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顔だけ男は眠り姫の呪いをかけられる  作者: 里和ささみ


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お姫様、初めてのキス

タイトルネタバレ定期。

とでも言うべきか?

よろしくお願いします。

レベッカが、幸せだと言ったのは本心だ。


物作りは好きだ。両親も健康で、親友と言える友人もいて、その子どもたちが遊びに来れば賑やかで楽しい。


それでも、テレサとロジャーが寄り添う姿で、リリが子どもたちを眺める目で、レベッカの心に寂寥感が滲む。


リリが以前、父親の話をした時、リリの母が父である男からもらったネックレスを今でも時折眺めている、と言っていた。


リリの母は、リリの父を愛していた。魔女の掟通り、別れからは逃れられなかったが、どうしても忘れられなかった。


リリはそんな母のことを「いつまでも思い出に縋って馬鹿みたい!」と言っていたけれど、リリこそ子どもたちを見つめる瞳は、子どもたちに彼らの父親の面影を重ねているようにも見える。


美しい思い出は、時に人を苦しめる。


生きている限りいつまでも解放されず、絡め取られて動けない。


エリオットと過ごすこの時間を形にしてしまったら、それはリリの母が持つネックレスになることをレベッカは確信していた。


今のエリオットとならば、夫婦になっても上手くやれるだろう。


だが、彼はあのエリオットなのだ。過去を払拭するほどの何かがなければ、踏み出すことは出来ない。


「幸せ?本当に?本心で言ってる?」


「そうよ。」


見透かされそうで、レベッカは視線を逸らした。


「俺の目を見て言って。」


「いやよ。」


「なんで?」


「いやったらいや!」


「我儘だな。」


「どっちが!」


「怒らないで。喧嘩はしたくない。」


「喧嘩になんてなったことないでしょ!そっちがいつも言いたいこと言って返事も待たずにどっかに行っちゃうんじゃない!」


「子どもの頃の話だろ。今はちゃんと話し合える。」


「何を話し合うって言うの?私に、自分が幸せになりたいから赦してくださいと乞うつもり?大人なんだから罪悪感くらい飲み込んでよ!自分で折り合いつけてよ!寂しい?だから何?どうして私に言うの?私にどうして欲しいの?私があなたの言う幸せな人生じゃないのなら、それはあなたとあなたの家族のせいじゃない!被害者ぶって甘えないでよ!私を巻き込まないで!」


レベッカは鞄を掴んで立ち上がり、そのまま去ろうとした。


二歩、三歩と進んだところで、すぐエリオットに後ろから抱きすくめられてしまった。


「離してよ!」


「離さない。」


「離して!」


「いやだ。」


「さっきからなんなのよ、もう!離してったら!」


レベッカがいくら抵抗しても、エリオットの腕は解けない。もがけばもがくほど、より一層、きつく抱きしめられた。


「痛いわ!もうやめて!」


「話し合いに応じてくれるなら。」


「ふざけないで!叫んで人を呼ぶわよ!」


「それでもいい。俺を見てくれるなら。」


「信じられない!あなたおかしいわ!」


「おかしいよ。昨日からずっと。レベッカのことしか考えられない。」


「どうしちゃったの?らしくないわ。」


「俺らしいって何?俺はずっと、母さんの人形だった。言いなりで生きてきた俺に、らしさなんてある?それなら、今の俺の方がよっぽど俺らしいよ。」


レベッカは抵抗をやめた。なんとか首を回して、エリオットの目を見る。


「とにかく離して。通告はこれで最後よ。チャームは作る。話し合いはしない。それがダメなら、あなたは女性を襲う犯罪者よ。」


エリオットの腕が緩んだが、レベッカはまだ離してもらえない。


「分かった。困らせてごめん。」


エリオットは昨日のようにレベッカのつむじに口付けた。一度だけではなく、幾度も。


「だから、離してちょうだい。」


「ごめん、あと少しだけ。」


背中から感じるエリオットの体温は、冷たい手とも温い涙とも違い、熱かった。もしかしたらそれはレベッカ自身の熱なのかもしれない。


エリオットは自分よりも頭ひとつ分ほど低いところにあるレベッカの髪に頬をこすり寄せ、匂いを吸い込んで、つむじにキスをする、を繰り返した。


「まだなの。」


「うん。」


「なんでこんなことするの。」


「俺がしたいから。」


「私はいやって言ったら?」


「謝る。ごめん。」


「謝るくらいなら早くやめて。」


「まだ足りない。」


「誰にでもするの?私にして、楽しい?」


「今はしてない。楽しいよ。」


「昔はしてたじゃない。なんで楽しいの。」


「ごめん。」


「答えになってないわ。」


「レベッカは強くなったね。」


「どういう意味?」


それきり、エリオットは黙ってしまった。


しばらくしてようやく腕を外したが、エリオットの両手はレベッカを逃さぬようレベッカの左右の手に重ねられた。首筋にエリオットの顔を埋められて、またうなじに痺れが走る。


「いい加減にして。」


睨みつけてやろうと振り返ると、エリオットの顔が鼻先にあった。その瞳には、レベッカは見たことがない欲が揺らめいていた。


動いた拍子に手が外れたと言うのに、逃げられない。レベッカは恐ろしくなった。


エリオットの顔が、唇が、レベッカに落ちてくる。


避ける間も無く、レベッカの唇はエリオットに奪われた。

ありがとうございました。

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