますか? ……現在の勇者セシル・メサイアの事を理解したいのであれば、前提として先代勇者ラルフ・ファンスロットの身に起きた悲劇についても、記憶しておいた方がより有益だってことを」
「先代勇者のラルフ? 悲劇?」
「セシル・メサイアの先代にあたる勇者、ラルフ・ファンスロットは歴代勇者中で最も悲劇的な英雄として知られていて、私たち吟遊詩人や詩作者たちにとって今や欠くべからざるテーマになっているんです」
(90年前の勇者か……俺も詳しくは知らないが)
「そもそもなぜ勇者セシルが特に、現在ほどの脚光を浴びている理由は何でしょう?」
「初めての女勇者だからじゃないの? まだ子供だし。それに魔王が現れたのだって90年ぶりだから、騒がれるのは当然じゃない?」
「そうだね。世界の運命がかかった一大イベントだから…………」
(現在の勇者・セシルは教会からの召喚時は十歳、出征時十四歳。今は十七歳だったよな)
吟遊詩人はやや曲の旋律をあげた。
「たしかにどの時代でも大騒ぎだったろうし、全ヒト種の希望である勇者が種族を問わずに期待と注目を集めるのは当然なんだ。それでも今の勇者が人々の注目を引いて――……というよりもむしろ心配され、今後を不安視されているのは、先代勇者の結末があったからなんだ」
(俺のもれ聴いた風聞を総合するに、確か魔王と刺し違える形で亡くなったんだっけ?)
「それって、まさか魔王の討伐に失敗して、返り討ちにあったとかじゃないよね?」
「魔王は倒したし、彼は生き残ったんだ。でも、その後がね………………最悪だった」
(ほう。死んだ訳じゃ無かったのか)
俺もこの際、一般教養的なものとして憶えておくか。
「結論から言うと、彼の勇者パーティー16名が死亡し、17人目の本人も当初は犠牲者に含まれると思われていたのが変わり果てた姿で発見され、生還したというのが顛末なんだ」
――〝 ああ何ということ! こんな悲劇的な結末は、かつて聞いたことも無し。
運命の過ちか 逢魔ガ刻か。
神よ、あなたは真に我らの神親、創造主なのですか?!
英雄たちの末路がこれでは間尺に合わぬ。
臨在たる神よ、勇者を憐れみ今一度、奇蹟の力をお示し給われんことを 〟
――――
一仕切り謡った若者は再び曲のテンポを落として語りだす。




