54 つぶやき * 思わず、ボクは打ち明けた!
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ヒトづきあいが苦手という師匠が、人をほめるのは珍しい。
よく考えてみればシェスは胸こそ小さいけれど、セーソでケガレなくて、ふんわりしていて笑うと可愛くて心の優しい女の人だから、やっぱり長く話てしているうちに師匠のすとらいくぞーんも動いたりしかねないので、注意が必要だなぁと思う。
シェスと一緒に旅を始めてから、特に夜を迎えて食事をすませ眠りにつくまでの間は、よく話しをするようになって、ボクはひとつヘマをした。
一日目の晩は師匠が表面に出て、少し難しい会話をしながらお互いの考え方とか思いとかを打ち明けて、共感する部分が多いのを知って喜びを分かち合ったりして、眠りについた。
二日目からはボクも会話に加わって、シェスも自分の経験したことや身の上話しをしてくれて、そのうち神官に選ばれてからの色々な戸惑いや、苦労した内心を聞かせてくれた。
夜も三日目ともなると、修道女として働き始めた頃のシェスの様子を知りたくて、もっぱらボクが質問責めにした
そういう話に耳を傾けているうち、ボクはスコウネの孤児院にいる友だちを思い出した。
神官のシェスだって最初は修道女として働き始めてヒトへの奉仕を誓った。
なのに、こんなに優しそうなヒトの仲間がどうしてボクの友だちを…………孤児院の子どもを殴ったりひどく扱ったのかが信じられなくなって、自分がそこに住んでいたこと。どんなことがあったのかも含めて、もう無我夢中になって、ぜんぶ話してしまった。
最初ホタカはまずいと感じたらしくて、止めようとした。
けど、ボクは打ち明け話をやめなかった。
途中までくると、師匠も黙って成り行きを見守ることに決めたらしい。
いったん口を開くと、言いたいことが次々に浮かんできて、ずいぶん長々と一方的にしゃべり続けたろうと思う。シェスはじっとボクの目を見て、黙ったまま訴えに聴き入っていた。
ボクは思いのたけを全部吐き出したあと、胸がいっぱいになっていた。
目が滲んで言葉につまっているとシェスは
「……大変な目にあっていらしたんですね……」といってから、自身も言葉をつまらせていた。
それからなぜ教会施設がそんな事態に陥ってしまったのかについてを、知りうる範囲で推し測って説明してくれた。
やったこともない大勢の子どもたちの世話を無理にさせられていたのではというものだったけど、最後には
「どんな理由があったとしても、子供たちへのむごい仕打ちは正当化できません」――顔を覆ってすすりをあげていた。
ボクが堪らなくなって抱きつくと、シェスも抱きとめてくれて、一緒に泣いた。
(「師匠ゴメン。少しの間二人だけにして」)
(『しばらくは奥へ引っ込んでいる事にするよ』)
その晩ボクはシェスと初めて寄り添って寝た。しばらくは話していたんだけど、泣き疲れていたのか、ボクはそのまま眠ってしまっていた。だから翌朝になって起きたときは焦った。
もし野盗や危険な獣にでも襲撃されてたら、どうなっていたかって。シェスだっていたのに。
(『大丈夫だよウル。以前にも言ったろ。キミが寝落ちした時は、代わって俺が必ず周囲を警戒してるから。心配ご無用だ』)
ホタカ師匠は力強く言って、ボクを励ましてくれた。
この日以来、ボクはシェスを家族みたいに思うようになった。
『やっぱり彼女は心豊かで、聡明な人の様だ』と師匠は言う。
『憐れんで同情を示すのとは違う。キミと共鳴したんだよ』とも言った。
この二つはぜんぜん別もので『気持ちを分かち合ったんだな』と解説してくれた。その辺の違いはよく分らないけど、シェスが心の温かい優しい人なのは変わりなく、ボクは大好きだ。
でもじっさいヘマをしたと気付いたは、このあと。
昨日に引き続き、ドードーの背にシェスを乗せての楽しい会話中。
昼すぎくらのあたりになってから、ふいにシェスが訊いてきた。
「……ウルさんは現在は9歳なんでしたよね? 赤ん坊のころに故郷がドラゴンに焼き払われて孤児院へいらしてから其処を出られた。その後は幾つの頃からどこで魔導を学び始めて術を修めて、どれくらいの期間でミスリル級ランクの冒険者にまでなられたのですか?」
「あっ」(『 いっ 』)
(ヤバッ)
……これじゃあ、脱走したあと一瞬にして上級冒険者に変身したみたいじゃん!
(「師匠、どうしよう?!」)
(『慌てるなウル。…………どうだろう。下手な設定を盛るより、シェスになら本当の経緯を話しても良いんじゃないかね?』)
(「えっ……でも、いいの? ……大丈夫かなあ」)
(『今まで会話する中でキミの口調や態度が入れ替わる事にも彼女は気付いているだろう。シェスは聡明な女性だし、頼めば秘密は守ってくれると俺は信じている』)
(「それはそうだと思うけど」)
(『ヨシ』)――ホタカは言ってから切り出した。
『シェス。その件についてだが、夜の食事が済んだあとじっくり説明したいんだ』
こうして四日目の晩。
ボクらはシェスに、二人でひとりになるまでの事情を打ち明けた。
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