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顔だけ男は眠り姫の呪いをかけられる  作者: 里和ささみ


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65/90

お姫様のかたち、王子様の温もり

イチャイチャ回です。

よろしくお願いします。

正午。


支店へ戻る日が近付いたからか、書類を捌くのに思ったより時間がかかり、エリオットはようやく店を出た。マイクとサムも今日は内勤だが、ゆっくりしてきていいぞ、と笑顔で言われてしまった。お言葉に甘えて、ゆっくりするつもりだ。二人には感謝しかなかった。


アパートメントの正面玄関からではなく、庭の方にあるジョンの家の玄関の方へ向かう。庭ではスケッチをするレベッカと、椅子に掛けて茶を啜っているジョンがいた。


「こんにちは、お待たせしました。」


「おお、いらっしゃい。」


「遅かったわね。」


「仕事に手間取っちゃって。ゴメン。」


「はは、懐かしい会話だな。わたしも妻と同じような会話をしたよ。お帰りなさいと迎えてくれればいいものを、と思ったものだ。」


二人は同時にジョンを見て、その後すぐに顔を見合わせ、苦笑した。


「お帰りなさい?エリオット。」


「ただいま、レベッカ。」


「そうそう、夫婦はそうでなくてはね。さ、食事にしよう。」


食事は既に配膳されていた。今日は庭で食べるらしい。


「もうコソコソとする必要もなかろう。」


そうかもしれないが、エリオットは少し気恥ずかしかった。


食事をしながらジョンに差し当たりの報告をすると、とても喜んでくれた。結婚式には是非呼んでくれと言うので、二人はしきりに照れてしまった。


いつも通りジョンに片付けを断られ、管理人室を通ってアパートメントの正面玄関に出た。二人はどちらともなく手をつなぎ、初めて階段を並んで登った。


部屋へ入れば、すぐに抱きしめ合い、口付けを交わす。


「今日は何時までいられるの?」


レベッカの方から予定を聞かれたのは初めてかもしれない。エリオットは嬉しかった。


「二時までには戻ろうと思う。」


時刻は午後十二時五十分。今日は一時間しかない。


「あんまりゆっくり出来ないわね。」


「寂しい?」


「寂しいわ。」


素直なレベッカが愛おしくて、エリオットが額にキスをする。


「もうすぐ、ずっと一緒にいられるようになるよ。」


「でも、今も一緒にいたいの。」


エリオットは目を丸くした。恥ずかしがり屋のレベッカがそんなことを言うなど、昔なら考えられない。


「なんだかやけに素直だね。嬉しいけど。」


「ダメだった?」


「そんなわけないよ。もっと言って。」


「ずっと一緒にいたいわ。」


「うん。」


「離れたくない。」


「俺もだよ。」


「そばにいて。」


「そばにいるよ。」


「でも、帰ってしまうでしょう?」


「一度帰るけど、また戻ってくる。朝、父さんに本店へ戻れるようにお願いしてきたんだ。」


「本当に?」


「だから、何も心配しなくていい。何か月かかかるかもしれないけど、待っていて。もう、レベッカから何も奪わない。寂しかったら、少しの間だけでも俺のところに来てくれてもいい。一緒に海を見よう。俺の好きな景色を君にも見せたい。」


「行くわ。会いに行く。海が見たいわ、あなたと。」


二人は再び抱きしめ合う。エリオットが離れると、奪われた熱にレベッカは名残惜しさを感じた。


手を取られ、ダイニングを通り過ぎて寝室に誘導される。レベッカの胸は高鳴った。


「おかしなことはしない。レベッカに触らせて。」


レベッカは無意識に止めていた息を吐いた。この嘆息は安堵なのか落胆なのか。自分でも分からなかった。


二人でベッドに腰かけるとエリオットはレベッカの右頬を左手で撫でた。その手が首筋を通って肩に下り、腕をなぞる。右手でレベッカの頭を支えると、レベッカと共にドサリとベッドへ倒れ込んだ。


二人の視線がぶつかると、自然と唇が近付いてゆく。唇を離したエリオットはレベッカのつむじに、額に、頬に、瞼に、鼻に口付けた。頭を撫でていた右手はレベッカの耳の輪郭を人差し指でなぞり、左手でしたようにレベッカの右の体の線を確かめていく。


ひとしきり撫でた後、エリオットは起き上がりレベッカの靴を脱がせた。スカートが捲れて、レベッカの脚が剥き出しになった。恥ずかしくてたまらなくなり、エリオットの腰あたりのシャツを掴む。


「大丈夫。怖くないよ。ホラ、ベッドに脚を乗せて。」


エリオットも靴を脱いで、二人で狭いマットレスの上で並んだ。見覚えのない天井が、レベッカはなんだかとても高く思えた。


エリオットがレベッカの方へ向いてこめかみにキスをして、左耳を食んだ。ビクリとしたレベッカの頭を、エリオットは落ち着かせるように撫でる。


レベッカもエリオットに向き合うと、エリオットはレベッカを抱きしめた。身長差があるので、レベッカの全身はすっかりとエリオットに包まれている。


レベッカもエリオットと同じようにその存在を確かめるべく体に触れたかった。しかし、先日のエリオットの言葉を思い出して、躊躇ってしまった。持ち上げた手の行き場を失い、苦し紛れにそっと頬を撫ぜると、エリオットは猫のようにレベッカの手に擦り寄る。レベッカはそんなエリオットがとても愛おしくてたまらなかった。


レベッカはエリオットの胸に耳を当てる。エリオットの心臓が脈打つ音が聞こえた。心地よい安心感があった。二人は時間まで、お互いの温もりを分け合って過ごした。

お読みいただきありがとうございました。

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