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顔だけ男は眠り姫の呪いをかけられる  作者: 里和ささみ


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魔女は悪役になれない

リチャードが魔女の家に戻ると、リリはちょうどクロードに手紙をくくりつけているところだった。


クロードが把握しているのは、リチャード、レベッカ、テレサの家だ。鳥笛で呼べば今いるところへ来てくれるが、行き先は魔女の家と三人の家の四ヶ所に限られる。


レベッカがまだ家にいるかどうか分からないが、クロードはレベッカの両親も配達相手に認識しているので代わりに受け取って貰えばいい。それならば、レベッカにも夜までには読んでもらえるだろう。


「クソジジイ、碌な事しないわね。どうしてくれんのよ。」


リリはリチャードを睨み付けるが、リチャードは全く意に介していない。


「いやぁ、青春だね!彼があんな風になるなんて思わなかったなぁ。」


「本当にね!子どもの扱いにも慣れてるし、アタシにも謙るし、何なのアレ!」


「彼はあちらで休みの日は漁村の子どもたちと遊んだりするそうだよ。ご高齢の農家の手伝いに行ったりもするらしい。」


「怖!どっから仕入れてくるのよ、その情報!食えないオヤジだわ!」


「僕は食べ応えあると思うよ?」


「胸焼けするわ。ホラ、持ってる情報、全部吐きなさいよ!結局、何にもわかんなかったわ!」


「リリが彼を追い出すからだろう?」


「吐けば今日の子どもたちの寝かしつけ、父さんに任せるわ。」


「本当かい!?天使の寝顔を堪能出来るなんて、幸せだなぁ!」


「その代わり、アタシは夜はレベッカのところに行くからね!ちゃんと面倒見なさいよ!」


「もちろんだよ!任せて!」


リリは一抹の不安を覚えながらも、リチャードに着席を促して話を聞いた。


エリオットが支店へ異動してからのこと、現在エリオットが置かれている状況、ロジャーが二人の逢瀬に気付いたこと。簡潔だが、明瞭に、事実のみを淡々と伝える。


「別に、同情の余地ありと思った訳じゃないんでしょう?がめつい父さんのことだもの、足元見た値切り交渉が待ってるんだろうから、その辺はいいわ。アタシも別に、商会に恨みがある訳じゃないし。」


「案外、他人事だね。エリオット君のこと、蛇蝎の如く嫌ってたじゃないか。」


「そりゃアイツは嫌いだけどね!グッドマン商会はテレサの勤め先でもあるし、アタシもお得意様で色々やってもらってるし、そもそも十年以上前のことだもの、今更どうでもいいわ。」


リリはニール指名でグッドマン商会でよく買い物をしていて、リチャードはリリがニールに懐いているのに嫉妬していた時期もあった。ニールが退職したので今は別の従業員が対応しているが、リリは常連客の一人だった。


「じゃあ、サインしてあげるの?」


「レベッカ次第ね。アイツの独りよがりの可能性だってあるし。騎士団としても取り引き続けたいわけでしょ?」


近年、国内の工業化が進み、様々な技術が発達、発明品が次々と産まれている。その中で、今まで保存食といえば瓶詰めが精々だったが、缶詰が開発された。支店のエリア内に住んでいた発明家から特許の権利を買い取り、いち早く商品化を進めたのがロジャーだ。既に製品になっているものは騎士団の保存食や行軍の際の携行食として取り入れられている。


騎士団としても権利を独占しているグッドマン商会と手を切るのは痛い。


「まあ、そうだね。あーあ、すんなり行き過ぎて、ちょっと肩透かしだな。もっとロマンス小説のようなドラマティックな展開を期待したんだが、リリは悪役に向かないね。」


「人のことなんだと思ってんのよ。アタシだって、レベッカには幸せになって欲しいと思ってんの。あの子、自分で気付いてないかもしれないけど、親子連れとか仲の良さそうな夫婦見ると目で追ってんのよ。テレサとウザ男のこともそう。アタシと子どものこともそう。こっちが居た堪れなくて、申し訳なくなるわよ。」


「家族という形に思い入れがあるんだろうね。ま、子どもたちは僕らジジババに任せて、レベッカさんとゆっくりしといで。泊まってきてもいいよ。」


リリは盛大にため息をついた。


さっさと仕事を終わらせて、レベッカの家へ行かねば。


庭にはクラリスと子どもたちの笑い声が響いていた。


ありがとうございました。

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