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顔だけ男は眠り姫の呪いをかけられる  作者: 里和ささみ


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魔女のウキウキショッピング

お洋服を選ぶのって楽しいよね!というお話。

グッドマン一家とニールは今日、レベッカの家に行く予定だった。


ところが、薬を受け取った昨日の夕方、バックヤードで仕入れた品の確認をしていたニールの元に、リリと名乗る少女がニールを訪ねてきていると困惑した表情の従業員が呼び出しに来た。


その従業員は学校帰りの学生にしか見えない少女が、今は馴染みの客の相手しかしないニールを名指ししたことに疑問があるようだった。


ニールは驚いて、急いで少女の元へ駆けつけた。


確かに森の魔女だった。魔女のローブを脱いでいると、本当に普通の街娘のようだ。


リリは他の客と同じように、買い物を楽しんでいた。


どうやらワンピースを選んでいたようだ。


「あら、早かったわね。」


「リリ様、先ほどぶりでございます。昼間は本当にありがとうございました。それで、いかがなさいました?」


ニールはリリが本名を名乗ったことから察して、森の魔女という言葉は使わなかった。


「なあに、気が利くわね。年の功かしら?」


「客商売をしているものなら当然です。それで、ご用件は。」


「ああ、明日のことなんだけど、レベッカの家じゃ、ちょっと狭いでしょう?アタシも一緒に話を聞くことにしたから、また騎士団に来てくれる?午後から用事があるから、午前中で。もちろん、リチャードも同席するわよ。揉め事の話し合いなら、第三者が必要だもの。」


リリはレベッカの家へ行ったのか、数日しか経っていないのに随分と親しくなったものだ。


とにかく他に客のいる状態で揉め事なんて言わないでくれとニールは思ったが、魔女に、ひいては騎士団には逆らえない。


リリはニールの方は見ずに、両手に持ったワンピースを代わる代わる体に当てては鏡とにらめっこしている。


「かしこまりました。なんとか調整して伺います。」


「もちろんよ。それでね、明日ね、レベッカたち、学校が早帰りなんですって!待ち合わせしてランチに行くんだけど、ねえ、こっちとこっちだったらどっちがいいと思う?」


レベッカたち。レベッカと行動するならテレサだろうか。


ようやくニールを見たリリの期待感に満ち溢れた表情を見ていささか面食らったが、ニールは商人の笑みで接客を始めた。


「そうですね、そちらのクリーム色は春らしくてよろしいかと思います。今年の春は小さな柄が流行でございます。そちらも小花の柄が入っていてトレンドを取り入れておりますから、今の時期に若い方がお出かけの際にお召しになるにはぴったりです。無地の紺色のワンピースは何にでも使えますから、夏以外の季節ならご着用いただけますよ。織りに特徴がありますからただの無地ではなく華やかです。アクセサリーも映えますので、使い勝手はよろしいかと。パールのネックレスや白の付け襟を使えば少しかしこまった席でもお使いになれます。付け襟は他のお召し物でもお使いいただけますから、いくつかお持ちになるとコーディネートに幅が出ておすすめですよ。季節によって、レースやファーの付け襟を取り揃えておりますので、ご要望があればお伺いいたします。」


リリは真剣に悩み出した。決められないらしい。森の魔女ならばどちらもどころか若者向けのこのフロアの商品全てを買い占めることも出来るだろうに、とニールは思った。


だが、年頃の娘らしい姿は見ていて微笑ましい。


「明日はどちらへ行かれるのですか?」


「街の南側の広いテラス席があるカフェよ!ホットサンドが具沢山で美味しいんですって!それで、その後は最近噴水広場に出てるっていう屋台のクレープを買って公園の芝生に座って食べるの!」


まるで子どものように無邪気にはしゃいでいる。初めての友人と初めてのお出かけが楽しみで仕方ないらしい。


「さようでございますか。そちらならテラスはウッドデッキに植栽もございますから、クリーム色の方が場に映えるかもしれませんね。公園にも行かれるなら尚のこと、緑がありますから。先日出たばかりの新商品で他の方とも被りませんし。」


「本当!?アタシ、誰かと同じって好きじゃないの。なら、こっちにするわ!お会計して!あっ、でも、バッグも買わなきゃ!ハンドバッグ、気に入ってたのに持ち手が壊れちゃったのよね。」


やはりリリは誰かと被るのが嫌らしい。秘密主義な魔女の割には自己主張が強い。


その後リリは、最初に決めたワンピースとバッグの他に、結局紺色のワンピースも付け襟も購入して、大荷物を抱え嵐のように去って行った。


「明日は覚悟してね!首を洗って待ってらっしゃい!」


と、不穏な言葉を残して。

いよいよメリー断罪が始まります。

レベッカとリリ(とテレサ)は無事にランチに行けるのでしょうか。


今回もお読みいただきありがとうございました。

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