表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
顔だけ男は眠り姫の呪いをかけられる  作者: 里和ささみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/90

お姫様の眠る夜

よろしくお願いします。

ロジャー登場です。

「え……」


レベッカは思わず絶句する。


昼間のことがばれている訳ではないだろうが、動揺が態度に出てしまった。


テレサはそれをレベッカがエリオットに会うのを怖がっていると勘違いした。


「今までも、一年に一回か二回、来てたんだけどね。今回は二週間もこっちにいるから、もしかしたら、レベッカが偶然会っちゃったりするかもと思って。外に出る時は気をつけてね。」


「う、うん。心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。契約があるんだもの。あちらだって、話しかけて来たりしないわ。」


「それはそうなんだけどね……まあ、いいわ。」


テレサは少し安心したのか、カップに残ったハーブティーをぐっと飲み干した。


「テレサは……エリオットに、会ったの?」


「ん?うん、まあ、一応ね。店で会ったわ。」


「元気だった?」


「一応、元気に生きてるわよ。残念だけど。」


「そう、良かった。」


良かった?


テレサは引っかかるが、レベッカのことだ。仏心を出しているだけに違いない。テレサはまだ、エリオットを許してはいなかった。


レベッカは何食わぬ顔でカップに口をつけている。テレサは、これ以上レベッカの心を乱すようなことは言うまいと決めた。


「ごちそうさま!もう帰るわ。トマスにキスしてこなくちゃ!」


「そうね。トミー、夜に泣いたりしないかしら?」


「一度寝付けば朝までグッスリだから、大丈夫よ!朝、出勤前に迎えに来るわ。」


「テレサも、今元気だからって、無理しないでね。夏になったら仕事に行くのも大変よ。トミーとの時間も大切にしてあげて。子どものいない私が言うのもなんだけど、赤ちゃんが産まれたら、きっと寂しくなることがあると思うの。」


「あー、それ、サマンサさんにも言われたわ。おばさんにもさっき怒られちゃった。今やってることは目処がつきそうだから、七月には産休に入るつもり。そしたら、遊んでね!」


レベッカはホッとした。正直、テレサのワーカホリックぶりには心配していた。エリオットに言われなくとも、注意するつもりだった。


「ママぁ〜」


甘えた声でテレサを呼ぶトマスの声がする。リンダがトマスを抱っこして戻って来た。


「トミー、いい子にするのよ。明日の朝、迎えに来るからね。」


「ウン。もう、はみがきしたよ。ぼく、いいこだよ。」


「そうね。トミー、おやすみなさい。」


テレサはトマスの額と頬にキスをする。


「おばさん、レベッカ、トミーのことお願いします。」


「ええ、もちろんよ!」


「じゃあ、また明日。おやすみなさい、テレサ。」


「おやすみ、レベッカ。おばさんも、ありがとう。おやすみなさい。」


テレサが帰るとレベッカは風呂に入り、すぐにトマスとベッドに横になった。


温かい子どものぬくもりに幸せを感じる。エリオットの体温を思い出して、誤魔化すようにつないだまま眠ってしまったトマスの手を指の腹でさすった。


テレサは帰宅して、寝支度を済ませると、現在開発中の無添加化粧品の進捗報告書に手をつけた。トマスがいない今晩中に仕上げてしまいたい。


集中して書き物をしていたら、コトリと目の前から音がした。


ロジャーがホットミルクを入れたマグカップを置いた音だった。


「おかえりなさい。全然気付かなかったわ。」


「ただいま、奥さん。随分熱心だね?」


「トマスがレベッカの家に泊まりたいって言うから預けて来たの。せっかくだから、今日のうちにこの報告書仕上げてしまおうと思って。」


「テレサらしいな。そうか、今晩はトミーがいないのか。飲みに行かずにかわいい奥さんとゆっくりすれば良かったな。」


「ロジャーが飲みに行ったから、レベッカの家へ行ったのよ。メロンのお裾分けを持って行ったの。半分持って帰って来たけど、食べる?」


「いや、明日の朝でいいよ。俺はここで水を飲みながら君を眺めているから、君はそれを続けて?」


「もうっ!言い方が暑苦しいわよ!誰かさんを彷彿とさせるからやめてくれる!?」


「その誰かさんと飲んできたせいかな。ちょっと酔ってるのかも。」


「だいぶ酔ってるわよ。」


「はは、ごめん。」


謝っているようで謝っていない。わざとらしいが、本心で言っていることをテレサは分かっている。


甘やかされたり褒められたりして怒るのもいつも照れ隠しだ。ロジャーもそれを理解して、なおかつからかってくる。テレサは年上の夫にはいつも勝てないでいた。


勝負はあきらめて、再び報告書に目を落とす。妊婦や小さな子がいる母親が気軽に使えるメイク用品。防腐剤無添加、原材料が食品、と縛りがあるが、今のところ上手いこと事が進んでいる。


防腐剤を入れずにそれなりの期間品質を保てるものという課題はクリアしたが、発色の良さを上げていきたい。様々な組み合わせを試した結果を見ながら、商品に適している組み合わせをピックアップしていた。


「あいつ、どうだった?」


テレサがペンを走らせながらロジャーに尋ねた。あいつとはもちろんエリオットのことである。


身重の妻がいるからとエリオットの誘いを断ろうとしていたロジャーに、飲みに行けと言ったのはテレサだ。最近のエリオットの様子が知りたかった。


独身の頃や子供が出来る前は、エリオットが本店に来る度にロジャーに声をかけて飲みに行っていた。純粋にロジャーを慕っているように見えるエリオットに、テレサは初め面食らった。


エリオットの事情は、本店にいる者なら誰もが知っている。支店での行いも、メリーのことも、長くいれば耳に入る。あちらに移ってからは悪い噂は聞かない。


だが、テレサは信用出来なかった。あの自分大好きの甘ちゃんが、そう変わるわけがないと思っていた。

仕事の出来る男前の愛妻家。

つまりはスパダリです。

男も惚れるスパダリ。

それがロジャー。


お読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ